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怠惰の神候補   作者: タイト
新大陸編(前編)
44/74

第44話 今日のりんごんのコーナー(その3)

 少し時間をさかのぼり、プレアデス達が洋上の空を優雅に移動している頃、転移装置を発動させたりんごん達は、イオルムガルド大陸に無事到着していた。


 転移の祠は、荒れ果て崩れ原形をとどめていなかったが、転移陣はそのまま残ってた。祠の周りは誰も手入れしていなかったようで、空を覆い隠すほどの深い森に侵食されていた。


「も~、なんで私まで連れてくるのよ、あんた達だけで来ればよかったじゃない!」

「そうはいかねえさ、あんたはビーストの連中の顔を知っちまったんだろ、1人で歩いてたら奴らに始末されてたかもしれねえぞ」

「それは……そうかも。でも仲間に連絡は! この人数でテニシラを助けられる!?」

「この国は、世界でも有名な軍事国家だ。おれっちはここにいくつかコネがあるからな、戦力ならいくらでもそろうぜ」

 ドヤ顔でそう言い切ったホルスに、りんごんは素朴な疑問をぶつけた。


「ホルスさん……この国で何しでかしたの?」

「あ、ああ、昔はこの国まで……牛肉を売りに来てたんだ」

「へぇ~、きっとすっごくおいしかったんだね」

「そ、そうだな、ははは……ところでりんごん、プレアデスの現在地は分かるか?」

 気まずくなったホルスは、話題を変えようと、そう質問した。


「勿論だよ、ボクはいつでもご主人の居場所が分かるんだ。…………あれ? ホルスさん、まだご主人、海の上を飛んでるみたい、こっちに向かって」

「よし、先回り成功みたいだな。プレアデスが入国するまでに、色々済ませに行こうぜ」

 そう言ってホルスは2人を抱えると、【フレアボム】を足元で連発し緑の天井を突き破るように飛び上がり、王都に向けてまっすぐ走りだした。


「止まれ、何者だ!」「馬鹿野郎! あれはホルス様だ、お通ししろ!」「城の奴らにも連絡だ、かすり傷1つ負わせたらぶっ殺すぞ!」「フェフェフォ―(了解)」


 そんなこんなで、りんごん達は王都までたどり着いた。


「よ~し、まずは腹ごしらえだ、お前らも好きな物頼め」

「ボク天使だから食べない」

「さっきの森で、葉っぱかじったから平気」

「ううう、ボッチ飯かよ、コンチクショー!」

 ホルスはりんごん達を待機させ、近くの飯屋に入っていった。


「ねえねえ、あなたテニシラと知り合い何でしょう?」

「うん、そうだよ、よくボクの牛小屋におっぱいを眺めにきてたよ」

「ふーん、私は卵生だから、おっぱいのありがたみはよく分からないわ」

「ボクもよく分かんないや、重いし大きいし立ち上がる時踏んづけたりするし」

「赤ちゃんに、あげたりしないの?」

「ボクは牛型の天使だから、これは半分飾りなんだ――あれなんだろう?」


 人込みに紛れて、辺りを見渡しながら早足で逃げていく人影をりんごんは見た。人影が見えなくなったそのすぐ後に、今度は城の人間らしき男達が誰かを探すそぶりを見せていた。


「――――お、ちょっと電話かけてくる、すぐ戻る」

 男の1人が、集団から離れた。どうやら、誰かと連絡を取るつもりらしい。


「王宮まで1本頼む」

「え、あの?」

 男は、りんごん達の目の前に来てそう口にした。

 この国では、キルモーフと言えば電話、電話といえばキルモーフというのが常識だった。店先でじっとしていたセザンヌを、公衆電話か何かと勘違いしているようだ。


「あの……ボク達……」

「おっと悪い、カネが先だったな、ほれ」

 コインを1枚取り出し、りんごんに咥えさせた。


「う、うんっ、こちらチャールズ、ターゲットは32番に向かって逃走、直ちに始末せよ。繰り返す、32番に逃走、始末せよ――」

「フェフォ……フォー(またのご利用を……お待ちしております)」

 何やら物騒な単語が聞こえてきたが、セザンヌは立派に仕事をやり遂げていた。彼女はテニシラの指導の下、テレパシー能力を鍛えていたため王宮にまでメッセージを無事送ることが出来ていた。

 仮に彼女がただの通りすがりのキルモーフだとばれていたら、ホルス共々抹殺されていただろう。


「ふぃ~、食ったっ食った……でだ、なんか物騒な話が聞こえちまったなぁ」

「小声だったのによく聞こえたね、ボクでもぎりぎりだったのに」

「ねねねえ、荷物光ってる、さっきの人達の方に伸びてるみたい!」

 ホルスのカバンから、前回のように光が伸びていた。この光の先には強力な武器が存在している、そしてビーストは強力な武器を収集していると聞く、ということは……。


「さっきの連中が例の奴らかもしれねえな、プレアデスへの手見上げだ、おれっち達で捕まえてやろうぜ!」

「危なくない? また今度にした方がいいと思うよ」

「大丈夫だ、問題ない。あの人数ならおれっち達で余裕さ、行くぜ」


 ホルス達は、光に導かれるままに人込みをかき分けて進んだ。

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