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悪魔召喚

 一箇所に纏められた人間の死体を憎みながら見下す。


「アッシュ、初めて使うからどうなるか分かんないから少し離れてて」


 頷き距離を取るアッシュ。

 ある程度離れた所で召喚を始める。


 俺は悪魔召喚を意識しながら自分の持つ魔力を全力で、全てを使い切る勢いで放ち死体に纏わせる。


 これは生け贄だ。

 糞と同価値の生け贄だ。


 今はこれしかないからこれを捧げる。


 俺達の力になって欲しい。


 大切な物を全て奪った人間に復讐する為に……、蹂躙するために!


 人間に対する憎しみが魔力に移り、灰色だった魔力は黒く変色し始める。


 地面には怪しく光る線が浮かび上がり、図を描いていく。

 それはどんどん形となっていき、悍ましい魔法陣が完成した。


 魔法陣が完成した途端、魔法陣の上にある死体が薄い青白い炎に包まれドロドロに溶けて魔法陣に浸透していく。


 全てが溶け魔法陣に吸収された時、魔法陣は一瞬強く怪しい光を放ち消えた。



 魔法陣があった場所には一人の燕尾服を着た黒髪黒目の人間の姿をした悪魔が俺に向かって膝まずき頭を下げていた。


「我が主はなんと美しき人か……。

かつてこれ程までに純粋に憎しみの色に染まった主は居まい。

我はアスタル。

これより主の為に尽くして行きましょう。

今ここで、我は主の下僕として契約する」


 召喚出来た……。


 よかっ……た……。


 俺は全魔力を使い果たし気絶した。






 目を覚ますとドラグルが俺の側で直立不動で立っていて、アスタルは俺の額に手を置いて目を瞑っていた。


「主様、気が付きましたか。

今アッシュ様をお呼び致しますので休んでいてください」


 流れるような動作で立ち上がり部屋を出ていく。


「ここは……?」


 フカフカのベッドに寝かされていて驚く。

 周りを見てみたいけどどうやら無理をしすぎたみたいで体が思うように動かない。

 大人しくベッドに横になり目を瞑る。


 今は思い出したくないのに瞼の裏に母さんの、皆の笑顔が浮かび目尻から涙が溢れる。


 大切な人はもう親友のアッシュしか居ない。


 この最後の一人を絶対に失ってはいけない。

 失えば俺は壊れるだろう。

 きっと化け物になってしまうと思う。


 だからアッシュだけは絶対に失ってはいけない。


 自分の心と村人達の魂に誓う。

 アッシュを守りながら復讐を果たすと。


 一人で決意を固めると、俺の部屋のドアが開きアッシュとアスタルが入ってきた。


「具合はどう?

魔力欠乏でぶっ倒れたんでしょ?

アスタルがそう言ってた。

無茶し過ぎるなよ……」


 心配そうな顔をして俺の顔を見る。


「ごめん。

初めてだから加減がわかんなかったんだ。

それに変に加減して使えないのが召喚されても意味ないしね。

それよりここはどこなの?

立派なベッドに寝かされてるし……」


「ここは昔、愚かにも分を弁えず我を召喚した人間が使っていた屋敷です。

あの場所では主様のお体に障りますので既に主の居ないこの屋敷にお連れしました。

愚かですが魔法に関しては一流でしたのでこの屋敷も魔法で維持され今に至るというわけです」


「今誰も使ってないなら……」


「えぇ、ここを主様のお屋敷に致しましょう。

魔境の奥にあるので滅多に人間も近づけません。

ちょうどいいでしょう。

それと、アッシュ様から大体のお話を伺いました。

我が主様の為に全霊を掛けて我も協力致します」


「ありがとうアスタル。

これからも……よろしく……」


 ここで意識が途切れた。


「主様はお疲れのようです。

体調もまだ万全では無いご様子ですのでこのままお休みしていただきましょう。

アッシュ様はどうされますか?」


「僕は……アデルを守る為に鍛えるよ。

危なっかしさを感じるんだ。

昔のアデルを思い出したよ。

昔みたいにならないように僕が支えて守らないと。

それに今回みたいな無茶をしてまたぶっ倒れられたら俺達で守らないといけない。

俺達の復讐の為にも、アデルの為にも力をつけないと」


 アッシュの中に燃え盛る黒い炎を感じてアスタルは心の中で笑みを零す。

 アデル程ではないけどこの子もまた深い負の感情を有していると。


「畏まりました。

地下に訓練場がありますのでご案内致します」





 それから数日、俺はなんとか起き上がるまでになった。

 魔力もだいぶ回復して、暇なベッドの上で日々魔力制御の鍛錬を重ねる。


「主様、お食事をお持ち致しました」


 台テーブルがベッドに置かれ料理が並ぶ。


「時間停止結界が施された食料庫にありました穀物を使いまして作りました湯炊きでございます。

どうぞお召し上がりください」


 お粥だろうそれを口に運ぶ。

 ほんのりと優しい味が口の中に広がる。


 お粥を食べ終えお茶を啜りながらもう一つの皿にある果物に手を伸ばす。


「果物は体力回復を促進するミルという果物です」


 甘酸っぱいけどさっぱりと口触りが良い、爽やかな香りが口に広がり鼻を抜けリラックス出来る。

 満足そうな俺を見てアスタルは嬉しそうだ。


 アッシュは肉と野菜をバランスよく食べているらしい。

 少し羨ましい。

 そして、最近顔を見せにこないけどアスタルが言うには厳しい鍛錬を自分に課して励んでいるのだとか。


「あんまり無理し過ぎないように言っといて。

納得しないと何処までも突っ走る所あるから」


「畏まりました主様。

主様もどうかご無理をなさらずにお休みください。

それと、そこでいつも立ってる最下級悪魔ですが、我が教育しなくて本当に良いのですか?」


「うん。

今は良いよ。

ドラグルはこの世で最も付き合いが長いし、今は側に居てくれるだけで安心するんだ。

俺が全快したらその時はお願い」


「畏まりました」


 アッシュが頑張ってるなら俺も頑張らないと。

 恨みの心を燃え上がらせ魔力制御の鍛錬に励む。


 

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