第14話 ウォーミングアップで軍隊が壊滅
旅立ちからしばらくして、俺はラルティーモという国を訪れていた。
人里から人里へ道なりに進んでいると、山から煙があがっているのを発見した。山火事かもしれないと思い様子を見に行くと、そこには魔族の軍隊と、前世での知り合いゴンゴンさんがいた。
『俺にまかせろ』
彼に一言告げて、俺は魔族の軍団と向き合った。
「ほう、その姿、先ほどの魔法、どうやら只者ではないようですねぇ。私は魔術師ギザース、魔界貴族ベリル様の忠実な下部でございます」
リーダー格と思われる爺さんが、俺に自己紹介を始めた。ベリルというのがどんな奴かは知らないが、彼はそいつの仲間らしい。
『俺の名はプレアデス=エルマーズ、好きな言葉は日進月歩、嫌いな言葉は痛かったら手を上げてくださいね、だ』
魔族相手に貴族だとか、転生者だとか話すとめんどくさい事になりそうなので、ちょい適当な感じで返しておいた。
「私はこう見えても平和主義者『仲間が来るまで時間稼ぎするつもりか? 道を開けるつもりがないなら倒すだけだ!』」
山の反対側から何かが近づいてくる気配がある、悪いが時間稼ぎに付き合ってやるほど俺は甘くないぞ。
数秒待って奴らに道を開ける様子が微塵も感じられなかったので、道をこじ開けるために奴らの真正面めがけて突っ込む事にした。
「馬鹿め! 真正面から突っ込んでくるなど『【ブースト】【ブースト】』」
俺の体はまだ未熟なので、普通に生活するために【ブースト】で肉体を強化してある。さらにここに来るまでにも1回重ね掛けし、今ので計4回分体が強化された。重ね掛けするほど魔力の消耗は大きくなるが、短期決戦に持ち込めば問題ない。
『【メガインパクト】』
「無駄だ! 【グラビドン】。いくら力を込めても所詮は衝撃魔法、せいぜいこちらを吹き飛ばして陣形を崩すのが関の山よ! こうして重力を強くすれば、『【スマッシュ】』ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
あいつの言う通り、俺の【メガインパクト】は所詮基礎魔法、対抗策はいくらでもある。だからこちらも、それに対する回答は用意してある。
今放った【スマッシュ】は、魔力を砲丸投げのように打ち出す技だ。奴がわざわざ周りの重さを増やしてくれたので、それを利用させてもらった。
本当なら、風属性を付与してスピードを上げたり、土属性を付与して更に威力を増したりさせたいが、生憎まだそこまで手が回っていない。
「ぐふっ!」
「ギャッ!」
「ぐわー」
敵の大将をひるませたところで、更に【スマッシュ】を1ダースほど追加で詠唱し、風よけになりそうな大きめの魔族に向けて放った。
『【メガインパクト】! 更に【メガインパクト】!』
立っている敵が人間サイズの魔族だけになったところで、残った敵に魔術を放つと、ある者は谷底に落ちていき、ある者は岩に叩きつけられ、またある者は地面を何回転もして気を失った。
『ふぅ、敵は片付きました、皆さん逃げてください』
「君はどうするつもりだい?」
『残りの敵と戦います』
さてと、だいぶ体が温まってきた頃かな。
気配からすると、こいつらよりさらに強い連中が1万ほど向かってくるようだ。大群相手の技がいくつかあるから、この機会に是非とも試しておきたい。
「ダメだシンク君! 君を犠牲にする事なんてできない!」
『ちょ――』
「君がこんな無茶をするのは、きっと大きな目的があるからだろう? だが死んでしまっては何の意味もない、健全な体にどれだけの価値があるか君がオレに教えてくれたんじゃないか!」
俺は、ゴンゴンさんの怪力で羽交い絞めになりながら山を下りた。
実戦で技を試したかったが、それは今度の機会になりそうだ。




