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Chapter-END

 結局、極短距離をジャンプできるだけのワープポータル発生器で何故次元を超えて異世界へと転移出来たのかはマッドドクの異名を持つレオンでも現時点では解明できておらず、上位者の介入の可能性やインフェルノが消失した影響など様々な憶測が出たり消えたりを繰り返している内に誰もがそれを気にしなくなってから暫くが経った頃、イヨもレオンも居候しているM.I.B.から家賃代わりにと押し付けられた任務でこれまた寒い日本へとやって来ていた。

 場所は聖歌教会を源流に持つ聖歌女学院。その高等部。なんでもインフェルノが消えた所為で歯止めの効かなくなったエンチャンター一派と聖歌教会を名乗る一派の抗争が激化し、関連した施設や都市などかなりの範囲で危険が拡散しているのだとか。

 此処聖歌女学院も例外でないとして、彼らはM.I.B.のエージェントとして日夜警備という名の暇を持て余していたのだった。

「というか、俺らは本来秘匿されて然るべきなんじゃねーのかよ」

 というのは赤鼻に角の飾り物を付けられたイヨ。彼は今ホールで行われているクリスマスパーティーで女学生たちにもみくちゃされている真っ最中、メインクーン程の大きさで立って歩くわ喋るわで彼が女性に人気にならない理由はなかった。当の本人は毛並みは乱されるわ尻尾は触られるわで大層迷惑しているのだが、それでも我慢しているのはここでは多少のセクハラがセクハラにならないから。勿論、それは彼が男ではなくオスだからであって、しかも全面的に許されているという訳でもないのだが、でもやはり悪くないと思ってしまうのがイヨなのだ。

「その辺は根回しくらいしとるんじゃろう、全人類の黒幕とは良く言うわい。イルミナティが嫌っとるのも頷ける」

 イヨが耳の中に仕込んだマイクから聞こえる声の主は、今舞台でDJをしているレオン。老いてはいるがチワワっぽい外見でそのイカレっぷりもギャル達にはユーモアに映るらしく人気がある。イヨがちらりと舞台上を見ると際どいサンタの衣装を纏った生徒とレオンが戯れている真っ最中、イヨは溜め息を返しながら意味があるかも分からない監視を続行した。するとホールのある一角で少し雰囲気の違う騒ぎが起きているように見え、彼はたまたま通りかかった癖のある黒髪の女学生の一人の背中に飛び付き、頭までよじ登った。

「きゃあ!? い、イヨさん! 違います、私つけてたとかじゃなくってホント偶然……あっれー!? イヨさんホント偶然ですねグーゼン!! スゴイ偶然!」

「そういうことにしといてやるから向こうまで行ってくれねえかな」

 ヘンなドギマギのし方を見せるその女学生を適当にあしらい、肩車の体勢で目的の場所まで向かわせるイヨ。女学生も女学生で妙に興奮している様子で、鼻息荒い。ジュースの入ったグラス片手にふんすふんすと人波掻き分け進む女学生の上でイヨは目を凝らす。そして騒動の原因が彼の目に届いた頃、向こうもイヨの存在に気付いたのだった。

「よう大将、相変わらず賑やかだな」

 黒い肌に黒い背広、サングラスの兎に角が黒ずくめ。そんなその男はとてもフレンドリーに生徒達と接しながら、肩車されたイヨを発見すると人懐こい笑顔を浮かべて手を振った。驚くイヨと彼を肩車した女生徒の前にその黒づくめの男は近付くと、黒い箱に黒いリボンが飾られた小さな箱を差し出し、そして言った。


「着替えな小さな(リトル)エージェント、仕事だぜ」


 ――END

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