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怠惰の神候補   作者: タイト
ラルティーモ入国編
23/74

第23話 今日のりんごんのコーナー

次回から第3章開始です。

「ほ~いこれ、ここに全部書いてるから、じゃね」

「あ、待って」


 プレアデス達が激しい戦闘を行っている頃、とある牧場で天使達が会話? をしていた。


「モォ~、ボクの前足は器用じゃないのに、何で本にして持ってくるのかな?」

 彼女は、天界から送られてきた1冊の本に悪戦苦闘していた。


 彼女の名はりんごん、かつて女神マーテルの指令を受け、シンクのサポートの為に下界に送られてきた、メスのホルスタインの姿をした天使だ。天使は多忙な神々に代わって下界で仕事をこなすために、下界の生き物に酷似した姿をしている。


「どした~りんごん、さっきのは友達か?」

「あ、オーナーさん」


 りんごんは、大規模転移に巻き込まれた後すぐ、この牧場のオーナーのホルスに拾われ一緒に暮らす事になった。それからしばらくして、女神マーテルの投獄と、アシスト先のシンクの死亡を聞かされ、次の指示があるまで待機するよう上から命じられていた。


 それから2年の時がたち、ついにりんごんへ指令が下った……下ったのだが。伝令役の天使が、適当な仕事をして帰ってしまい現在にいたる。


「あのねオーナーさん、この本をボクの前でパラパラッてしてほしいんだ」

「こうか? こんなんで読めるのか?」


 ――ピピピピ、カチッカチッ、りんご~ん

「うん、完全に理解した」

「すっげ~な、おい」

「ボク行かなきゃ、次のご主人、プレアデス様が待ってるから」


 りんごんの次なる仕事は、新たに生まれた怠惰の神候補のサポートだった。

 本来なら、体が自由になり始める5、6歳までサポートの天使を送る事は無いのだが、プレアデスはすでに自由に活動をしているので、今からでもサポートの天使を送るべきだと判断されたらしい。


「そ、そんな急に、もう行っちまうのか」

「うん、ご主人を狙う怪しい奴が現れたんだ、だから急いで助けに行かないと」

「そっか……りんごん、ちょっと足を上げてもらえるか?」

「え!? あ、うん」

 ホルスは、りんごんの蹄の具合を確認した。


「あ~やっぱりな、この足で旅立ったらすぐくたびれちまうぜ」

「そうなの? 普通に歩けるよ」

「おれっちは元冒険者だ、足元をおろそかにして不幸にあってきた奴を山ほど見てきた。ちょっとだけ時間をくれ、いいもん付けてやるから」

 そう言われたりんごんはホルスについ行き、蹄を手入れされ蹄鉄を履かせてもらった。


「どうだ、緩かったりきつかったりしないか?」

「大丈夫……かな?」

 りんごんはてこてこと歩き回り、足の具合を確認した。


「じゃあオーナーさん……元気で」

「あ! ちょっと待――――」


 こうして、りんごんの旅が始まった。

 目的地はラルティーモ王国、普段のりんごんなら3日もあれば到着できる距離だった。しかも今は、ホルスからもらった蹄鉄がある。まるで地面を倍の力で蹴るような、それでいて足への負担をまるで感じない状態でりんごんは走り続けた。


 そして、思いっきり木に追突した。


 気がつけば、すっかり夜になっていた。普段より速く走れる事に夢中になって、周りへ気を配る事を忘れていたようだ。

 明るくなるまで、一休みしよう。

 そう思って、りんごんは適当な場所にしゃがみこんだ。



 ――ガサガサ、ガサガサ

「誰!?」

「ぴょん、ぴょん、うさうさ」

「な~んだ、うさちゃ……ん!?」

 うさぎに気を取られたその一瞬、りんごんの背に何者かが飛び掛かり首に縄をかけられた。振り払うために立ち上がろうとしたが、物陰から姿を現した男達に縛り上げられ地面に押し倒された。エロ同人みたいに。


「へっへっへ、今夜は牛の丸焼きが食える、ついてるな~」

「おれおれ、おれが首に縄かけたんだぜ」

「引きずり倒したのは、おれだからな」

「いやおれだろ、おれのおかげでこいつは倒れたんだ」

 どうやら彼らは山賊のようだ、見張りの途中で予想外の獲物を発見し、たった今仕留めたといった具合だろうか。


「あの、ボク美味しくないですよ、だから見逃して」

「へっ! 捕まった獲物はみんなそう言うんだよ、誰が逃がすか!」


 りんごんは、生きる事を諦めた。

 どうせ死んでも24時間後に復活できる、ラルティーモへの到着が1日遅れるだけだ。そう考え、りんごんは静かに目を閉じた。


「よう、おれっちの家族に何してんだ」

「何だお前、ぎゃぁぁ!」

「よくも兄貴、ぐはっ!」

「ぎゃー、こいつ強えー、全員ずらかれー」

「「「「ぬわーーー」」」」


「怪我はないか、りんごん」

「あれオーナーさん? なんで、牧場は!?」

「妻と息子に任せてきた」

 りんごんが目を開けると、そこにはホルスがいた。


「まったく、蹄鉄は消耗品だぞ、壊れたらだれが治すんだ」

「これ壊れるの? じゃあ返すよ、それならいいでしょ?」

「だぁぁぁ! おれっちに世話焼かせてくれって言ってんだよ」

 りんごんは、訳も分からず首を傾げた。


「2年前だ、病気のせいでうちの家畜がみんな死んじまった。そこに現れたのがお前だ、お前が乳を分けてくれたり、畑にクワを引いてくれたり、魔獣を追い払ったりしてくれたおかげで、今の生活ができるようななったんだ、おれっち達家族は」

「お世話になったんだもん、お返ししないと」

「そうだよ、おれっち達はお前に心底世話になった、だから恩返しがしたいんだ」


「……恩返し出来たら、オーナーさん、うれしい?」

「ああ、もちろんだ」

「じゃあ一緒に行こう、オーナーさんがうれしいとボクもうれしい」

「よっしゃあ! そんじゃ改めて、よろしく頼むぜ、りんごん」


 こうして、りんごんとホルスの旅が始まった。

 はたして、彼らは無事プレアデスの元にたどり着けるのか。



 次回、今日のりんごんのコーナー

『魔剣の担い手、セザンヌ登場』お楽しみに。

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