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魔力

 サーシアに連れられて来た村長さんの家は村で見る他の人達の家よりは少し大きい程度で暮らしぶりもほとんど皆と同じのようだ。

 高級そうな物は何も見当たらない。


「さあさあゆっくりして行きなさい。

その子が例の子だね?

名前はなんて言うのかな?」


 村長さんは俺に微笑み名前を訪ねてくる。

 チラッとサーシアさんの方を見ると目が合い、慌てて下を向き名前を応える。


「……あ、アデル……です……」


「そうかそうかアデルくんか。

この村は君を歓迎している。

どうかな?儂らと一緒に暮らしてみんか?」


 歓迎されてる?

 こんな俺を?


 驚きだった。

 俺の居場所がここにあるのか?と僅かに期待してしまった反面、また酷い事をされるのではという考えが過ぎる。

 もう一度サーシアをチラッと見ると、微笑みながら頷いている。


「サーシアさん引き続きこの子の事頼む。

儂らも出来る事を協力しよう」


「はい!

私に任せてください!」


 サーシアは嬉しそうに言って俺を抱きしめる。

 一瞬ビクッとしたがるされるがままに受け入れた。

 サーシアの温もりが直接感じられて気恥ずかしくなる。


 村長の家を後にし俺とサーシアは家に帰った。

 その道すがら、アッシュや子供達、俺を心配する大人の人達が声を掛けてくる。

 体の傷のこととかには一切触れず、「よろしく」や「ゆっくりしていけ」など様々な暖かい言葉が俺に向けられた。


 俺は戸惑いを隠せず俯いてしまった所を、サーシアは「疲れてるみたいだから」と言って心配してくれる人達に俺の代わりにお礼を言って離してくれた。

 その後たただ無言で彼女の隣を歩き家についた。


 食べ物を探しに行かなくていいから何をしたらいいかわからず家でボーッと過ごす。





 あれから数日。

 この生活にも少し慣れて一言二言だけど会話の出来るようになってきた。

 何かしなきゃと思って先ずは自分の使った食器を台所に持って行ったり部屋の掃除を始めてみた。


 そんな俺の様子をサーシアは嬉しそうに微笑み見ている。


「アデルくん、魔法の練習してみない?

凄い魔力を持ってるからきっと良い魔法使いになれるわよ」


 彼女は何を思って俺に魔法を教えようとしているのか疑問だった。

 確かに魔法は使ってみたいしMPはたくさんあるけど俺に魔法と言ったスキルはない。

 悪魔召喚が魔法ならやり方なんてわからないし召喚方法をこの人達が知ってるかも分からない。

 もし俺がそういうスキルを持ってると知られてあの地獄が再び訪れたらと恐怖心もあった。


「……魔法スキル……無い、です……」


 こう応えるのが精一杯だ。

 そしたら驚くことをサーシアはいう。


「大丈夫!魔法は先天的に授かる方が強力だけど素質があれば練習次第では後天的にスキルを得られるのよ。

それに無魔法っていう魔力を直接操って物を動かしたりする便利な魔法があるの。

この無魔法は等しく素質が備わっているからアデルくんもすぐ使えるようになるわよ!」


 初めて知った……。

 魔法の興味から指導を受けることにした。


「アデルくんは自分の魔力を感じる?」


「えっと……、良く、わから、ない……です」


「それじゃあ先ずは自分の魔力を感じる所からやってみましょう!

目を瞑って自分の体の中を意識してみて。

集中して自分の体を見ていると何処かに不思議な感じがする所を探してみて」


 言われた通りにし、自分の体に意識を向けて何か不思議なものはないからと探る。

 というか、一つ心当たりがある場所があるからそこを集中して見てみると変な物を感じた。


 ドクドクと鼓動する心臓のすぐ近くから濃厚な不思議な感じがそこから全身に猛烈に放出されて体外に流れていってるのがわかった。


「この、辺り、から……濃い、何かを、感じました……」


 サーシアは何か納得した顔で一つ頷き、笑顔で答える。


「それが魔力の源ね!

生まれながら持つ魔力量の差はあるけど普通は小さい魔力でそれを自分で感じ取るのに時間がかかるんだけど、アデルくんの場合は異常に多くて凄く濃いからすぐに分かったのかもしれないわね。

次にその感じた魔力を自分でコントロールするの。

魔力はコントロールしなきゃ勝手に垂れ流されている状態なのよ。

まずはその垂れ流している魔力を自分の体に閉じ込めるように意識してみて」


 一度自分の魔力を自覚してから不思議と自分の一部として感じるようになりこれを制御出来るという確信があった。

 放出される魔力を体に抑えこむように……、自分の体表から出ないように抑える……抑える……。


 そうすると、どんどん体が段々暖かくなってきて、胸の辺りの異物感……魔石がドクンと脈打った感じがして苦しくなった。


「ッ!?ゲホッゲホッ!!うっ……ぐぅう……」


「だ、大丈夫!?」


 サーシアは慌てて駆け寄り俺の背中を擦る。

 そしてもう一人、物凄く焦った様子でドラグルが俺に駆け寄る。


『主!? ケハイ、薄クナッタ!』


 心配そうに俺の体を見て回る。

 抑えこもうとした魔力を開放し気持ちを落ち着かせる。


 再び濃く漏れだした魔力を感じてドラグルは安心した雰囲気になった。

 そして、心配だと俺の側から離れなくなった。


 サーシアも落ち着いた俺を見て深く息を吐いて安心している。


「今日はもうおしまいにしましょう!

疲れたでしょ?

横になる?」


 心配し休むように言ってくる。

 だけど俺は続けたかった。

 魔力をお体内に抑えこもうとした時、胸の魔石が脈動した時、体に力が漲ったような気がした。


 確かめたくて心配するサーシアには申し訳ないけど無視して再度魔力を体内に留めようとする。


「ッ!!」


 ドクンッと脈動が始まり苦しくなるが、来ると分かっていれば心構えが出来るから声を出さずに耐えられた。

 どんどんと魔石の脈は大きくなっていくが比例して体に力が漲る感じがした。


 しばらく我慢をして続けていると、魔石の脈動は治まってきて、魔石から感じる濃い魔力は激しくぐるぐると循環しているのを感じる。


「ふぅ~」


 落ち着いて一息吐くとドラグルが何か喜んてるような感じがする。


『主、ナンダカ、強クナッタ、カンジ、スル!!』


 変な小躍りを始めて喜びを表現するドラグルがおかしくて可愛くて自然と笑みが溢れてしまった。


「あら!笑った顔初めて見たは!

可愛い笑顔よ」


 サーシアさんが居るのを思い出し恥ずかしくなって顔を赤らめて俯いてしまう。

 サーシアはもっと見たかったと愚痴を言いながらの魔力を抑えることが出来てることを喜んでくてた。

 一言、「危ないから次はちゃんと言う事を聞いてね」と怒られたけど。


 素直に頭を下げて自分の今の感覚を楽しんだ。



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