第25話 今度こそ、犯罪組織を潰しに行こう
『盛り上がってるところ悪いけど、俺は行かないからな』
「「なんだって!」」
ゴンゴンさんへの説明をする前に、俺はシリウスとバールの打ち合わせを中断させる事にした。
『俺の旅の目的は、神になる事でも英雄になる事でもない、マーテルを救い出してやるためなんだ。ルノワに昔縁があったのは確かだ、でもそれだけの相手の為に犯罪集団相手に突っ込んでいったり、英雄様御一行……ヘブンズゲートの事な、を敵に回すのは寄り道ってレベルを超えてると俺は思う』
「つまりこの娘を見殺しにする、そう言いたいんだな?」
『そうだ、俺は先を急がせてもらう』
「そうか、いい旅をな」
シリウスの殺気を感じてか、ルノワが目を覚ました。
「ぱぱ……や~や~」
ルノワは、その大きな瞳でじっと俺の事を見つめ続けていた。絶対自分を見捨てたりしない、そう信じ切った顔でひたすらじ~っと。
――シャッ!
シリウスのオーラブレイドが振り下ろされた。
そして、それをバールが自分の杖で受け止めた。
「な! 貴様、主の決断に逆らうのか、それでも天使か!」
「ええ逆らいますとも、主が間違いを犯したなら、それを正すのが吾輩の役目」
間違いだって? 確かに目の前の子供を見捨てるのは、良くない判断かもしれない。だが可哀そうだからとか、目の前で困ってるからとか、そんな理由で全員助けてたら本当の目的を取りこぼす事は明白だ。
綺麗ごとを語っていいのは、実力が伴う奴だけなんだからな!
と思っていたら、バールの考えは至極、理にかなったものだった。
「プレアデス様、お聞きください。あなたは神を目指すつもりはないと、マーテル様を救い出すのが目的だと、そうおっしゃいましたね?」
『ああ、そうだ』
「吾輩もマーテル様の件は存じております、なんでも天界に貯蔵されていた天力を不正に利用した罪で地獄に落とされたそうですな」
「当然の罰だな、王族の宝物庫から財宝を盗み出すような行為だ」
俺は、シリウスのその言葉を否定した。
旅立ち前にルークから、マーテルについての情報提供があった。彼女の投獄理由は、天力の不正利用、および強奪だと。
だがマーテルはそんな奴じゃない、そう信じているから彼女の潔白を証明するために旅に出たんだ。
『犯人は他にいる! 俺はそれが教会関係者の誰かだと睨んでいる!』
「……その人は犯人じゃない、そう信じるからボロボロになるまでたった1つの真実を追い続ける。その姿勢は称賛に値する、だが相手は天界の神々だ! その程度の不正を見抜けないほど愚かではない!」
『だが可能性はゼロじゃない、そうだろう』
「そこでプレアデス様に、もう1つの選択肢をご用意しました。神の座につき、ご自分の権力でマーテル様を地獄から救い出せばよいのです」
『……それは無理だ』
元ルシフェルの権力でも無理だと、ルークから言われた。だからこそ俺は、自力で無実の証拠を集めようと旅だったんだからな。
「確かに……ではそれが10柱なら、100柱ならどうでしょう。大勢の神々がマーテル様の釈放を訴えたとしたら、天界側も無視できないでしょうな」
「数が集まろうと、罪人の釈放などありえない!」
「罪……ですか、人の営みによって生み出されるエネルギーを天界の都合で管理し、それを下界の民のために使用した者を罪人として処罰する、果たしてどちらが罪深きものなのか……」
『なるほどな、天界のルールごと変えちまおうって話か!』
バールの言う通り、そもそも人間が作ったエネルギーを、何で他の奴が許可も無く管理してるんだよ。言ってしまえば、神々の方が人間から見たら泥棒じゃねえか、それを持ち主に返した奴を罪人扱いしてるのがそもそもおかしいじゃねえか。
「その通りでございます! その為にもプレアデス様には力をつけていただかなくては。そこで彼女です、怠惰の実力は配下の数と質が最も評価されるのです。彼女は魔物の王ですから、将来性は十二分にございます、ここは是が非でも配下に加えておくべきでしょう!」
バールは今までで一番、声を張り上げてそう言い切った。
「ぱぱ……や~や?」
俺は、黙ってルノワを抱きしめた。
俺はたった今、ルノワが殺されなくてほっとしている事に気が付いた。
こいつに、眠り方を教えたのは俺だった。寒さで震えないよう火を焚いてやったり、餌を飲み込めるように細かくしたり、思い返せばいろいろあったな。
俺は自分でも気づかないうちに、仲間を見殺しにするところだったんだな――。
『バール、ありがとう、助かった』
「いえいえ、これも補佐の務めでございます」
よっしゃ! 新しい目標も見つかったし、さっさと悪党ぶちのめして、さっさと次の目的地に向かわせてもらおうか。
「オレはゴンゴン、君は?」
「わんわん」
「そうかそうか、アルドラか。空を飛ぶってどんな感じだい?」
あ、ゴンゴンさんマジで忘れてた、すまん。




