七日目 編集さんとお友達
久々投稿になり、すみません。毎日できるだけ投稿しようと思っていたのに...!
では、続きですね。今回は、視点を六華の編集担当の紗耶香さんにしております。色々視点変えちゃってすみません。それでは、どうぞ!
カフェでの一件の後、私は担当作家の想い人と連絡先を交換し、別れを告げた。そのまま直帰しようかとも思ったが、やり残した仕事を思い出し、憂鬱な気分のまま社への道を歩いていた。
すれ違う人々は、私の表情を見て怪訝そうな顔をする。それもそうだろう。平日の夕方に目元を赤くして俯いて歩く女性なんて、振られでもしたのか、と憐れむ感情が芽生えても仕方ないのだから。でも、私は別に振られたわけでも、不幸なことが起こったわけでもない。ただ、読者に自分を否定されたようなものだから。
そうして、自己完結させながら社への扉を開けると、目の前に真新しいスーツに身を包んだ男性がこちらへと歩いてくるのが見えた。見るからに仕事ができる男のようだ。何だろう...この感じ...何処かで覚えがあるような...?
「おぉ!宇佐美!ちょうどいいところに!お前に紹介したい人が居るんだよ!」
見知らぬ男性の後ろから、私の所属する編集雑誌の編集長が顔を出した。紹介したいというのは、この目の前の長身のモデルみたいな男のことだろう。
「...初めまして。以後、宇佐美さんの部署でお世話になります、白鳥 和真と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「あぁ、これはご丁寧に...。宇佐美 紗耶香です。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」
編集長立ち合いの下で、お互いにお辞儀をする。向こうが頭を上げても、私は胸の引っ掛かりが何なのかわからず、頭を上げられずにいた。
「彼は、高校時代の俺の友人の弟でさ、高校時代のあだ名何だったっけ...?あぁ!思い出した、確か...『図書室の王子様』...だったよな?」
「...昔の話ですよ。」
顔をゆっくりと上げると、編集長が先ほど聞いたあの異名を口にする。それに対して、目の前の涼しげな印象の男は、苦々しい顔で補足する。
「『図書室の王子様』...じゃあ...貴方はまさか、あの子と...?」
「「『あの子』?」」
編集長と白鳥さんが同時に言葉を発する。私はそれに構わず白鳥さんに尋ねる。
「あの、もしかして、長谷川 渉さん、ご存じですか?後、倉敷 六華という女性は?」
先ほど、私が泣く原因を作った男に対して、その自称友人と友人に恋している作家の名を口に出す。白鳥さんはしばし考えた後、こう答えた。
「あぁ、あのスポーツ馬鹿とふんわり女子か...。えぇ、覚えていますよ?彼らが何か?」
やっぱり、あの時の男だ...。間違いなかった...。彼が長谷川 渉にあの子の本を読ませた男にして、絶版反対派の人間...。
「友人じゃないのかい?その言い方は無いんじゃ...?」
「友人だからこそ、言えることもあるんですよ。...それと、私の方から貴女にいくつか質問をしても?」
編集長の言葉に軽く返答し、私に回答を求めてきた。私はどうぞ?と言わんばかりに頷き、先を促した。
「...貴女は、もしかして、呉橋 はな先生の編集担当、で、間違いありませんね?今も、ですが、もっと前...そうですね、『死神と少女』や『迷宮』と言った、彼女の絶版本ができる以前から。」
来た...。その質問は、彼が白鳥さんだと分かった時から予測済みだ。私は身構えると同時に、どう返答しようか迷っていた。
「...正確には、『死神と少女』や『迷宮』の時に担当していたのは、新人編集の方で、あの二冊が発売されてから担当になったのが、彼女なんだよ。」
苦笑いでフォローを入れてくる編集長に、私達は何も言えなかった。
遂に、登場しました、『図書室の王子様』(笑)。さて、これからこの緊迫した雰囲気をどうしましょうかね。
ブクマ初の1件目です!ありがとうございます!凄く嬉しいです!これからもどうぞよろしくお願いします。