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10. 噓だらけの英雄

 「シガレットはさ、この戦いが終わったら何がしたい?」


 丸太に座ったイヴはシガレットに聞いた。目の前には満天の星空が広がっているし、メサイアの結界のお陰でエンカウントする危険性も薄い。キャンプとしては最高に安全だ。


 ディバインズオーダーを始めて既に半年が経過していたが、魔王城を目指して旅を進めていた冒険者はシガレット達が初めてだった。


 「んー、とりあえずいっぱい寝たいかな」

 「なにそれ。いっつも寝てばっかりじゃないか」


 クスクスと笑うイヴに釣られてシガレットも笑った。


 「イヴはどうしたい?」

 「私はシガレットと……いや、みんなとずっとのんびり暮らしたい、かな」


 もじもじしながら話すイヴの姿が余りにも可愛らしく見えたシガレットは目を逸らしてしまった。

 凛とした騎士のような品格を持つ彼女が普段は見せない姿。こっちまで恥ずかしくなってしまい思わず立ち上がった。


 「じゃあ戦いが終わってもみんなでのんびり旅を続けたい。これが俺の夢だ。それならイヴの願いも叶って俺の願いも叶うだろ?」


 「ははは、全く。うん、そうだな。みんなでまた旅に出よう」


 その後魔王を倒したシガレットたちは各国の王より賜った称号を預かり、ギルドからのクエストを何度もこなし旅を続けていた。


 満点の星空の下で話したイヴの願いは叶ったのだろうか。それとも――――。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 気が付くとコナミはベッドの上で倒れていた。部屋はベッドと小さな棚とその上に植木鉢がひとつ。

ここはコナミが一番初めに目覚めた宿屋だった。前回の状況と変わっているとしたら灰色のスウェットではなく旅立ちの服という所だろうか。


 「目が覚めたデスか?お寝坊コナミさん」


 「ああ、ごめん。情けないとこ見せちまった。ハハ、ちょっと前まで村であれだけイキってたのに」


 「どんな会話してたか知りませんがワタシも途中で間に入ったのでわからないデス。きっとコナミさんが変な事して怒らせたに違いないデスけど。どうしてイヴさんはあんなに怒ってたデスか?」


 「それは……俺、記憶が曖昧でさ。街中で聞いたシガレットって名前をつい名乗ったんだ。そしたらあんなに怒ってきて……」


 また嘘をついてしまった。

 もしアイリがイヴの様な視線を向けてきたらきっと孤独になってしまう。その前に事情をもっと知っておく必要があった。


 「それはそうなるデスよ。ワタシもそう言われたらきっとそうなるデス」


 そう思っていた矢先、アイリはコナミに今まで感じた事のない冷たい視線を送っていた。その表情に全身の鳥肌が立った。イヴと同等並みの殺気がそこには込められている。


 「……シガレットってなんなんだ?」


 「シガレットは、ワタシの生きる目的デス」


 そう言ってアイリは部屋を出て行った。やはりシガレットはこのディバインズオーダーではお尋ね者のようだ。名乗る事すらしてはいけない存在なのだろう。


 一体何をしたのか、何があったのか。それすら聞く事は許されない。

 きっとこの世界がシガレットを拒絶しているから。


 それを痛感したがコナミは何があったのか知らずにはいられなかった。


 「今は情報が必要なのに誰にも聞かずに知るとするなら……そうか魔法都市プライベリウムなら確か城に全ての記憶や記録が詰められた魔法図書室があったはずだ!あそこならきっと!」


 居ても立っても居られなくなったコナミはアイリに魔法都市プライベリウムに行く事を伝えた。


 「魔法都市?何しに行くデスか?」


 「いや、その、さ。ここから王都ブレイブに向かう途中なら道中に魔法都市プライベリウムがあるだろ?だったら一度立ち寄ろうかなと思って……はは」


 じーっと目を見つめてくるアイリを嘘を重ねすぎて真っ直ぐ見る事が出来ずに目が泳いでしまった。アイリは、はぁ。と大きく溜息をついた。


 「どーせコナミさんの事だから魔法に興味を持っただけデスし、ワタシに魔法を使えるように勉強させたいだとか思ってるデスよ」


 「ば、バレてたんですね」


 もう嘘をつきすぎてわけがわからなくなった。

 でもきっとシガレットについて知る事が出来たらいつか全て話そうと思っている。


 コナミとアイリは次の街までの準備を揃えた後、冒険都市ビルダーズインを出て次なる街【魔法都市プライベリウム】を目指す事にした。


 きっと全ての事を知ってまたイヴに会いに来る。

 そしてまたあの日みたいに仲良くなれる事を祈って。


全体の展開とストーリーは考えていましたが、少し修正と調整に時間がかかっています。内容に変更はありませんがお楽しみいただければ幸いです。

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