第48話 赤竜よ、お前は素晴らしい噛ませ犬だった
「ミルザム! ポラリス! アルドラ! プレアデス!」
シリウスは走り叫んだ、塵と消えた平地に向かって。赤竜の火力はすさまじかったらしく、炎が通り過ぎた今でもシリウスの全身を焦がすほどの熱気が轟々と立ち上っていた。
「うぁ~、びぃーっくりしたぁ~」
「ミルザム!」
「けはっけはっ! 防御が間に合って助かったのだぁ」
「ポラリス!」
のしかかっていた土砂を押し上げるようにして、ミルザムとポラリスが地面から顔を出した。2人とも、事前に異変に気が付き難を逃れていたようだ。
そしてその直後、空中に避難していたであろうアルドラとバールが着地してきた。だがプレアデスとゴンゴン、それに他の宿泊客の気配はまるで感じられなかった。
まさか……シリウスがプレアデスの死を考えた時、地面が輝きだし大勢の人間が青白い結界に包まれて地上まで浮き上がってきた。
「間に合ったでござる、一体何が起こったでござるか!?」
「店主! …………ゴンゴン、お前も無事だったんだな……プレアデスは、一緒じゃないのか?」
「安全な……所に、みんなを」
ゴンゴンの声は、ひどく弱弱しかった。
よく見ると、全員どこかしらに怪我があるようだ。結界のおかげで致命傷は避けられたようだが、散弾のような小石に打ち抜かれ血を流すもの、体をぶつけて骨が折れているものまで。
中でも店主は全身が焼けただれ危険な状態、ゴンゴンは背中側に悲惨な程の損傷があった。
「拙者は平気でござる! 体質のせいで、熱にさらされると体がこんなになってしまうでござる。痛みはあるでござるが、対処法は心得ているから大丈夫でござる!」
彼は平気なようだ、なら他の人達はどうだろう。特に緊急性のある怪我人はいないようだった……ただ1人ゴンゴンを除いて。彼の損傷は間違いなく致命傷だ、今こうして生きている事が不思議なぐらいに。
不運……としか言いようがなかった。遮蔽物の場所、吹き飛ばされる距離、結界の発動タイミング、あらゆる幸運と不運が組み合わさって生存者は決定された。
シリウスは、ゴンゴンを見捨てる事を選んだ。
当たり前だが上空にはいまだに赤竜が待機し、次なる一撃を放とうと備えている。更には新たな赤竜が集まってくる気配もあった。もうじきこの里が戦火に包まれる事は明白だった。
今優先すべきは更なる犠牲者を出さない事、そう考えてシリウスは行動を開始しようとした。
――グシャリ
何かがつぶれる音を、シリウスは聞いたような気がした。
誰かが瓦礫の下敷きになったのか? それともただの聞き間違いか? 音の正体はすぐに分かった、何故なら当の本人が上空から落下してきたからだ。
そこには頭を潰され、息絶えた赤竜の姿があった。先ほどの奇妙な音は、これの頭がつぶれた音だったようだ。だが一体、誰がこれをやってのけたのだろう?
正体を探ろうと見上げた先には、【神化】したプレアデスがいた。




