表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/42

全滅


「アハハハハハハハハ!!」


 アデルは直接その手で攻撃を始め、異様な光景が広がっていた。

 背中の黒い羽が変形して腕の形になり、人間を次々取り込んでは一瞬で干からびていく。

 アデルのやってる事、それは超強力な魔力の吸収。

 だが魔力を全て吸い取ったからって干からびる事は無い。

 せいぜい気絶するだけだ。

 では何故干からび死んでいるのか、それは、強力過ぎるが故に空っぽになっても続く吸収は生命力を強制的に魔力に変換させ吸い取り、魂までもがエネルギーとして魔力に変換され全てをむしゃぶり尽くすのだ。


 吸収していく度に巨大になっていくアデルの魔力の黒い腕。

 そして存在感。


 吸収する度に、際限なく強化されていく。


 悪魔達は人間が逃げられない様に取り囲む。


 アデレスは空間遮断を行い、ゾルヴァルは巨大な魔法陣から出て来た巨大な腕が堰き止め、アスタルは影が囲み踏み入れた者を捕食する。


 ドラグルもこの中で一番の非力ながら、悪魔とアデル意外に察知されないアドバンテージで人間を処理していく。


 まさに圧倒的な戦い。


 人間にとって悪夢でしか無い戦争がこれだ。


 僕は空に留まり見ている事しか出来なかった。

 ただ涙を流し、自分の無力を呪った。


 アデルであってもアデルじゃない。

 今までのアデルが表とするならこれは真裏だ。

 深層に潜んでいた悪魔。


「もしアデルの心がまだあるなら……、いや、あると信じて必ず取り戻さないと……。

何をしても、どんな事をしても」


 今はアデルの為になることをしよう。


 全身に雷を纏い、戦場という名の処刑場を縦横無尽に駆け巡り、首を落としていく。


 軍団対軍団の戦いならもっと混戦してもっとマシな戦いになったんだろうけど、自分達みたいな少数精鋭だと好きに派手にあばれられて相手が消耗するだけでしかない。


 この軍団の中に英雄と呼ばれるバケモノが居れば少しだけ違った結果になったかもしれないけど、有象無象の寄せ集めでは到底敵にはならない。







 覚醒した悪魔王の姿は美しいとしか言いようがない。

 完璧な姿、絶対的な力、優雅な振る舞い。

 全てにおいて魔王は魔王らしくなった。


 悠然と歩むだけで人間の屍の道を作っていく。

 今なお成長している魔王アデルの姿に僕は欲情していた。


 この王に仕えたい、尽くしたい。

 本来の主であるベリアル様にしか抱かなかった感情をアデルに感じた。

 いや、僕に相応しい王になってくれた事に敬意を評して敬おう。

 僕の主、悪魔王アデル様。


 アデル様の国落としを飾るこの戦を派手に飾り王に捧げよう。


 見てください魔王アデル様。


「クハハハハハハ!!

最高だ!

こんなに気分が良いのは何千年ぶりだ?

出し惜しみはなしにしよう」


 アデレスの背中から肉を引き裂き骨を砕く音が聞こえる。


「あ、ああ、あああああ、ああああ」


 目をグルンと上に向き、白目を晒し、口からヨダレを垂らしながら言葉を漏らす。


 グチュグチュ、ビリビリ、背中は破れ体内から無数の触手が飛び出す。


 アデレスの少年の体の質量以上の触手が伸び、背中を割って羽化するように何かが出てくる。


 肉を潰すような不快にさせる音を響かせながらどんどん体から出てきて、巨大な禍々しい羽が生えた人間の顔をした蝶が現れた。


『はぁ~この姿が落ち着く』


 体からは無数の触手が蠢き、伸ばされ人間を掴んでいくと口に放り込んだ。

 本体となったアデレスは咀嚼し飲み込んだ。


 これは羽化する時に使ったエネルギーの補充であり、ただの食事だ。


 だがそれだけでも凶悪で最悪で人間を蹂躙する。


 何千と人間を食してアデレスは遂に動き出した。


 羽を羽ばたかせ空を舞い、死の鱗粉が撒かれる。

 その鱗粉は不思議と味方には一切降りかからなかった。


 逆に人間はそれを吸い込み、皮膚を爛れさせドロドロと少しずつ溶かしていく。


『שפּיל עס』


 悪魔にしか理解できない言葉を発すると、鱗粉を吸って生きながらに皮膚を筋肉を溶かして苦痛に悶えていた人間の頭がパァンと辛いた破裂音をさせ弾けた。


 これにより軍の半数が死滅した。






「アデレス様がお姿を晒すなら我も真の姿を晒して魔王様に貢献しよう」


 発動していた手の魔法陣よりも遥かに巨大な魔法陣がゾルヴァルの足元に展開される。


 力なくバタリと倒れこむと、魔法陣からヌゥっと苦悶に歪む人間の山が溢れてくる。

 ゾルヴァルの体はその山の頂点で力なく倒れたままだ。


 その山が蠢きだし形を作っていく。


 巨大な顔へと。


 苦悶に浮かぶ人間は一人一人が呪詛を唱えていて、それは不快極まりなかった。


 未だに魔法陣から盛り上がり続け、頭、首、肩、胸と順番に形になっていき、腰まで出来上がった。

 幾千、幾万、幾億の集合体がゾルヴァルである。


 ゾルヴァルの近くで大量の呪詛を聞いてしまった人間は狂い発狂して死んでいく。


 巨大なゾルヴァルは人間の軍隊を見下ろしていた。


 人間はこのおぞましいものを見て狂っていくが、ゾクリとして一斉にゾルヴァルを見る。


 見ては行けないものがあると本能が訴えかけるが、何故かそれを逆らい見てしまった。


 いつの間にかあった頭部にある巨大な一つの目玉は戦場を俯瞰する。

 多くの人間がこの目玉に魅入られ魂を抜き取られた。


 一斉にバタバタと力なく倒れていった。


 これで軍の生き残っていたもう半分ほどが死滅した。


 残りはアッシュが処理していき、戦争は呆気無く終わってしまった。


 そこに残るのは夥しい数の死体。


 中央に悪魔王アデルが立ち、まだ悪魔の本当の姿で顕現しているアデレスとゾルヴァルはその場で頭を下げ、アスタルとドラグルはアデルの元で膝を付く。


 アッシュはアデルの背後に立ち、その背中を見ていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ