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悪魔王の街


 皆が見守る中、俺は悪魔召喚を意識して街全体を魔力で覆う。

 ゴリゴリと消費し、街全体を覆い尽くした頃には俺の魔力は10分の一以下になっていた。


「はぁ……はぁ……」


 立っていられるのがやっとな程の疲労感に襲われるがなんとか魔力を維持する。


 次に、前もってアッシュに話し許してもらえた追加の生け贄、手首を切り血を垂らす。

 ゾルヴァルによって手首を切られ、直ぐに止血される。


 悪魔王となり魔力を濃く含む俺の血は魔法陣に触れた瞬間、魔法陣が今までになく強く輝いた。

 手はず通り、血の贄を与えたあとはゾルヴァルが背中に翼を生やし俺の体を抱えながら飛行し街の上に飛び上がる。


 光を放つ巨大な魔法陣が街をすっぽり収めていた。


 雲が集まりどんどんと濃くなり、光を遮り雲の下は真っ暗になっていく。

 魔法陣の光だけが街を青白く綺麗に照らす。


 分厚い雲はゴロゴロと音を鳴らしながら街の中心のところをグルグルと鳴動し始め、遂に一本の雷が大気を震わせ轟音を鳴り響かせて落ちた。


 一瞬強烈な閃光を放ち、目を覆っていた右腕を外して見てみると、街の至る所にあった夥しい数の死体や血の塊、臓物に至るまで全てが綺麗サッパリ消えていた。


 強烈な力を街の中央に感じる。


「ゾルヴァル、あそこに降りてくれ」


 そう命じて気が付いた。


 俺を抱えながら小さく震えているソルヴァル。

 額から一筋の汗を流し緊張した面持ちのこんなゾルヴァルを初めて見る。


「ゾルヴァル?」


「え?あ、あぁ……。

あそこだな……」


 ゆっくりと俺の指定した所へ降りていく。


 そこに立っていたのは貴族服を着たアッシュと同じくらいの年齢に見える男だ。

 金髪に虹色に輝く虹彩の目、白い肌と美しい姿をしている。


 ゾルヴァルに目もくれず俺を真っ直ぐ見て口を開く。


「なるほど。

まだ半人前だけど僕を召喚する資格は有しているという事か。

僕は魔王ベリアル様に仕える最上級悪魔アデレス。

ベリアル様より魔侯爵を賜り、虚実を司る。

よろしく頼むよ、新たな魔王」


 悠然たるその姿、立ち振舞、美しい姿に見惚れてしまう。


「さあ新たな魔王。

僕に何を望む」


「……俺が暴走した時に止めてほしいのとこの街を守る事。

俺は復讐の為にこの街を滅ぼした。

いずれはこの国の軍隊が大挙してやってくると思う。

この街を拠点にしていくから、それらからこの街を守って欲しい」


「了解した。

存分に僕を利用するといい。

僕が許可する。

それにしてもこの街は汚いな。

新たな魔王に相応しくない。

それと下等な生命の気配がするけど」


 大規模な悪魔召喚をするという事で遠くに避難させたというのに察知するのか……。

 最上級悪魔の能力に驚く。


「俺達の仲間だよ。

あとは助けた亜人達だ。

紹介するよ」


 俺達は一旦屋敷に戻り、ゾルヴァルに呼んできてもらうように頼む。





 皆が集まった所で改めてアデレスの紹介をする。


 ゾルヴァル、アバクァス、アスタル、ドラグルは俺達に跪く。


 アッシュは唯一の肉親のような存在という事で俺の側で立っているが、アデレスの纏う雰囲気に萎縮している。


「俺の護衛と街の防衛を担ってもらう最上級悪魔のアデレスだ。

お前達の上司となる」


「そういう事だ。

よろしく頼むよ」


「「「『ハッ!よろしくお願いします』」」」


 悪魔の四人は深々と頭を下げ声を揃えて言う。


「ゾルヴァルはアッシュの護衛兼指導に専念してほしい。

アバクァスは攻撃面をお願いしたい。

街の奪還、俺達を殲滅しに来ると思う冒険者や軍に突っ込んで壊滅する役を担ってほしい。

アスタルは屋敷の管理を任せる。

亜人の中から使用人として適正ある者を見つけて教育し屋敷に働かせて欲しい。

ドラグルは俺の従者とする」


 紹介も終えた所でアデレスが一歩前に出て話し始める。


「この見窄らしい街は新魔王に相応しくない。

上級は眷属を呼び出して街の作り直しをさせるように。

指揮は僕が取る。

先ずは魔王が住む城を作れ」


 それぞれがとりかかる。


 後ろで黙ってみていた俺は心の中で「城作るの?」と内心でポカーンとしていた。


 そんな俺をよそに次々と指示をを出していくアデレス。

 流石は魔王に仕えていただけはある、なかなかの貫禄だ。




 その頃各街や町、村ではゲダルから逃げてきた住人の話を聞いて驚愕した。

 瞬く間にゲダルの話は広まり、数日後、異例の速さで王都まで伝わった。


 直ぐ様ブダルダ王国国王のボーディア王の耳に入り、怒りを顕にする。


「どこの国だ!!我が国を攻め込んてきた愚か者は!!

しかもかなり首都に近いではないか!!

直ちに取り戻せえええええい!!」


 顔を真っ赤にし憤怒の形相で喚き散らし、家臣たちは戦々恐々としている。

 そこへ燃え盛る炎に更に燃料を追加するように情報が追加された。


「街を蹂躙したのは四人で、恐ろしい技を使いあっという間に虐殺していった報告があります」


「ぬううううう……、たった四人で街を落とせるかああああああ!!

そいつ等は魔族か!?我が国を穢した罪を贖わせろ!!

そいつ等の首を持って来い!!」


 ボーディア王は終始喚き散らして会議は終わった。

 会議の結果、先ずは情報収集をするべきという事になり、王都の高ランク冒険者に依頼を出し向かわせることになった。


 依頼を発行されて数日後、Sランク冒険者が一人、Aランクか15人、B及び以下106人の討伐隊が編成されて王都を出た。

 またブダルダ王国国内に点在する冒険者ギルド支部からも冒険者達が送られ、更に傭兵団も合流しその数600人規模となった。






 戦い慣れた手練たちが迫っているとも知らず、アデルが占領した街は着実に変化していた。


 街の半分は家などが破壊され、上級悪魔の眷属達が資材を運び入れ城を建築している。

 流石は悪魔というか、そのスピードは異常で、もう外観は出来つつある。


 亜人達も流石にこの光景は驚きのようだ。

 俺とアッシュは亜人たちに友好的に接し、時間をかけて心を開いてもらおうと務めている。

 俺があの魔人族でしてもらったように優しく受け入れて、愛情を持って接している。


 笑って話せるようになるまで時間はかかるだろうけど、あの村のようになればと俺とアッシュは願った。


 

5000PV達成出来ました!!


皆さんのおかげです!

本当にありがとうございます!


今後も頑張って書いていくのでよろしくお願いします。

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