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12. 魔法都市プライベリウム

 リン王女はコナミとアイリの手をそっと取り、魔法都市プライベリウムを包む白いボール状の結界にそっと手を触れた。


 「王女リン・プライベリウムの名の元、かの者の入城を許可します」


 そう言うと魔法都市の結界の一部に人が通れる程度の穴が開く。今までは結界は無く誰でもすんなりと入れたはずなのだが、これもきっと闇の使者とかいう敵の進行を恐れているからなのだろうか。


 結界内に入るとリン王女の身体はふわりと浮かび上がった。魔法都市プライベリウム内では特殊な魔法が施されており、魔法を形成する為の身体から発せられるエネルギーである"マナ"を使用する事で自在に宙を動く事が出来る。


 「これどう動いたらいいんだ」

 「うっ、うごご!浮けないデス!」


 コナミはマナの使用方法が分からず浮く事が出来なかった。そもそもこの世界の人間ではないコナミにマナがあるのかどうかも怪しい。だがなぜアイリも浮けないのかは謎だ。


 「お前”自称”魔法使いなんだろ?まさかマナを使えないのか?」

 「わ、わわわワタシはそのまだ勉強中で……うぅ……」


 恥ずかしさで顔中真っ赤のアイリの手をリン王女は地面に足を着いたまま歩いてくれた。裏手の扉から城内に入ったが内部は以前と変わらず賑わっている。しかし多くの魔法使いが見えるが常駐している門番や警備の兵士などは見る限り一切見えない。


 「結構不用心なんだな。警備の兵くらいつけてもいいのに」

 「今は魔法結界もありますし、城には強力な冒険者の方がいらっしゃいますのでご安心ください」


 外部から守られる強力な魔法結界にはよほどの自信があるのだろう。更にギルドから雇ったであろう信頼された強力な冒険者もいるとなると数だけいる兵士よりずっと安心なのかもしれない。


 リン王女に案内されるがまま客間の前に辿り着いた。

 部屋を開けるとそこはまるで高級ホテルの一室のような完成された部屋だった。見ただけで分かるふかふかな大きなベッドに、大きな窓からは美しい街並みを一望できるようになっていた。


 「うおお、すっげぇ……」

 「ふわわ……最高すぎデス。でもワタシたちマナが使えないので結局自由に動けないデス」


 しょぼくれるアイリを見てリン王女は閃いた素振りを見せる。


 「よければ先生にマナの扱い方を教わりますか?」

 「先生?」


 「先程お話した強力な冒険者です。メサイアさーん!お願い致します」


 メサイア……。

 それは元々仲間だった【大魔導士】の称号を持つ名前と同じ。

 心臓の鼓動が大きくなる。

 だが心の準備をする間もなく壁から生えてきたかのようにズルズルとその姿を現した。


 紫色のボサボサの長い髪の毛はまるでホラーのようで、黒いローブを身にまとっている。髪の隙間から見えるその目はクマが大きく腫れあがり異様な姿だった。


 以前会った時とは見た目は違えど見間違えるはずもない。こいつは【大魔導士】の称号を持つディバインズオーダー最強の魔法使いメサイアだ。コナミの心臓の音は大きくなり続ける。


 「メサイアさん。この方たちは花摘みに行っている際、私を助けていただいた冒険者様方なのですが、マナの使用方法を会得されていない様子で」


 「はぁ……わかりました……」


 目は精気がなく身体は脱力しきっていてまるでホラー映画に出てくる幽霊のようだ。

 近づいたメサイアからは鼻につくようなすっぱい刺激臭がした上に、手は乾燥していてまるで枯れ葉のようだった。メサイアはコナミとアイリの手を取った。


 「少し……痛いです…よ」

 「え?」


 そういうとまるで電流が流れたかのような痛みが身体中に走った。

 息が詰まる。みぞおちを殴られたかの様な刺激だ。吐きそうなのに吐く事すら許されないような気持ち悪い気分。意識が遠のいてくる―――――。


 メサイアは手を離すと急に痛みは消え、コナミとアイリはその場にへたり込んでしまった。


 「今のでマナを貯蔵する……マナルテシスを開放した……。今までマナを使ってこなかったから……塞がっていたのでそれを無理やりこじ開けただけ……制御できるまでは少し練習すれば……いい」


 昔から喋るのが苦手なメサイアは言葉を詰まり詰まり説明してくれた。しかし全く以て変化のないコナミは宙に浮く事が出来ずにいた。


 「おおおー!見るデス!自由に動けるデスよ~!」


 いつの間にかアイリはふわふわと宙を舞っていた。やはりこの世界の人間ではないから使えないという事だろうか。それとも単純に才能が無いのだろうか。


 「では、このあたりで……」

 「メサイアさんありがとうございました。お呼びしてしまい申し訳ございません」


 丁寧にリン王女はお辞儀するとメサイアは泥に沈んでいくかのように消えていった。

 恐らくメサイアがこの結界魔法を作ったりこの城を守っているからなのか、リン王女は過剰に気を遣っているいるように見えた。


 「慣れるまでは難しいかもしれませんが、客間は自由に使って頂いて問題ありませんのでごゆっくりしていってください」

 「何から何までありがとう。俺も練習しないと、な!よっ!」


 コナミは地面に足が着いたままじたばたして見せると、リン王女は笑いながら客間のドアを閉めた。


 メサイアは存在していたが、あれ程醜い見た目をしているのも理由があるはず。それも魔法図書室に行けば全て分かるのかもしれない。


 もがきながらではあったが、真実にきっと近付いている。


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