いざという時のためにスペアを用意していても、いざが起こるころにはスペアをどこにしまったか忘れているから気をつけろ
「打て―! どんどん打て! ドワーフの底時から見せてやれ!!」
「「「どりゃああああぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
アレックスの手により破壊されてしまった、砲台の中から生き残った物を利用して突如現れた巨大生物に砲撃を仕掛けるドワーフ達。
効果はいま一つのようだ……。
「クソッ! 砲台も火薬も全然足りねえ、アレックスのせいで!!」
「うっ!」
「怪我人が多くて逃げることもできねえ、アレックズのせいで!!」
「うがっ!! ……今クズって聞こえたぞ」
「おいクズ! お前のせいだぞ何とかしろよ!!」
「今絶対クズって言ったよな! おい!!」
実りのない会話にエネルギーを消費する両陣営に対して、大型ゴブリンのディアークが割って入った。
「どっちみち奴には砲撃は無意味だし、逃げ切れるほどとろい相手じゃねえ。さっきの雷撃があろうとなかろうと、状況は変わらなかったと思うぜ」
「くっ……そうか」
宿敵にフォローされて、アレックスは奥歯をかんだ。
砲撃の効果が薄いと聞き、シリウスは巨人を改めて観察した。
ダメージこそなかったものの爆撃が敵の姿を映し出し、暗闇の隠された敵の全貌を知ることができた。
一言で表すなら、土偶の戦士だろうか。
全身に妙な紋様と凹凸が存在する、山のように巨大な八頭身の土偶。腰には鞘のようなものがぶら下がっており、あれを引き抜いて剣術を仕掛けてくるのかもしれない。
「――ん、どうしたゴンゴン?」
巨大な敵におびえているのだろうか? ゴンゴンの顔は真っ青だった。
「何故だ? 何故奴がここにいるんだ……まさかここは」
「奴? お前はあいつを知って「奴が動くぞ、何とかしないと!」」
土偶の巨人は、こちらに大した攻撃力がないと判断したのか、はたまたほかの理由か、シリウス達を蹴散らそうと腰に下げた鞘から刀を引き抜いた。
その巨体に似合わぬ軽やかな打ち下ろし!
それをまるで知っていたかのように、ゴンゴンが宙に飛び出し受け流した!!
そのまま今度は敵の股下まで潜り込み、足先を両の手で握りしめ敵後方に向けて大きく投げ飛ばして見せた!!!
「……あのおっさん、あんなに強かったのか」
「てっきり荷物持ちか何かかと……」
「鬼神だ……あの男には鬼神が宿っているに違いない」
一仕事終えたゴンゴンは、唖然とする民衆達に向けて猛ダッシュをかけると、縄や布であっという間に縛り上げ荷車に放り投げた。
「何をしているんだ! 早くここを離れるんだ!」
「いやでも、あんたが倒してくれたしもう平気だろう?」
「そうだぜ、そんなに焦らなくても」
「ダメだ! 奴はまだ死んでない、それに――」
ゴンゴンが言い切るより早く、状況に変化が現れた。
何故とっとと逃げ出さなかったのか、その場にいた誰もが自身の選択を後悔した。
なにせ、同じような巨人が複数体姿を現したのだから。
「レオン、リュックの具合はどうなってる?」
「全身に打撃を受け、まともに動けない状態でござる」
「はっ! そいつはおもしれえ、ハンデがあったほうが盛り上がるってもんだ」
そう吐き捨てるとディアークは、背中に担いでいた身長よりも大きな大剣を構えながら巨人に向き直した。
「なあ人間の旦那、オイラ達と組む気はあるか?」
「なんだと!?」
「オイラ達の拠点もこの辺にあってさ、奴らともたまにやりあってんだ。……万全の状態で逃げるのがやっと、まともにやりあえば間違いなく死ぬ」
「動けない奴をおとりに、自分達だけ逃げようって話か?」
シリウスは、冗談交じりにそう返した。
「いや、違うぜ」
ディアークの大剣から炎があふれ、巨人と渡り合える巨大な剣を形作った。
「どっっせいっっっ!!」
渾身の一振りによって、最初の巨人が右半身を失った。
「戦うためだ……全員でこの場を生き残るために! 会ったばかりで申し訳ねえが、オイラ達に力を貸してくれ!!」
シリウス達は、何も答えなかった。
無言で構えた自身の得物と、沸き立つ戦闘意欲、言葉など必要なかった。
気合と呼吸、一同が流れに乗った瞬間、戦闘の火ぶたが切って落とされ――。
「すまん、誰か武器を貸してくれ! さっきのごたごたで折れたんだ!」
「「「……」」」
アレックスに向けられる白い目。
「急に飛び出してきたからポキッと、な。あ~、悪かった、これ使ってくれ!」
ディアークの謝罪と、予備の武器の貸与。
こんなグダグダな感じで、戦いの火ぶたは切って落とされた。




