第27話 踏んだり蹴ったり、アッパーをくらったり
「ロロエル、本当にここなのか?」
「ああ間違いねえ、ここが奴らのアジトだ」
「……ただの平和な孤児院に見えるぞ」
ロロエルの情報を頼りに犯罪組織のアジトに向かうと、そこには孤児院が運営されている少し大きな民家があった。例の、エルロー教徒が運営している孤児院だ。
「ここには昔、老夫婦が住んでいたんだ。でだ、屋敷の建築に携わった業者が組織の人間で、隠れ家として利用する為にいろいろ仕掛けてんだと。そうとは知らず老夫婦はここに住み続け、今はそいつらの孫が屋敷の秘密を知らないまま孤児院を経営してるみたいだな」
「むむむ、この屋敷を中心に天力の乱れを感じますぞ。アジトかはともかく、ここに何かがあるのは間違いないようですな」
なるほどな、恐らく秘密の地下室なんかが作られているに違いない。そして、ここの従業員として、もしくは外部の業者として隠れ家を利用して組織の運営を行っているのだろう。
「きゃぁぁぁ、誰か助けてぇぇぇ!」
「「「女性の叫び声!」」」
まさか、俺達がここに来た事を察知して、家の住民を盾にしたのか!? 軽率すぎた、そりゃそうだグリフォンに乗って、空から玄関先に降りてこられたら誰だって警戒する。
しかも、盗賊団が全滅させられたり悪徳商人が逮捕されたり、自分の周りでそんな事が起こって奴らはピリピリしていたはずだ、せめてアルドラは外に待機させておくべきだった。
「くそ間に合えよ! 【待ってろ、今行く!】」
シリウスの姿が、突然目の前から消えた。シリウスは天力術式【待ってろ、今行く!】によって、室内に転移しようとしたらしい。失敗し、俺達の真後ろに飛んでしまったようだが。
「時間がないのに! だったら【強欲の一撃:ルシファ――――」
『中の住人ごと吹っ飛ばすきか!』
「今にも人が死ぬかもしれないんだぞ、ずべこべ言うな!」
――ガチャガチャ
「お~し、ドアの開錠終わったぞ」
「よくやった、ロロエル!」
ロロエルの盗賊スキルの活躍で、俺達は孤児院に無事入る事が出来た。叫び声がした方向へ急いで駆けつけると、そこには武器を所持した怪しげな集団がいた。
見たところ、まだ怪我人はいないようだ。
広い部屋だ、部屋の真ん中には子供達が固まって座らされ、女性が1人武器を持った男達に囲まれ、壁際にも何人か監視役のように男達が立っていた。
「きゃー、強盗よ、誰か早く捕まえて!」
「何だね君達は、人の屋敷にずかずか――けはっ!」
「……女性1人によってたかって、てめえら最低だな」
シリウスの殺気を纏った一言が引き金となり、室内は戦場と化した。男達は次々となぎ倒され、子供達は女性の指示に従い裏口から素早く逃げだした。
そして、俺はシリウスにアッパーを食らわせた!
「な!? 貴っ様ぁぁ」
そして、俺はシリウスにアッパーを食らわせた!
そして、俺は――。
「やめろ! なぜ俺を攻撃する!」
そして、俺はシリウスにアッパーを食らわせた!
何故かって……それはお前が、善良な市民に対して暴力を振るったからだ。
『この人達はただの旅芸人! さっきの女性はここに住人! みんなこの部屋でただ演劇をやってただけなんだ! ほらよく見ろこの武器、全部おもちゃじゃないか』
「な!? いや、俺はただ正義の為に……な?」
そして、俺はシリウスにアッパーを食らわせた!
シリウスは力尽きた。




