第2話 0歳児ですが、嫁を貰いました
どうやら俺は、貴族の長男に生まれるという超好スタートを切ることに成功したようだ。俺が産声を上げてしばらく、俺の誕生日パーティーと結婚式が執り行われる事になった。
いきなり結婚と聞いて耳が馬鹿になったのかと思ったが、この世界では普通の事らしい。
「フェフェフォ―」
「フェフェフォ―」
「「フェオッホー!」」
「「「あっはっはっはっは」」」
現在ステージの上では、かつて俺の仲間だったキルモーフと呼ばれる芋虫型の魔物と同じ種族の魔物達が、漫才の様な物を披露していた。
そういえばあいつは、最後の戦いでぼろ雑巾のようになったんだった。みんな無事だと天界では聞かされたけど、そのみんなの中にあいつは入ってたんだろうか、もしかしたら……。
待てよ、ここって前の世界と同じなのか? キルモーフや魔法があるから、地球じゃないのは確かだけど。あちゃー、その辺全然考えてなかった。みんなが俺の死後どうなったか調べようと思ってたのに、もし違う世界で転生してたら調べようがないじゃん。
そんな事を考えていた俺の元に、1人の少女がやってきた。
「始めまして旦那様、わたしはエミリア=グラスプと申します」
そう口にして、彼女はその豊満な胸に俺を抱き抱えた。
その声、その顔、そしておっぱ――んっうん、おぱぁ~い。間違いない彼女は俺の前世での仲間、大商人の娘エミリアだ。よっしゃあ! ここは前回と同じ世界でFA……今旦那様って言った?
「誰がこんなパーティーを開くことを許可した! 中止だ、中止!」
再会の喜びもつかの間、偉そうなおっさんが大声を上げながら会場にやってきた。
「叔父上様……」
「許可は当主の僕が出していますが、何か問題でもジース叔父様?」
「青二才が、随分とでかい口を利くようになったな」
パーティーをぶち壊した男は、どうやら俺の親族らしい。
俺の父親とどっちの立場が上なんだろう? 多分当主を名乗った俺の父親だろうけど、年功序列って言葉もあるし……いきなり家から追い出されるパティーンか、これ。
「何度言えば分かるのだ、その女にお前は騙されているのだ。医者は勿論、王宮のまじない師でさえ、その女が子を宿すことは無いと口をそろえていたんだ。この赤子はお前の子ではない、何かのトリックで自分が生んだように見せかけたに決まっている」
ジースの言葉に、俺の母親は涙をこらえきれなくなった。おそらく俺の転生の影響で、通常起こらないであろう事が起こってしまったんだろう。でもちょっと安心した、自分が誰かの人生を踏みつぶしたわけじゃなくて。
「そうだ、わしの娘を君にやろう。だからそんな女狐とは別れて――」
「【オーラブレイド】……」
父親の指先から、光り輝く刃が飛び出し、ジースの首元を捉えた。
「これから僕の剣技を披露する予定だったのです、叔父様どうでしょう、お手合わせお願いできますか?」
「な……う……」
「どうやらお忙しいご様子、お帰りはあちらです、どうぞ」
「はいぃぃぃ」
ジースが真っ青な顔をしてその場を去った後、会場全体が拍手喝采で揺れ動いた。無理もない、一瞬とはいえあんな華麗な剣裁きを目の当たりにして、感動しない方がおかしい。
ああ、早く大きくなりたい、あんなカッチョイイ技を使えるようになりたい。
――ブオン
あ、出来た。 さすがあの人の息……子……。
やっば、【オーラ】は体力の消耗が激しいんだった
「どうした!」
「プレアデス様、プレアデス様!」
プレアデス、それが今世での俺の名前か、へへ、気に入った……ぜ。