第22話 怠惰vs強欲 後編
「シンク君! これは一体何が起こっているんだぁぁ!」
『作戦は、俺にまかせろで! 全員防御態勢を!』
「助力が必要であれば、いつでもお声を」
そう言ってバールは、ゴンゴンさん達と共に結界に引きこもった。
周りは見渡す限りゴブリンまみれだ、下手に動き回られるより1ヵ所に固まってくれる方が助かる。
「やれぇぇ、手下ども! クソガキどもをぶっ殺せぇ!」
「ゴブゥゥ『【メガインパクト】』ゥゥワァァァ……」
俺の【メガインパクト】に巻き込まれて、ゴブリン達の半分が吹っ飛んだ。反対方向のゴブリンを吹き飛ばすために、もう1発【メガインパクト】を放った。
「「「ゴブファァァ!」」」
あ、肩組んで踏ん張りやがった、だったら――。
『【催眠波動】か~ら~の【バインド】』
「「「ゴッブゥゥゥ」」」
眠気で弱らせたところを魔力の縄で縛りあげる、相手が肩を組みあってくれたおかげで、縛り上げるのが随分と楽だったな。
「ちぉちょちょ、おかしいでしょ! あんた怠惰担当なのに何で自分で戦ってんの! しかも赤ん坊のくせして、何でそんなにボカスカ魔法撃てるわけぇ!?」
それは俺が、前世の記憶を引き継いでいるからだ。
赤ん坊の成長はすさまじく、特に脳みそはビックバンのごとく成長するらしいが、俺の知識は魂の中にすでに蓄えられているため、脳の成長を必要としなかったのだ。
そしてそのビックバン級のエネルギーは、すべてそれ以外の部分にまわされた、その結果が現在の俺というわけだ。
いわゆる転生特典というやつで、転生を繰り返すと魂と肉体のバランスが崩れて崩壊したり、前世と今世の記憶がごちゃ混ぜになったり、肉体との融合が不完全になって幽体離脱したりと問題があるらしいが、俺はまだ1回目だから大丈夫……とルークが言っていた。
ちなみにルーク自身は10万年分の記憶のせいで、自分が食事したかどうかわからなくなったり、知らないうちに屋敷の外を散歩してたり、ありもしないものが見えたりと割と苦労しているようだ。
『なあ、勝負はついただろ、どっかいってくれないか?』
「はんっ! 終わりなわけねーだろ、バァ~カ」
ロロエルが空に右手を掲げると魔方陣が現れ、そこから三つ目のカラスが大量に現れ俺達に襲い掛かってきた。
【インパクト】だと効果が薄いかもしれない、だったら――。
『【グレネード】、エンチャント【ニードル】』
俺は、カラスの群れに生成した魔力の塊を投げつけた。空中で炸裂したそれは、大量の針を周囲にまき散らし、大量のカラスを串刺しにする事に成功した。
俺は同じ物をさらに3つ生み出し、空中に放り投げた。効果はてきめん、カラスの群れは出現から1分もしないうちに全滅した。
「つぎつぎ、とっとと出てこい!」
「グオワァァァ!」
今度の敵は、硬いうろこを纏ったリザードマンのような魔物だった。
そいつを片付けた後も、ロロエルは何度も何度も魔物をけしかけてきた。
今更だけど、何でまとめてけしかけてこないんだろう、魔力や天力の都合だろうか? それと、こういった戦い方は、怠惰担当の俺の方が本来やるべき戦い方だと思うんだが……ロロエルも怠惰担当何だろうか?
いい加減飽きてきたところで、ついに向こうは弾切れのようだ。
『んじゃ、俺達は先を急「【メガインパクト】」なに!』
突如、ロロエル自身が俺に攻撃を仕掛けてきた。
放ってきたのは【メガインパクト】、しかも俺が使ったものと形も大きさも魔力の質も全くのおなじだった。
『くっ! 【メガインパクト】!』
「無駄無駄ァ! エンチャント【強風】そして【ニードル】!」
お互いの魔力がぶつかり合い相殺したかに見えたが、掻き消えた魔力の破片がものすごい勢いで鋭い雨のように俺に対して降り注いだ。
体が小さかったおかげで、かすりもしなかったが。
「くくくく、だぁぁはっはっはっは! 勝ったと思ったか、バァ~カ。おれの属性は強欲、他人の使ったスキルを完全コピーできるんだよ。そうとも知らずポンポンポンポン技を打ってくれて、くくくく、笑いが止まらねぇ~ぜぇ」
『…………何故【バインド】を仕掛けてこない?』
「は?」
『正面から仕掛けておいて背後からとどめを刺す、戦いの基本じゃないか。後ろから縛り付けるよう動いていれば、今より有利になったのに何故それをしなかった?』
答えは聞かなくても分かってる、しなかったんじゃなく出来なかったんだ。奴の魔力スロットが少ないせいで、【バインド】までコンボを繋げられなかったんだ。召喚魔法を小出しにしていたのも、すべては奴の実力不足が招いた結果だ。
「お前程度、小細工なしで倒せるからだよ! 【メガインパクト】」
『強がりはよせ【バレット】』
俺の術が奴の術を貫き、勢いそのままに奴の肩を抉った。奴は、何故上級魔法が初級魔法に負けたのか、不思議でならない様子だった。
「くそが! 【グレネード】【ジャベリン】【バインド】!!」
やみくもに放たれたそれらを全てかわし、ロロエルに肉薄した。
『そこで打ち止めだろう?』
「ちっくしょぉぉぉ! お前の技、全部役立たずじゃねえか!」
『その役立たずの技で、はしゃいでたのはどこのどいつだ!』
当たり前だ、お前と俺では体格が違う、魔力の質が違う、戦闘スタイルが違う。他人の技を完全コピー出来たところで、使い手が変わってしまえばそれはただのおもちゃだ。
……昔の自分を見ているみたいでイライラする。
他人の力を利用しようとするばかりで、自分は何の努力もしない。他人の利益に縋り付き、自分からは何の生産性のある行動もしようとしない、まさに寄生虫だな。
いや、寄生虫は病気の予防とかしてくれるからな、寄生虫呼ばわりは失礼か。
『とどめだ、【ギガ・インパ――――』
「うぎゃぁぁぁ!」
『……え?』
「シンク君!」
「ぱぱ!」
「プレアデス様!?」
決着をつけるため、術を放とうとしたその矢先、ロロエルは腹から血を流して倒れた。……一体何が起きたんだ!?
プレアデス達の位置からはるか遠方、ロロエルを打ち抜いた犯人がそこにいた。
「お見事でございます、シリウス様」
「まだだ、急所を外している。行くぞ、ロドリエス! アルドラ!」
「はい、シリウス様」
「わんわん!」




