第38話 キルモーフは、訓練次第で多種多様なスキルに目覚める(異世界豆知識)
「ここは冒険者の宿でござる」
「アイエエエエ!「シンク君どうした!」……忍者がいたものでつい癖で」
冒険者の宿、五右衛門は、転生以来の和風な雰囲気の宿だった。
そこで俺達を出迎えてくれたのは、忍者装束に身を包み目元にゴーグルの様な物を装着し、肌の露出が0パーセントの男性だった。
「驚かせてしまい申し訳ない、拙者は全身にひどい火傷を負っているため、このような姿でしか人前に出られぬでござるよ」
「そうなんですか、てっきり忍者が宿をやってるのかと」
「むむ? 拙者は正真正銘忍者でござるよ、きちんと里で修練に励んでいたでござる」
ツッコミどころの塊みたいな人だな……。
「ところで、俺達泊まるところを探してるんですが、この宿って魔獣の連れ込みは可能でしょうか?」
俺は、外で待っているアルドラの説明をした。
「もちろんでござる、ここは冒険者の宿、テイマーの来客も織り込み済みでござる」
「だそうです、ゴンゴンさんはどう思います?」
「テイマー用施設がある宿は少ないし、他を探して日が暮れてしまうようだと外の彼らがかわいそうだ。うん、オレもここにするべきだと思う」
というわけで、しばらくこの宿を拠点にする事になった。
シリウス達の事情が分からず、こちらといつ合流できるかはっきりしないため、広間を1室借りる事にした。これなら部屋が埋まってシリウス達が泊まれない、なんてことを心配しなくて済む。
「くぅ~ん」
「こらアルドラ! そっちは人の家、宿はこっちだ」
「おいおいなんだあれ」
「なんかのショーか?」
「おれらも行ってみようぜ!」
慣れない土地でビビりまくるアルドラを、宿まで誘導しようと奮闘していると、里の住人や冒険者達が群がってきた。人だかりが怖いのか、アルドラは体を丸めて動かなくなってしまった。
「しょうがない、ゴンゴンさん頼みます」
「よいしょっと、こらこら暴れるんじゃない、大人しくするんだ」
「ほ~れアルドラ、ビスケットはここですぞ~」
「はっはっはっは、わおーん!」
餌やら何やらで気を引き、ゴンゴンさんが無理やり宿まで持ち運ぶ。
まさかアルドラが、こんなに憶病だったとは。飼い主のシリウスがそばにいないせいもあるだろうが、それにしたってこれは問題あるんじゃなかろうか。
だが騒ぎが起こった事で、アレックス達も近くまで来ていた。怪我の功名、これは話しかける絶好のチャンスだ。
「もしやあなた方は、スーパーノヴァのアレックス様ではありませんか?」
さっそく、バールが行動に移していた。
「ええ……もしやあなた方はヘブンズゲートの!?」
「はい、シリウス様と旅をさせて頂いております」
「おお! それは何という偶然、良ければ旅の話を聞かせていただけませんか!」
何というか、若干騙してる感が出ている気もするが、嘘はついてない。
ともかく、シリウス達と連絡をとろう。仲間が出来るかどうかは、あちらにとっても重要な事のはずだからな。
「すみません、竜族の里にいるシリウスまで1本」
「フェフォフォフォー(通話料をこちらにお願いします)」
「あ、どうも」
というわけで、俺は連絡用キルモーフの前にいる。
彼らキルモーフは、仲間同士でテレパシーを送ることが出来る。その習性を利用して生まれたのが、目の前にあるキルモーフ電話だ。
通常キルモーフのテレパシーは4000メートルほどしか届かないが、彼ら電話キルモーフはテイマーに訓練され、その距離を10倍近く伸ばしている。
ヘブンズゲートのメンバーは全員、キルモーフ電話が通じる通信機を所持している、これで直接シリウスと話ができるはずだ。この事実に宿をとる前に気が付いていれば……いやきっとたぶんシリウスもここに泊まるはずだ! 恐らく。
キルモーフは全身を微振動させながら、体をシャカシャカと揺らし始めた。
「こちらシリウス、どうぞ」
……俺の、真後ろから声が聞こえてきた、俺の知らない間に戻ってきていたらしい。見知らぬ女性が2人も一緒にいた、彼女達が例のポラリスとミルザムだろうか。
「フェフェルフォ?(通話を延長しますか?)」
「いや、もういいです」




