第7話 やったか!?
「ゲシャァァァァァァ!!」
ジースの体内から現れたのは、2本の腕が生えた巨大なコブラの化け物だった。
「サバ―ナ、被害を抑える、全力で行くぞ!」
「さて、奴は何秒持つかな?」
サバ―ナのすらりとした体が筋肉の鎧に覆われ、首元からは炎が噴き出し、まるでたてがみを持つオスライオンのように姿を変えた。
――キシャ、シャッシャァ
化け物の放った毒霧が会場内の人間に襲い掛かった、がしかしサバ―ナの放った炎によってすべてかき消されてしまった。
「サバ―ナ右を頼む、僕は左を!」
サバ―ナの牙が化け物の左腕をかみ砕き、ルークの【オーラブレイド】が右腕を切り落とした。ルークはそこから休む事なく、化け物の背中に迫り真一文字に切り裂いた。
床に崩れ落ち、断末魔の叫びをあげるコブラの化け物――――ルーク、そしてサバ―ナの完全勝利で戦いは幕を閉じた。
残ったのは、警備の人間に保護されていた客人達のざわめきだけ。
「ルーク様、自分が事情を説明します、ルーク様は奥へ」
「ありがとう。だが領主として、みなに事情を話すのは僕の義務だ」
ルークは、不安な表情を浮かべる客人達につかつかと歩み寄り説明を始めた。
「我々の計画に皆様を巻き込んでしまい、誠に申し訳ない事でございました。実は、我が叔父ジースは、悪魔に魂を乗っ取られていたのです!」
いつの頃からか、彼の様子がおかしくなっていったらしい。ある時ルークは、ジースが悪魔に取り付かれている事、そして人が大勢集まる今日、客人の前でルークの無様な死にざまをさらしてやろうと計画している事を知ったそうだ。
ルークは、それをチャンスだと考えた。
自分の命を囮にして、ジース(悪魔)を領主の命を狙った罪人として葬り去るチャンスだと。
「ですが奴に宿った悪魔が、正体を現す事は全くの予想外でした。一歩間違えば皆様に危害が及んでいた可能性は十分に考えられました、すべては僕の浅はかな考えが招いた――」
「おお、なんと素晴らしい! さすがはルーク様、悪魔の領地乗っ取りを未然に防ぐとは、わしはこの国に生まれてよかった!」
「自らの危険を顧みず、悪魔と戦うなんて――素敵!」
「フェボボ―! フェボボ―!」
ルークの予想に反して、民衆達の好感度はうなぎのぼりのようだ。知らないうちに危険な計画に巻き込まれた事よりも、その危険から守ってもらったという気持ちの方が強かったらしい。
にしても……あれが悪魔に飲まれた人間の末路か。俺が怠惰に飲まれていたら、俺もあんな化け物になってたんだろうか――――な!?
俺が巨大コブラの方に目をやると、奴はまだぴくぴくと動いていた。
そんな、ありえない! ルークは【サーチ】の魔法が使える、敵の生死が判断できないはずがない、つまり奴の死は確定している。じゃあ、何故あいつは動いているんだ!?
――パァーン
まるでクラッカーでも鳴らすような音と共に、化け物の死体が粉々に砕け散った。その肉片一粒一粒が瞬く間に毒蛇に変化し、黒い津波のように俺達に襲い掛かってきた。
突然の事に驚き、ルーク達は無抵抗なまま蛇の群れに飲まれていった。