第3話 貴族の子ですので、命を狙われるのは当たり前
俺の名は、プレアデス=エルマーズ。エルマーズ領、領主ルーク=エルマーズとその妻ナタリー=エルマーズの間に生まれた第一子である。
「旦那様、お加減いかがでしょうか」
「う~」
そして彼女が俺の妻、エミリア=グラスプ改め、エミリア=エルマーズ俺の妻だ。今は俺のおしめを変えてもらってるところだ。
俺の第三の人生が始まって3日、以上がこの世界について俺が得た情報だ。……うん、非常に少ない。
ま、今は赤ん坊なわけだし、人並みに動けるようになるまで辛抱かな。
「る~るる~、ららら~」
「たぁう!」
「この歌はお嫌いでしたか? シンクさんが良く口ずさんでいるのを聞いて、いい歌だなーと、あ! シンクさんというのは――」
シンクは俺の前世だよ! 俺についての説明はいいから、さっさと続きを歌ってくれ!
「たうたう」
「その時彼は、カンナさんの危機を感じ取って、現場に走っていきました」
はっ! エミリアがまるで恋する乙女の視線で遠くを見ている。あんなグータラ男がいいのかお前は、今の俺を見て見ろ、そいつの3倍はグータラしてるぞ!
「シンクさん、ご無事でしょうか? あ! 申し訳ありません、旦那様。旦那様の前で他の男の話など――ダメですね……こんな心構えでは、もうわたしは身も心も旦那様に捧げなくてはなりませんのに……」
ぐおぉぉぉ、某子供探偵の気持ちが今痛いほど分かった。目の前にいるのに正体を明かせないこの感覚、憎いこの口もきけないからだが憎いぃぃ。早く大きくなりたい、そしてエミリアに事情を説明したい。
――りんご~ん
そうだ! 別に成長しなくたって、魔法使えばいいんだ。前世で昼寝用に覚えた【消音】、あれを改造すれば人語が出せるんじゃないか? 音は空気の振動だから、消すことが出来たなら出す事だってできるはずだ! よし、やってやるぞぉぉぉ!
今夜は特に静かだし、練習にはもってこいだ……いや、静かすぎじゃね。夜だからって、人の足音つないのはさすがにおかしい……まさか!
俺の考えを肯定するように、窓ガラスが割られ、入り口の扉さえも破壊され、そこから武器を装備した何者かが複数現れた。彼らの装備には全て、教会関係者であることを現すマークがついていた。
「娘よ、その悪魔をこちらに渡してもらおうか」
侵入者は、俺に手を伸ばしながらそう口にした。