悪魔王、王都へ侵攻
謁見のあと、俺とアッシュは鬼人族を城に招いて交流をした。
総勢34人。
男か子供を含め8人、女か子供含めて26人だ。
みんな体格が良く、精強な顔つきで、筋肉が盛り上がっている。
女性もかなり引き締まっていて、綺麗な人ばかりだ。
「魔王様は悪魔族のお方なのですか?」
ライゴウはそう俺に聞く。
「俺は不本意だが人間だ。
この黒髪と黒目のせいで生まれながらにして人間共から言われもない扱いを受けてき。
更には俺の大事な居場所と愛してくれた母さんを奪った。
あいつ等は奪われて当然の事をしてるんだ。
復讐を果たす時に俺は初めて亜人の奴隷を見た」
「アデル、僕が話すから落ち着いて」
どうやら自分が語っている内に熱が入り、怒りが漏れていたようだ。
周りを見てみると、鬼人族の皆が背筋を伸ばして汗をかいて震えていた。
「自己紹介は済ませてあるけど改めて名乗るよ。
僕はアッシュ。
話の続きだけど、僕達魔人族の村でアデルを保護して一緒に暮らしていたんだけど人間に滅ぼされて残ったのは僕達二人だけ。
人間はアデルの母を、僕の両親と恋人をむごたらしく穢して殺した。
力をつけて復讐を始めた時、アデルが不調になった時があって仕方なく人間の街で過ごしていたんでたけど、そこを出て行く時、たまたま奴隷を見たんだ。
獣人の子供だった。
人間共は獣人の子供に酷い虐待をしていた。
誰も助けず、見てみぬふりをして、見物して獣人に罵倒している奴まで居た。
人間に虐げられている獣人の子供を助ける為に僕達の仲間がその町を滅ぼしたよ。
でも獣人の子供を助ける事は出来なかった。
仲間が亡くなった獣人の子を抱えて戻ってきた」
「だから俺は決めた。
復讐を果たしたら亜人の奴隷を開放する。
その為に人間を処理しなくてはいけないと。
だから俺は人間であるけど人間と敵対し本当に不本意だが魔王になってしなった」
交流だというのに思い雰囲気になってしなった。
「この場所は俺達が全力で守る。
だから安心して暮らすといい。
安全と自由を保証する」
「私達も魔王様のお力になりたいと思っております!
私達で出来ることがあれは是非使ってください!」
鬼人族一同がが俺に頭を下げる。
これからは亜人奴隷の解放と共に魔族の保護をしていかないと。
今の体制のままでは人出が足りないなと俺は心に思う。
鬼人族との交流は終わり、王都侵攻の為に英気を養う。
今回の出撃するメンバーは魔王である俺とアッシュ、俺の警護をするアデレス、ゾルヴァル、アスタル、ドラグルだ。
この支配した街には防衛と俺達の背後の守りとしてアバクァスとアンバレスが留守を預かる。
城下では俺達の出撃を見守る亜人達と鬼人族が集まっていた。
「アバクァス、背後からこの街を狙う愚か者どもは殲滅しろ。
アンバレス、この街を守りぬけ。
俺の国は今、このちっぽけな街程度だが、すぐに人間の国を落として乗っ取ってやる。
この地をお前らの安住の地にしてやる。
俺達を信じて待っていろ!!」
全員が俺達の勝利を信じ、誰も俺達の敗北を考えていない清々しい顔をしていた。
声援を一身に受け、俺達は出発する。
王都では中枢の人間は安心して眠れぬ日々が続き、重い空気は王都全体へと蔓延している。
各方面から軍はどんどん集まり、逐次南方方面へ編成されていった。
王都が有していた中央兵力3万。
東方から1万、西方から1万5千、北方からは8千の兵が集結し、各方面の遠方の街から出兵した兵士も徐々に到着している。
更にこの国に滞在する上位冒険者2500人と傭兵団6200人も合流している。
それに加え、徴兵した領民2万7千人。
それらの兵は南方の王都の手前にある平野に横に広く布陣していた。
壮観な光景、まさに総力戦といったところだ。
総大将は精神を病み、狂ってしまった王に変わり軍務卿が努め、総司令官は他国との小競り合いで戦い慣れている北の大領主が、左軍右軍の司令官は東と西の大領主がなった。
アデル達は眼下にある凄惨な爪痕を残した無人の街を見下ろしていた。
「凄いなこれは。
アデレス、この死体で悪魔は召喚できるか?」
「う~ん。北の大通りで転がってるのは綺麗なままだけど完全に魂を抜かれているから呼べても下級が精一杯かな。
中央から南側のは損傷が激し過ぎるけど魂は割と残って居るのが多いから魔王アデルの血とか使えばまあ上級か呼べるかだね。
いや、むしろ魔王の血だけを使って召喚した方が悪魔は喜ぶと思うよ。
こいつ等じゃ魔王の血とは釣り合わない。
極上のワインに糞を混ぜるようなものだ」
ならいいか……。
やっぱり攻撃を仕掛けながら戦力を増やしていった方がいいか。
街を素通りして進み、目の前に大きな街並みが見えてくる。
「あれは衛星都市であります魔王様。
大都市はその先です。
大都市を過ぎれば目の前が王都になります」
「なるほど。
王都を守る大きな砦の役割をしているのか」
王都はもう目と鼻の先だ。