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転生

 ここは何処だ……。

 ただ暗いだけの空間に何も聞こえず何も感じず何も臭わず、上も下も右も左もわからない。

 そんな所にただ自分と認識する以外になすすべが無いそんな所で俺は意識を覚醒した。


 時の流れも感じず言い知れぬ恐怖に染まっていく。


 いったいどれくらいの時が経ったのだろうか。

 そんな事を考えている時、俺は下に引っ張られ落下していく感覚に襲われた。


「次はこの魂ね~」


 果てしなく続く感覚に襲われながら耳元から女性の声が聞こえた。


「あ~自殺した魂か~。

ふむふむ……、生きる希望も無く絶望しかない人生に嫌気が差して首を括ったのね~。

それならもうこの運命しか無いわね」


 勝手に聞こえてくる声に答えることもできずにただ聞き流す。

 何がどうなっているのか理解できないが、どうやら俺は自殺をしてしまったらしい。


「これをこの魂につけてっと……、あとこうすると面白いかも」


 女の声は何やら楽しそうな声で何かをやっているようだ。


「よし!この魂はこれで送り出しちゃおう!

はい次~」


 落下していく感覚が強くなっていき、そして俺の意識は突然に途絶えた……。









 意識が浮上し俺は狭い場所から押し出されようとしていた。


 ズルズルと狭い所を進んでいくと、締め付けから開放され無意識に声を上げてしまう。


「おぎゃあああ!おぎゃああああ!」


 これは自分の声だろうか。

 誰かに抱えられ持ち上げる感覚がする。


 俺は誕生した。







 誕生してから一週間。


 俺は小汚い箱に寝かされていた。

 目を開いて初めて見る景色は、俺の顔を嬉しそうに見る両親の顔が引きつっていく所だ。

 そして、両親はあまり俺の誕生を喜ばなくなった。

 それが何故なのか理解出来なかった。







 1歳になる頃には自分の現状を更に理解できた。

 両親は俺の事を穢らわしい物を見るような目で俺を見る。


 黒髪に黒目は悪魔の子、忌み子で父はもう俺に会ってくれさえしない。

 俺を粗末に扱う。

 この頃、言葉を理解出来るようになってきて、母にかけられる言葉が俺を罵る言葉だと理解できた。


「生まなきゃよかった」


 この言葉が酷く俺の心に刺さり、まだ感情をコントロール出来ない俺は泣き出してしまう。

 それを鬱陶しいと舌打ちする母。


 もう一つ、この頃から変化が会った。

 俺が寝かされている小汚い箱を覗く醜い生き物の存在だ。

 ふと気が付くとそれはいつも覗いていて、俺をあやそうとして来る。


 母にはそれが見えていないようだった。







 2歳になると少しは歩ける様になり動きまわると母に怒鳴られた。

 そして、俺はいつも空腹だ。

 ろくに食べ物を食べさせてもらえず、野菜のクズが少し入った臭いスープを少し与えられるだけだ。

 母には見えない醜い存在が時々木の実などを持って来てくれる。

 もうこの存在に慣れてしまった。


「おかあ、さん」


 辿々しく呼ぶ俺に母は舌打ちをするだけだ。


 俺には名前がない。

 名前で呼ばれたことが無い。


 俺という存在は何なのだろうか。


 俺をちゃんと見てくれるのは醜い存在だけだ。



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