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shooting star  作者: ゆぅ
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1話

二年前の高校一年生の時の夏休み。

それは、あれ以上忘れられない出来事があるのかというくらい私にとってかけがえのない大切な思い出の時間。そして私に足りなかった光り輝く星を手に入れる事が出来た時だった。


「えっ?どういうこと?」

一度だけで理解できなかった私は母親にもう一度聞き返してしまった。夏休みが始まる前日のことだった。

「だから、今年はママとパパが結婚して10年の節目なの。それだから2人で2週間旅行に行くことにしたのよ。」

私の驚きは止むことを一切知らなかった。2人が2週間もいない中で料理ができない私は一体どのように生活していけばいいのだか…。しかし、そんな心配は全く必要ではなかった。母親はそのあとこう続けた。

「あ、だから夏休み中、優美音にはママの友達の家に行ってもらうわ。住所はここだから。明日にでも出発するのよ。」

雲ひとつない綺麗な青空の日、今年の夏休みは他人の家で過ごすことが決まった。


次の日

朝の9時から電車に揺られながら今夏お世話になる家に向かう。その家は都心の方にあるため、徐々に電車が混み始めた。電車の中の景色は私の住んでいるところとはまるで違う。中だけではない。窓から見えるのは高層マンションやビルなどの建物ばかりで、緑の姿はほとんど見ることができなかった。ようやく、全く違う土地に来たことを自覚し始めた。

最寄り駅に到着して、スマホを開く。着いたらこのアドレスに連絡するように母親から言われていたのだ。

『坂本優美音です。よろしくお願いします。最寄り駅に到着しました。』

これで大丈夫と。メールを送ると、思いのほか早く返信がきた。

『隣のコンビニの前の駐車場にきて!待ってる〜!』

意外とラフなんだと思った。それに言葉的にも若めの方なのかなって予想を立てた。何はともあれ、とりあえずやっていけはしそうな気がした。

すぐ近くのコンビニに向かうが、それらしい車の姿は見当たらない。それに、待ってる大人がいるような感じでもない。一体どこにいるのだろう。そんなことを考えているといきなり名前を呼ばれた。声の主は会ったことのないはずの同い年くらいの少年だった。

「坂本さんだよな?よろしくね!」

訳が分からなくなってしまった。私の表情に出ていたのか、相手もそれをなんとなく察してくれたようだった。

「あ、夏休み一緒に生活する高田成平。聞いてなかった?」

聞いてなかった。まさか、高田さんの家に息子さんがいるとは…。想定外だった。少しチャラそうで少しだけ不安が増えた。


高田家はみんな優しい人たちだった。家に着いてすぐにお母さんは「暑かったでしょ」と言って手作りのゼリーをごちそうしてくれた。とても甘くてプルプルのゼリーだった。お父さんは散歩がてらに近くを案内してくれた。お店が多かったけど、少しだけ公園に緑があってなぜか嬉しかった。そして、少し不安だった息子さんもフレンドリーに話してくれて一緒にいやすくしてくれてありがたかった。楽器が好きなことやサッカー部に入っていること、お兄さんが1人いることなどを教えてくれた。なので、私も歌を歌うのが好きだけどあまり上手くないことや手芸同好会に入っていること、一人っ子であることなどを教えてみた。

その日の夕飯の時、息子さんとお兄さん(勇介という名前らしい)が何かひそひそと話していた。まるで小動物のように縮こまっていたのが少しかわいらしかった。しばらく話していたかと思うと、急に息子さんが話しかけてきた。

「あのさ、歌うのが好きなんだよね?」

私はミートボールを口に入れながら頷く。

「なら、一緒にバンド組んでボーカルとしてコンテストに出てほしい!」

「ん?!私がボーカル?!」

私の中の驚きはさらに増えていく。

「それと歌も作ってくれるとありがたいんだけど…!」

今年の夏休みはすごいことになりそうだ…でもすでに私の夏休みはおかしいんだ。ならとことんおかしくしてやろうかな?

「いいよ!」

明日からバンド練習がスタートだ!





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