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小さな小さな建国宣言


 あれから9日、俺の住む魔王城は完成した。

 街の四分の一を占める大きなそして大袈裟な城だ……。

 突貫建築の割に完成度は高く、門から玄関へ続く馬車道は並木が均等な間で植えられている。

 並木を出れば広くて綺麗な庭園に出てその奥には聳え立つ立派な城だ。

 50メートルはありそうな高さで存在感を放つ。

 大きな玄関は悍ましい細工がしてある。

 

 街の改造計画を主導するアデレスは満足気に頷いてんる。


「地上五階と地下三階の全八階となっております。

地上三階部分は魔王様及び我々の職場となり、三階に謁見の間があります。

三階から上が魔王様のプライベートスペースです。

悪魔王アデル様の寝室とアッシュ様の部屋がございますので後ほどご案内致します。

先ずは謁見の間へご案内いたします」


 アスタルはそう言って案内を始める。

 玄関ホールから奥にある大きな階段を登り、二階、三階へと上がり、廊下を何回も曲がってたどり着いた先に大きな仰々しい扉が現れた。


 俺の姿が彫られており、身体覆うように魔力が出てていくつもの悍ましい腕の形となっていて、それぞれの腕には武器と人間の頭を持っていた。


 なんと言うか……本当に仰々しくて呆然としてしまう。


 俺の後ろをついてくる悪魔たちは感嘆し、アッシュは苦笑いしていた。


 大きな扉を開けた先には広い空間が広がり、奥には数段高く作られた玉座は大きく悪魔的な細工で、これまた異様な存在感を放っている。


「あちらが玉座になります。

アデル様、どうぞ」


 とりあえず悪魔達が期待するような感じで見てるから1人階段を登り、玉座が鎮座する上まで来て座る。


 座り心地はまぁ悪くないかなと心で感心していると、悪魔たちはその場で整列し跪いた。


 アッシュは突然の事で驚き、しどろもどろだ。


「我らが主であられます魔王様に絶対の忠誠を!

我が身は御身の盾であり矛である。

願いを叶え尽くします」


 アデレスがそう言って深く頭を下げ、アデレスの後ろに控えるゾルヴァル、アバクァス、アスタル、ドラグルも深く頭を下げた。


 なんと言うかこの場に座り目の前の光景に心がゾワゾワする。


「面をあげよ」


 柄にもなくそう言うと悪魔たちは顔を上げた。


 これからはこの場でこの悪魔たちを、亜人をを導いていかなきゃいけないのかと心に覚悟を決める。


「この日この場を持って俺はここに俺の国を建国する事を誓う。

俺達が安心して暮らせるように。

人間共に虐げられた者たちが安心して暮らせるように。

ここから大きく広げていこうと思う。

人間という敵を屠りこの地に俺達の楽園を作る」


「まずはこの国を盗りましょう。

それをもって我が国の建国を周囲の国々に知らしめるのです」


 ゾルヴァルは不遜な態度ではなく目上の者に接するような言葉で言う。

 国盗りか……。

 亜人の奴隷を解放しつつ侵略していっても良いかもな。


 復讐を成して後は静かに暮らそうかと思ったけど世界にはまだ人間共にかつての俺のような、俺以上に過酷に虐げられた亜人はたくさん存在するだろう。

 次の目標はそれらの解放だ。


 これは俺の望むことであってもアッシュには押し付けない。

 静かに暮らしたいと望むならアッシュにはこの街の任せて守りを万全にして……、そんな考えを見透かしたのかアッシュは言い放つ。


「僕はアデルについていくよ」


 バッとアッシュの顔を見るとやれやれと言った表情で俺を見ていた。


「アデルは一緒に居てあげないと心配だからね。

よく無茶するし気絶するし、見ていないと逆に気が気じゃないよ」


 理由にちょっとムッとするが、でもアッシュがそばに居てくれるっていうのは素直に嬉しかった。


 その後は俺の執務室やら会議室を見て、四階五階の俺専用のプライベート空間を見て回った。

 アッシュは俺の親友で家族みたいなもんだから三階以上の出入りは自由、プライベートルームも俺の寝室の近くの使ってもらうことにした。


 因みにアデレスは俺の護衛の関係上同じく四階に部屋を設け、ゾルヴァル、アバクァス、アスタルは二階で、今後国を担っていく者は一階か城の外に屋敷を建設するという事で、城で働く使用人達は別館を作ってそこに住まわせるとアデレスは言っていた。

 地下は訓練場や牢屋などだという。


 城が完成し、街再建担当のアデレスは次に住民達の居住地を建て替え始めた。


「我らが魔王のお膝元で暮らすんだ、生活水準を底上げして人間の国なんかと比べるまでもない凄い物にしてやろう。

元奴隷が人間以上の良い暮らしをする。

クハハハ!!面白い!!」


 アデレスは張り切って上級悪魔が召喚した眷属に指示を出していく。






 さて、次に食料問題だ。

 今はまだ人間どもが置いてったのと備蓄があるからいいけど、いつかは無くなるという事で、街の一角を破壊して農場を作った。


 流石は悪魔たちと言うか……中級から上は知識量が多く、簡単な農業知識を亜人たちに齎し農業させている。

 エルフには魔法の知識を、ドワーフには鍛冶の知識を与え教えている。


 悪魔の知識は普通なら対価として相応のものを要求されるけど、俺のお陰で対価は必要ないとの事だ。

 悪魔の寵愛スゲー……。


 どんどんと生まれ変わっていく街も人も見ていて心が穏やかになる。

 時折何も知らずにやってくる人間の冒険者は始末してるけど。

 依頼を終えて帰ってきたら大きな城は建ってるし人間は居ないしで一新驚くだろうな。

 その後にすぐに死ぬ。

 そいつ等は何を思って死ぬのだろうか。


 悪魔たちは外面だけはいいから極端に容姿が異様じゃないか脳筋じゃない奴は亜人と仲良くしている。


 俺とアッシュも彼等を対等のように接しているから本当に徐々にだけど表情が柔らかくっなてきた。

 暇な時は一緒に農作業したり子供達に文字等を教えたりと充実した日々を送っていた。

 順調な感じに俺のアッシュも自然と笑顔が増える。





 日々を楽しんていたそんなある日。


「魔王アデル、客人だよ。

人間共がこの街を囲っている」


 アデレスのこの言葉に心が少し緩んでいた俺とアッシュに緊張が走る。

 そして怒りと憤りが湧き上がる。


 獣人、エルフ、ドワーフの全員を集め、城の地下一階の訓練場に急いで避難させる。

 俺とアッシュ、悪魔達は会議室に集まり対策を考える……という事はなく、街の入り口である壁門はゾルヴァルとアスタルで守らせ、アバクァスに殲滅に向かわせる。


 俺とアッシュとアデレスは謁見の間で待機する。


「上級悪魔でも力の強いアバクァスなら今回は余裕だね。

心配する事はないよ魔王アデル」


 本当にあっけらかんとそう言ってどこから用意したのかわからない椅子に座ってくつろいているアデレス。

 現状俺達のなかで一番強いアデレスのその雰囲気に張っていた気が緩んでしまう。


 俺は次の報告を待った。




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