そして伝説へ
「ぷはっ! やった~、無事に外に出られたモグゥ!」
「ふいぃ~、土砂で道が塞がった時はどうなる事かと思ったぜ」
地下の崩壊から間もなく、シリウス一行は無事脱出に成功した。
外は夜。夜明けにはまだ遠い時間帯ではあるが、その頭上で輝く月明かりは今の彼らにとって太陽の輝きにも勝るものであっただろう。
「アレックス、無事でいてくれ!」
一時喜び合う時間さえ惜しんだシリウスは、手頃な木の上へと駆け上がった。
「旦那ァ! そんなところで何するつもりだァ!?」
「あの一帯を吹き飛ばす! 今ならまだ間に合うかもしれない!」
シリウスは、目の前の空間を指さして叫んだ。
そこは先ほどまでシリウス達がいた場所、ゴンゴンの故郷があった場所だ。
巨人達の活動範囲をかわすために遠くまで掘り進み、そのせいで脱出までに少々時間がかかったが、それが逆に好都合だった。
安全確保に、距離をとる手間が省けたのだから。
シリウスは自身の奥の手を放つために得物である、
ヴァンガード、
ドレッドノート、
ヴァイス、
シュバルツ、
4っつの魔導兵器を宙へと放り出した!
さらにシリウスは、上着の内ポケットをすべて開放!
収納されていた追加パーツらが、先の魔導兵器達の後を追い空を駆ける!
そしてそれらは、1つとなり人智を超えた兵器が誕生する!
――キラーン
まばゆい閃光が、辺りを包んだ!
「うう、これがシリウス様の切り札、なんて神々しい」
「それはともかくまぶしすぎるのだ! 前見えないのだ!」
ミルザム、ポラリスらが、目を覆い隠しながら、それでも何とかシリウスの切り札をその視界に抑えようと頑張った。
「妙でございますな。こんな演出今までなかったはず」
ロドリエスは、未知の経験に首を傾げた。
そして、その謎の光の正体はすぐに判明した。
「『――――ウオォォォォォォォォォォォォおおおおおお!!!』」
「「「「「アレックス!!」」」」なのだ!」
閃光が収まり視力を取り戻したミルザム達は、そこにアレックスの姿を見た。
アレックスは全身に金色のオーラを身に纏い、バチバチと放電を繰り返しながら足場のない空中に制止し下界を見下ろしていた。
視線の先にはゴンゴンの故郷、それを封印していた分厚い天井は跡形もなく消え去っていた。
――ザンッ!!
時を同じくして、シリウスの切り札もその全貌をあらわにしていた。
「待ってろアレックス! 今助け……に……行く――――――」
使い道のなくなったそれを、シリウスはせっせと片付け始めた。
細かいパーツが多いため、この作業地味にしんどい!
「良かった、無事だったんだ――」
アレックスの無事を遠巻きにでも確認できた事に、ロゼッタは涙をこぼした。
「いや、そういうわけにもいかないようだぜ。見ろよ!」
ディアークに促され目をやると、巨人達が攻撃をしようと地上から構えていた。
「ミルザム! 盾を飛ばせ、ポラリスと協力すればここからでも届くはずだ!」
パーツを5分の1ほど、片付け終わったシリウスから指示が飛んだ。
「どんとこいだよぉ」「任せるのだ!」
少女達2人によって生み出された、分厚い障壁が5枚。
それらがアレックスの身を守らんと、飛び出していった。
それと同時に、敵の砲撃も開始された。
果たして援護は間に合うのか? それとも間に合わないのか? その場にいた誰もに緊張が走った。
――アレックスとゴンゴンを除いては
アレックスは、迫りくる熱線に対して何もしなかった。
否、する必要などなかった。
巨人の放った熱線はアレックスを包む結界に触れた途端、まるでミキサーにでもかけられたかのよう粉々に解体されてしまったのだ。
『GIGIGI、GIGAAAAAAAAA!』
「なんだこの音は!?」
「巨人だ! あいつらが叫んでんだ!」
接触して以来、初めての反応。
ダンジョン側の命令なのか、はたまた魔物としての本能か、巨人達は無機質な叫び声をあげた後、両手を振り乱し逃げ出したのだ。
巨人達の身に着けた土偶をイメージさせる装甲のせいで表情を窺う事はかなわないが、その様はまるでアレックス達に対して恐怖を抱いているかのようだった。
命令か、本能か、無意識か、逃走の理由は不明だが、彼らは1つミスを犯した。
『アレックス! あの方角は!』
「はっ! 里の皆を避難させた場所! 奴らめ、皆を先に始末するつもりか!」
アレックスは、勢いよく右手を天にかざした。
彼らのミス、それは逃げる方向を間違えた事だ。
そのせいで彼らはこれから、死よりも恐ろしい結末を迎える事となる。
「何だ……あれは――――」
シリウスは分解作業の事さえ忘れて、ただただ驚愕した。
首を振り回し、頭を叩き、目をこすり上げ再びまぶたを開いた事で、やっと目の前の光景が現実であると理解できた。
シリウスが驚くのも無理はない。
シリウスの視線の先、アレックスが振り上げた右手の先には巨大な剣、山1つを両断できてしまうほどの光輝く剛剣が存在していたのだから。
「『必ッ殺ッ!!』」
アレックスは、振りかざした手のひらを握りしめた。
「『【ライトニングゥ――――』」
そして握りしめた拳を、首の後ろまで振りかぶった。
身に纏うオーラと刃の輝きが頂点に達した、まるで煮えたぎるマグマが限界を超えて噴き出すかのように――
――解放の時が来た。
「『――パァニッッシァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア】!!!!!!』」
アレックスは振りかぶった拳を手刀に変えて、神が下界のものに審判を下すかの如くその右手を振り下ろした。
アレックスの意思に従い輝く剛剣は地上の魔物達に牙をむき、
取り巻く世界は目を焼くほどの輝きに包まれた。
そして世界は、再び夜の闇に沈んでいった――――。
※アレックス達は無事です、全員生きてます。
これにて番外編は一旦完結となります。
本編終了後にアフターストーリーとして、彼らの活躍を描いていく予定です。




