表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

Chapter-4

「ドォォクッ!! ヘイ、パピーーー!! カモンカモーーン!!! 来いっつってんだ早くしろぉい!」

 びしょ濡れになった毛から水を飛ばしながらその場で飛び跳ね、空で戦うレオンとパピーを凄まじい剣幕で呼び付けるのはやっとこさ解凍されたイヨだった。それはティエレイアと死闘を繰り広げる二人の事情などお構いなしといった様子で、下りてくるまでせっつくのを止めない勢いでもあった。

「たくぅ……なんじゃい!!」

『クレイジー、カチコチ直っタ。でモびしょびしョ』

「おおぅ、速いな……」

 しかしいい加減ひたすら急かされ続けるのも我慢の限界になったレオンはパピーにティエレイアの無視を命じて、そして一瞬でイヨの前に着地してくる。その速さたるやまるでコマ送りされたかのようで、呼び付けたイヨすら驚くほどだった。

「ちょっとちょっと! どうするのティエレイアは!? ってまたブレスが!!?」

 まさかの戦闘中断で手持ち無沙汰したティエレイアは再び陣を画き竜のブレスを放つ。それを慌ててエレンシアと三官女が障壁を張って防御する中、イヨとレオンは呑気な様相で何か話し込んでいた。

「パピー、温風。おいドク、あんだろアレ。アレだよデカいアレさ。パピー、ブラシ」

「早々なんじゃいそれは、役立たずだったクセして。パピー、トランク開けい」

 パピーの廃熱ダクトからの温風で毛を乾かし、ブラシで毛並みを整えながらイヨは何やらレオンに要求し。呆れ果てたレオンもまた座席に座ったまま玉露を啜りながらパピーの背面に設けられたトランクを開けさせる。

「よっと……おお、良いのアンじゃねえかよ。ついでに着替えもしちまおうっと……あーもう、パンツまでぐしょ濡れ、やっぱ野良たるものノーパンだろノーパン」

 そのトランクに転がり込んだイヨは何やら中でガサゴソと独り言ち、レオンはお気に入りの楽曲をパピーの外部スピーカーから流し始める。見かねた三官女から非難の声が上がるが、ブレスを防ぐので手一杯な為具体的に何かされるわけでも無しイヨもレオンも、何なら何処からか迷い込んできた蝶々と戯れるパピーまでまるで意に介さない。

「イヨー!? いよいよ(・・・・)限界なんですけどーー!!?」

 そしてエレンシアが泣き言を言い始めた頃、新しいジーンズを穿き、気分で選んだバックルを輝かせ、しかし相変わらず上半身は灰色の毛皮を丸出しにしたイヨがトランクの中から降りてくる。

 ご機嫌に尻尾を揺らしながらレオンが居る座席に何か投げ入れた後、レオンが流したロックミュージックがノリの良いサビに差し掛かった時、ガコンと重々しくも小気味いい音と共に二匹がパピーの陰からエレンシアと三官女の前へと歩み出た。

「下手な洒落だなぁ、それ」

「がっかりじゃわい」

『パーピーィ……』

 二匹は手にしたピッカピカでギンギンギラついた身の丈ほどもある銃をそれぞれ担ぎ、舞台装置の様に派手な蒸気を噴き出すパピーを背景にして、そして三人の声が遂にハモった。

「「『ロックン――ロール』」」

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ