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ゲダル陥落



 アバクァスはノシノシと地下を出て行った。

 至る所にある死体に欠片の興味も示さずただ召喚主が望まれた事をやろうと。

 不思議と召喚主に逆らえなかった。


 ゾルヴァルがそれを見送ると、倒れている俺を抱き上げ部屋を出ていく。


『主?』


「遅いぞドラグル。

それでも主に仕える悪魔か。

主が呼べば直ぐに参るのが下僕の勤めだろうが。

何をしていた?」


『戻ってきた、冒険者、始末、しました』


  一階の凄惨な現場の中でゾルヴァルが説教をしていると、二階の始末を終えたアッシュとアスタルが降りてきた。

 また気絶しているアデルにアッシュは駆け寄る。


「アデル!!

何があったの!?」


「主は新たに悪魔を召喚しただけだ。

それよりアスタル、主からの命だ。

亜人の奴隷を保護しろとの事だ。

急いで行くといい。

新たに召喚された悪魔は純粋な力の悪魔だ。

好き勝手暴れて勢い余って奴隷まで殺してしまうかもしれん」


「では直ちに」


 アスタルは跪いた姿勢のまま消えてしまった。


「アッシュ、主の命だ。

側にいて欲しいとの事だ」


 ゾルヴァルの話を聞きながらアデルの身体に新たな欠損が無いかを調べ、どこも失ってない事に安堵の息を吐く。

 この夥しい惨殺な現場のド真ん中に、身なりの良い貴族のような雰囲気を醸し出す黒髪赤目の男が愉快そうに笑い、左腕がない黒髪黒目の寝顔が幼く可愛らしい男の子を抱え、傍らには黒髪赤目の童顔で優しそうな顔の男の子が立っている。


 異様な雰囲気である。







 ギルドの外では更に地獄の様な有様だ。


 そこら中が血や臓物、四肢肉片等が散らばっている。


 街の端の方では未だに逃げ惑う人間の声が響いていた。


 門は大量の人間が集まり我先にと逃げようとして詰まり、荒くれ者が暴れて更に滞っていた。

 悲鳴と怒号が飛び交いパニックになっている。


 そこに死の権化が姿を表す。

 立派な巻角が生えている頭、目は白目の部分はなく全て黒色で、人間をそこらにある砂粒としか見ていないのは安易に感じ取れる。

 一文字に閉ざされた口の端からは鋭い牙が出ている。

 全身が赤茶色をしていて筋肉が隆々に盛り上がり、背には蝙蝠のような翼がある。

 体は大きく、人間を見下ろしていた。

 そして、肩に担がれた大きく禍々しい大剣は振り上げられ人間の集団に振り下ろされた。


「ギャアアアアアアア!!」「早くここから出してくれえええええ!!」「そこをどけえええええええ!!」「子供だけは!お願いします!!子供だけでもここから出してください!!」「ウワアアアアアアアアアン!!」


 地獄とはこういう事だろうか。

 大剣を再び振り上げ、多くの人間の命を刈り取っていく悪魔。

 ただ無表情に、単純な作業をこなす様に淡々と屍の山と血の池を作った。





 主に見捨てられ置いて行かれた奴隷は逃げるか死を待つかのの二択だった。


 死を待つのは手ひどく扱われた亜人の奴隷だ。

 その目は絶望に染まり生気すら感じられない程に心を閉ざしている。


 そんな奴隷を悪魔は素通りし、次に現れた燕尾服を着た黒髪黒目の男に何処かに連れて行かれる。




 それから空が茜色になった頃、街は猛烈な血とぶち撒けられた臓物の悪臭が立ち込め一日でその様相を変えた。

 運悪く街の六割が殺され、残りはなんとか逃げ延び方方へと散っていく。


 あっという間にゲダルの惨劇は広まっていった。






 翌日


 この地獄と化した元街に子供二人と悪魔が四人、開放された亜人の元奴隷が多数残っていた。


 子供二人と悪魔四人は一番高い教会の鐘の塔に居て街を見下ろしていた。

 教会の方は悪魔達が暴れ瓦礫となっている。


「素晴らしい!!

これ程楽しめた劇はいつぶりだろうかな……」


 ゾルヴァルはこれぞ芸術だと興奮している。

 アバクァスはつまんなそうに見下ろしていた。

 アスタルはこんな状況でも茶を入れ、ドラグルはアデルの側に佇んでいる。


「終わった。

復讐を遂げたよ……母さん……皆……」


「……」


 アッシュはしっかりと眼下の惨状を目に焼き付けている。


「さあ主よ!

この後はいかがする?」


 そうだな……。

 生き残り開放した亜人は全て俺の元に残ってしまった。

 縛り付ける隷属の首輪はゾルヴァルが全て破壊したしもう自由何だけど、逃げず帰らずの虚ろな表情で生きる気力を感じな獣人や耳長族、土人族をどうするかだな。


 何処かに行く宛なんて無いし……、大勢いる亜人を引き連れて移動なんて現実的じゃない。


 それなら……。


「この街を俺達の物にするのは可能か?

攻められても俺達で守り切れるか?」


 率直にゾルヴァルに聞く。

 ゾルヴァルは少し考えに浸る。


「主の力次第では可能であるな。

だが我々だけではでは不可能だろう。

主達を守れても亜人は守りきれん。

そこで確認したいのだが、主よステータスを見せてくれ」


 ゾルヴァルの突然の願いに肩が跳ね上がる。

 予想はしている。

 だけどその予想は外れているようにと願い、現実を逃避したいと思いながらもステータスを表示する。


「ステータス」


____________________

【アデル】 13歳 人間 レベル:97


職業:悪魔王


状態:健康


HP:402/402 MP168283/168283


固有スキル

魔眼


スキル

悪魔召喚

魔力吸収

魔力操作

並列思考

情報処理加速

魔力強化


称号

悪魔の寵愛 適合者 魔石を有する者 復讐者

殺戮者 人間の敵 天使の敵 支配者 魔王

____________________


「ふむ。やはりか」


「アハハ……。

この胸から湧き上がる異様な力はやっぱりそういう事なんだね……」


 昨日気絶した後、持ち主を失った屋敷の一室で目が覚めた時に自分の体に違和感を感じた。

 この湧き上がる巨大な力。

 考えたくなかったけど、ステータスも見たくなかったけど現実は俺の予想通りだった。


「主よ、力に飲み込まれる事無く心を強く保つ事だ。

今後の課題は心の強化であるな。

今の主に暴走されたら我にはもう止められん。

そして、今の主なら眼下に広がるこれらを生け贄にすれば最上級の悪魔を呼び出す事が出来よう。

主の暴走を止められ、この街の防衛の要となる悪魔を召喚することを進言する」


 ゾルヴァルの内心は、更なる狂乱を求めていた。

 次の劇は派手に大きく混沌となる事を望んでいた。

 そして、新たな力を加えどうしようか楽しそうに考えるのだった。


 俺はそんなゾルヴァルの心など知らず、悪魔召喚に取り掛かる。



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