第15話 ラルティーモでの最初の夜
「見ろ! 村の明かりが見えてきた、助かったぞ!」
山を下りてから走り続け、すっかり日も落ちたころにやっと人里が見えてきた。奴らが追ってくる気配もないし、多分大丈夫だろう。
「早く今回の事を、村に滞在している騎士団に報告しよう」
「でも信じてもらえるかぁ、証拠は何もないし、依頼人は村一番の商人だ。下手な事して立場を悪くするより、このまま村を後にしたほうが良くないか?」
「魔族の大群が国境を越えてんだぞ! ほっといたらこの国の中心部まで攻め込んでくるかもしれない、たとえ死んででも騎士団に話を通すべきだ!」
「じゃあさ、王都まで行ってから、そこの騎士団と話そうぜ」
「それで手遅れになったらどうすんだよぉ」
ゴンゴンさんに担がれながら、後ろで歩いている男達の小言を聞いた。
ここラルティーモ王国のすぐそばには魔族の領域が伸びてきており、日々土地の所有権をめぐって争っていると教科書に書いてあった。
ゴンゴンさん曰く今回とある商人から、国境沿いで魔族の怪しげな動きが確認されたため、それを撃退するように10数名の戦士達に声が掛かったらしい。そしてその依頼は罠であり、ゴンゴンさん達はさっきの森で魔族に捕まり、一度は隙をうかがって逃げ出したものの、森の奥で追い詰められ俺に助けられたというのが今回の顛末のようだ。
「とにかくみんな、今日はもう宿で休もう、話はまた明日だ」
「そうですねゴンゴンさん、ぼくら数日ろくに寝てませんし」
「そうだ、休息は力だ。たっぷり寝ればいい考えも浮かぶさ」
ゴンゴンさんの提案で、報告については明日以降という事で、俺達は宿で休む事になった。さすがに数が多いので、空いてる宿にばらばらに止まった。
そして俺は、ゴンゴンさんと同じ部屋になった。
「ガンナックル様、そちらの子は?」
「話は後だ、部屋に案内して欲しい」
「失礼いたしました、ではこちらへどうぞ」
ゴンゴンさんの活躍は、エルマーズ領までうっすらと届いていた。かなり誇張され、ゴンゴンさんが全長10メートルで腕が4本の化け物にされていたが、かなりの手柄を上げている事は伝わってきた。
その彼が赤ん坊を抱き抱えていれば、嫌でも気になる事だろう。
「こちらが、ガンナックル様のお部屋でございます」
「いい部屋だな、よく手入れされている」
「ありがとうございます、それでは失礼いたします」
2人きりになったところで、ゴンゴンさんは部屋の真ん中に寝転がった。
さてと、彼がなぜ俺の正体に気づいたか問いたださないとな。




