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上級悪魔


「……ハッ!!」


 目が覚め起き上がる。


「ッッ!?グウウウウ……」


 胸に強烈な痛みを感じ一瞬息をするのを忘れてしまう。

 そして胸を抑え蹲る。


 なんだ……、この痛みは……。


 俺がそうしていると、アスタルが俺に気がついて駆け寄ってきた。


「主様!!

今はまだ横になってください。

暴走の影響で胸にあります魔石はまだ安定してません」


 アスタルの話を聞きながらボーッと天井を眺める。


 俺は突然暴走を始め、アスタルでも手をつけられない状況になったとか。

 正直人間を目の前にしていた時から少し記憶が曖昧だ……。


「そういえばアッシュは……?」


「アッシュ様でしたらご自身のお部屋でお休みになられております。

主様の事を凄く心配していたので明日、この部屋にお呼びいたしましょう。

今日はとにかく休んでください」


 はぁ~っと息を吐き右腕で両目を覆う。

 暴走した。

 それが頭の中でぐるぐると回る。


 何やってんだ俺は……。


 心の中で自分の不甲斐なさを罵倒したい気分だけどアスタルの言うとおり休む。





 翌朝、目を覚ますとベッドの傍らにはドラグルが直立していた。


「また大きくなってないか?」


 俺がそう言うとドラグルは俺の方を向いて跪く。


『主、体の方は、大丈夫、ですか?』


 体の大きさだけじゃなく言葉もさらに流暢に喋るれようになっている。

 よく見れば額に角が生えている。


「立派な角だな」


 そう言うとドラグルは喜びをの空気を醸し出す。

 少し和んでいると、ドアが勢い良く開かれアッシュが物凄く心配している顔で駆け寄ってきた。


「アデル!!

良かった……、ちゃんと目が覚めた……」


 起き上がり苦笑いしている俺にアッシュは抱き締めてくる。


 どういうことから話を聞くと、俺は4日も意識を失っていたと告げられた。


「そんなに眠っていたのか俺は!?」


「……なぁアデル……、一旦復讐はおいといてゆっくり休まないか?

今のアデルに復讐は」


「何言ってるのアッシュ。

俺は一日でも早くあいつ等を……あの憎い人間共を……」


 ドス黒い感情が渦を巻き膨れ上がる。

 俺は気が付かなかったが視覚化された禍々しい魔力が体から少し漏れ出ていた。


 アッシュは俺のその様子に何も言えなくなった。


「主様、落ち着いてください。

また呑まれかけてますよ。

恨み怒り復讐の心をコントロールしてください。

また暴走されると我は守りきれません。

いつかはアッシュ様を失う事になりますよ」


 そう言われてハッとする。

 顔を上げてアッシュを見ると悲しそうな表情をしている。


 それだけは絶対にダメだ。

 アッシュを失ったら俺は……。


 俺が俺でなくなる気がする。


 復讐どころではない。


 俺を暴走から止められる存在が必要だ。

 アスタルで無理ならアスタルより強い存在に抑えてもらわないと。


「アスタル、今の俺なら上位悪魔を召喚出来るか?」


「……可能です。

ですか生け贄はどうしますか?

上級悪魔となると私のようなそこら辺の人間を寄せ集めただけでは召喚に応じませんよ。

上質な贄でなければ……」


 アスタルが言い終わる前に俺は左腕をアスタルに向ける。


「この腕ならどうだ。

両腕でも両足でも、両目でもいい。

呼べるか?」


「ぬうう……、……可能です。

主様のお身体は贄としては最上級であります。

左腕だけで上級悪魔でも呼べます」


 俺達の会話を呆然と聞いていたアッシュが慌てて割って入ってくる。


「そんなのダメだ!!

なんでアデルがなんでそんな事をしなきゃいけないんだ!!

僕はそんな事を許せない!」


「わかってよアッシュ……。

俺達の為なんだ」


「……それでも僕はアデルが傷付くのを見たくない。

復讐なんて辞めよう!

それでここで静か暮らそう!」


「それは無理だよ……。

俺の大切なあの村を……母さんを奪った人間を忘れて暮らすなんて出来ない。

許せない。

あいつ等が憎くて憎くてたまらない。

俺の人生を、大切な物を奪ったあいつ等に復讐したい!!」


「僕も憎くてたまらないさ!!

でもこれ以上アデルが傷付くのは見たくない!」


 心が揺らぐ。

 アッシュの言う事は心の底から思う本心で、俺の事を大事に思ってくれるのは凄く伝わり嬉しい。

 でも……。


「ごめんアッシュ。

母さんを奪ったあいつらはやっぱり殺したい」


 魔力腕が俺の左腕を掴み引き千切る。

 肩からから先は無くなり、俺の左腕は中に浮いていた。

 夥しい量の血が肩から吹き出しベッドを赤く染める。


「主様!?

直ちに止血します!!」


「ああああああああああ!?

なんでアデル!!

なんでだよおおおお!!」


 復讐すれば俺達は危険な存在として人間から狙われる。

 そいつらからアッシュを守る為ならなんだってしてやる。


 俺に復讐しないなんて選択肢はない。







 アスタルの的確な止血によって出血は止まった。


 痛む左肩を無視して俺はドラグルに抱えられ、アスタルは俺の左腕を大事そうに持って地下の訓練場に向かうう


 この中にアッシュの姿は無かった。


 訓練場の中央に到着した俺達はアスタルは地面にそっと俺の腕を置き、俺はドラグルから降りて立つ。


「ふぅ……」


 息を吐き悪魔召喚を行使する。


 今俺の持つ全魔力を生け贄となる左腕に注ぐ。

 俺の暴走を止められる、そしてアッシュを守ってくれる上級悪魔を願って。


 腕は青白い炎を纏い、腕を中心に線が浮き上がってくる。

 線は形となり繋がっていく。

 そして大きな、禍々しい魔法陣が完成した。


 俺の腕はドロドロと溶けたし魔法陣に浸透すると、青白い炎は消え、魔法陣が強い光を放つ。

 光が収まると、魔法陣があった中央には黒髪で額にはねじれた角が二本、爬虫類のような瞳孔が縦の形をしている赤い目、薄く開かれニヤける口には鋭い牙、気品溢れる出で立ちで、アスタルよりも圧倒的な存在感を放つ男が立っていた。


「願いを聞き入れ召喚に応じた。

我が名はゾルヴァル。

悪魔界の魔子爵の位を持つ。

我が主よ、最高の贄を感謝する。

何なりと命じよ」


「よろしく頼むゾルヴァル。

俺の願いは俺が暴走した時に止めてほしいのと、俺の大事な親友アッシュを守って……ほ……し……」


 言い終わる前にバタリと倒れる。


「ふむ、魔力切れか。

そこの悪魔、主を寝室に寝かせよ。

そこの中級は我をアッシュとやらの所に案内せよ」


「ハッ!

アッシュ様は自室に居られます。

コチラでございます」


 アスタルはゾルヴァルをアッシュの所へ案内し、ドラグルは俺を抱き抱え俺の寝室へ運ぶ。



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