第9話 領主様は同盟を組みたい
……派手にやりすぎただろうか。
さっきの状況は緊急事態だったはずだ、いくら全員戦闘のプロとはいえ事故が起これば死人が出てもおかしくなかった。だから早く戦闘を終わらせようと俺も参戦したのだが、ここまで派手にやったらもう言い逃れできない。最悪、危険因子として処分されたり――。
「おお! さすが僕の息子だ、プレアデスきみは天才だよ!」
「たう?」
「君が僕達の間に生まれてきた時点で、薄々感じてはいたんだ、この子は奇跡の子だと! やはり僕の予想は正しかった、君の魂には神々の力が宿っている!」
そう口にしてルークは俺を抱き抱えると、この後の部屋の片づけや、客人達への説明会の日程について指示を飛ばして、執務室に向けて歩き出した。
ナタリーが俺を心配してついてこようとしていたが、シルヴィア隊長に止められた。客人への謝罪と説明が先だろう! そう顔に書いてあるようだった。
執務室への道は、今までの騒ぎが嘘だったかのように静かだった。警備員も使用人も現場の後片付けに向かって、室内の人間が少なくなっているせいだろう。
まあ外できちんと警備はされているので、別に警備が手薄なわけではない。
「主よ、おめでとうございます」
「称賛の言葉なら、彼に上げてほしい、見事な活躍だった」
廊下を歩く俺達の元に、サバ―ナが合流した。会場の外に逃げ出した蛇を始末してくれていたのだろう、爪や牙に返り血がついていた。
「では主よ、彼は合格なのですね」
「ああ、それも100点満点のね」
『合格、何の話だ!?』
「詳しい話は部屋についてからだ……お、ついたね」
ルークは俺をソファーに座らせると、部屋の真ん中に寝そべるサバ―ナの背に腰を下ろした。
「単刀直入に言おう、僕は君と同盟を結ぶ事を望んでいる」
ルークは、いきなりそんな事を言い出した。同盟、何のために? 俺なんかと組んで、どんなメリットが? それとも何かの罠か?
「安心していい、この部屋には【消音】をかけてある、外に声は聞こえない」
『そうか……』
「そんなに警戒しなく立って大丈夫さ……まさか、君は天使達から何も聞かされてないのかい? 下界に降りてくる段階で、ある程度の情報は入ってるはずなんだが」
『天使? 情報?』
「そうか、何かの手違いで情報が届いてなかったんだな。よし! これから同盟を組む相手だ、今から情報の共有を行おう」
……とりあえず敵ではなさそうだ、よかった。
情報と味方がいっぺんに転がり込んでくるなんて、しかも相手は貴族だ(俺もだけど)俺の心配事が一気に解消されるチャンスかもしれない。
「ん~~、何から話そうか」
「ふぁ~~、ぶ~」
眠くなってきたぞー、早くしろ―。