第47話 イオルムガルド大戦勃発
お待たせしました、最新話です。
「どうしたプレアデス?」
「プレアデス、死んじゃったのか?」
「寝たみたいだな……起こさないでやれ、死ぬほど疲れてる」
プレアデスが眠りに落ちたことを確認したシリウスは、口にしかけていたこの国の重要な話を中断させた。今はなしても、もう1度プレアデスに説明するのが手間だと判断したためらしい。
「だがアレックス達には、すぐにでも伝えておくべきだろう。彼らには彼らの予定があるはずだ、俺達と行動を共にできるかどうか確認しておく必要がある」
そう言ってシリウスは、アレックス達の宿へと向かった。ロドリエスも、シリウスに何かあってはいけないからと後に続いた。
外はすっかり日が落ちていた、じきに民家の明かりも消え里は暗闇に包まれるであろう。用事を済ませて早く戻らねばと、シリウスは足を急がせた。
「やはりゴンゴン様には、説明しないおつもりなのですか?」
「珍しいなロドリエス、俺に意見するだなんて」
ロドリエスの問いかけに、シリウスは足を止めた。
「バール様がこう言っておられました、主人の間違いを正す事が補佐の役目であると」
シリウスが何も伝えなかったのは、手間を惜しんだから……ではない、ゴンゴンやポラリス達を危険に巻き込ませないためだ。
昼間に宿の店主を問いただし、シリウスは情報を聞き出す事に成功した。
彼が言うには、この国の王が里のドワーフ達を王都に招集し、竜族を殲滅するための兵器を造らせているらしいのだ。
それが冗談でない事を、シリウスは瞬時に理解した。
シリウスは知っていた、この国が近年、火薬や鉄鉱石を大量に輸入している事を。招集された職人達が、全員腕のある武器職人であることを。
そして、竜族殲滅などという大事を引き起こそうとしている動機が存在している事を。自分達が行った火山活動の調査、それによると近いうちに大規模な噴火が起こり、大陸全土に大規模な被害が出る事が判明していた。人間の生存圏を確保するために、竜族の土地を侵略しようと動き出す事は容易に想像できた。
その真偽を国王から直接確かめるため、仮に戦争を起こすつもりでいるならばそれを止めるためにシリウスはこんな夜更けに宿を飛び出してきていた。
「俺がこれからしようとしている事は、国を丸ごと1つ敵に回しかねない行為だ。プレアデスにもアレックスにもそれぞれの目的がある、俺のプライドの為に巻き込むわけにはいかない」
「それが……シリウス様のお考えなのですね」
ロドリエスは、袖口から自らの武器であるトンファーを抜き取り構えた。
「あなたはこの先、10や20もの国を救われるお方、決して死んではならないのです!」
「落ち着けロドリエス、俺は今から話し合いに行くだけだ。俺の思い過ごしならそれでよし、仮に計画が進行していても止めるための手札は用意してある」
「ならばなおの事、全員で向かえばよろしいでしょう! 命の危険があるからこそ、皆を置いていくのでしょう! ならばわたくしはあなたを止めなくては――」
ロドリエスは、突然涙を流し始めた。
元軍人であるロドリエスにとって、上官の意思に背く行為は死よりもつらい行為であったのだろう。だがそうしなければならないと、ロドリエスの中で何かが叫んでいた。ロドリエスは覚悟を決めた、例え破門にされようと、命を落とす事になろうともシリウスを止める覚悟を。
――ヒュュン
夜風とは思えない暖かい風が、2人の頬を撫でた。見上げた先には、燃えるような赤い鱗を纏った飛竜の姿があった。
そして赤竜は大きく口を開き、炎を放った。
炎の行き先は、冒険者の宿、五右衛門。プレアデス達が眠っていた宿は、まるで高波にさらわれたかのように、粉々に燃え尽きながら消え去った。
「聞けェェェ、人間よォォォ! 今よりこの土地は、我ら赤竜の民が支配する!」
赤竜の宣戦布告の咆哮が、ドワーフの里全域にこだました。




