第4話 大人の時は子供がうらやましいけど、子供に戻ると大人がうらやましくなる
「悪魔、何の事ですか? そんな事よりここはエルマーズ家のお屋敷ですよ、武器を捨て大人しく投降なさい!」
「ならぬ! その赤子は、神の定めた理に反してこの世に生まれ出た邪悪な存在、いずれこの世に災いをもたらすであろう。邪魔立てするなら、貴様諸共始末する!」
OK、完全に理解した。
俺の誕生会に来てたジースとかいうおっさん、あいつが犯人だ。きっとあいつは、このエルマーズ領を自分の支配下に置くために俺を消そうとしてるんだ。俺は本来生まれないはずだったって聞くし、悪魔呼ばわりする理由は十分だろう。
なんて事を考えてるうちに、エミリアがやられた。一応護身術は習ってたみたいだけど、大の大人数人を相手取るのはさすがに無理だったようだ。
赤ん坊の俺相手にナイフを構え、すたすたと歩み寄ってくる侵入者達。残念、俺の冒険はここで終わってしまった……。
――セット! 【眠り攻撃】。
人生経験舐めんなよオラァ! こちとら、無敵の盗賊数十人を相手にした事だってあるんだ。俺を始末するつもりなら、気付け薬100個用意してからにしろ!
「ぐぐぐ、罠か? きゅ急に眠気が」
「悪魔の呪いかぁ、こんなものに屈してたまるかぁぁぁ!」
魔力が足らないか、さすがに。
だったら、【オーラ】で強化だぁぁ! 【オーラ】は肉体を強化する技、そして魔力は体内で生成される力、つまり魔法は【オーラ】で強化できる!
「ぐごぉぉぉ、ぐごぉぉぉ」
侵入者達は、全員動かなくなった。
その直後、どかどかと騒がしい足音が廊下を打ち鳴らし、返り血で血まみれになった俺の父親が姿を現した。
「プレアデス、無事か!」
「ふぎゃぁぁぁ、ふぎゃぁぁぁ!!」
「うう、無事だったのかぁ、良かった……」
その後、父の働きで事件の真相は明らかになったようだが、赤ん坊の俺には一切情報が入ってこなかった(気になるだろおい)。
俺とエミリアは医者に厄介になり、検査の結果異常なしと判断され屋敷に戻った。エミリアは、何もできなかった事を悔いて、屋敷内で腕の立つ使用人を相手に訓練を始めたようだ。彼女の場合、戦闘より料理の腕を磨いてもらった方が俺としては非常に助かるんだがな。
警備の人間も増えた様子で、俺が成長するまで安心できそうだ。
な~んて考えだから、前世の俺は苦労したんだろうが!
今回の件ではっきりした、俺の目先の目標は、自衛手段を身に付ける事、それもできるだけたくさん。
だが問題は、妙な行動を起こして今回の様に変な奴らが集まってくるかもしれない事だ。ただでさえ貴族ってだけで目立つのに、生まれてすぐ歩きだしたり、話だしたり、魔法まで使えるなんて事になったら怪しい連中が寄ってくるのは確定的に明らか。
エミリアと話をして、協力体制を作るのもいいが、彼女の場合どんなボロを出すか分からない。
ならば俺の父親はどうだろう? 彼は多忙な身だ、いざというとき俺のそばにいない可能性が高いし、他の人間に警備を任せるなら現状と大差ない。それどころか、警備に付けた人間から俺の素性がばれる危険がある。
はぁ、やっぱりここは子供らしく、身の回りの事を大人に任せるのが最適なんだろうか。