第49話 赤竜の死にざまを別アングルから
夜、俺は焼けるような暑さで目を覚ました。
訳が分からなかった。俺はゴンゴンさんに抱き抱えられながら、灼熱の炎の中にいたのだから。
ゴンゴンさんは苦痛に呻きながら、俺諸共炎の濁流に押し流された。その直後だった、俺達を守るように光が俺達を包んだのは。
『何が……起こってるんだ!?』
状況を確認しようにも、不鮮明な視界と熱気で何1つ分からない。
いや違う、分かろうとしていないんだ。俺自身が、情報の入手を遮断してしまっているんだ。
……幸せになるためにはどうしたらいいか? その答えは、身に降りかかる不幸から、目をそらし、耳を塞ぎ、幸福だけを貪ればいい。俺は、長年そうやって生きてきた。
だってしょうがないじゃないか、俺はスーパーヒーローでも金持ちでも優等生ですらなかった、自分に降りかかる火の粉でさえ振り払えない脆弱な存在でしかなかった。そんな俺に残された選択肢はたった1つ、感覚を閉ざす事……。
俺は幸せだったよ。汚いものは黒で塗りつぶされて、罵詈雑言がノイズでかき消される世界。極楽浄土が実在するのなら、きっとそれはこんな形なのだろう、俺はそう思っていた。
でも、もう極楽は必要ないんだ。
今の俺には力がある。
もう目を背ける必要も、耳を塞ぐ必要も、足元の幸福に目を凝らす必要も一切ない。ただ受け止めればいい……目の前の現実を。
――――なるほど、完全に理解した。
まるで汚れた眼鏡を水洗いしたような、世界が鮮明になっている感覚がした。今まで見えなかったものが見えるようになる、聞こえなかった音が聞こえるようになる、そんな感触。行き過ぎた表現が許されるのであれば、俺は今、世界そのものと一体となった。
全てを理解した俺は、ゴンゴンさんの腕を振りほどき地上に這い出すと、元凶である赤竜を討つため飛び上がった。
まるで、世界の終りのような顔で近づいてくるシリウスを放置して、俺は赤竜に接近した。救助活動は後回しだ、大丈夫、一瞬で片を付けてやる。
――ゴン!
俺の頭が、未来の自分を映し出した。今の状態で拳を振るっても威力が足りない、鱗に弾かれるだけだ。確実にケリをつけるために【神化】を発動させ、奴の首に狙いを定める。
――グシャリ
赤竜は死んだ。
さてと、地上に降りようか。




