3話
なかなか進まないですが、深海律です。
年齢が、色々なものが逆転した関係なだけで二人は仲が悪い訳ではないんです。
どういう事かしら、ね。
正直アーシアは戸惑っていた。
自分は普通ではないモノとして生きてきた自覚があったから、自身の抱えるものは誰とも共有出来ないのだと考えていた。
目の前に同種の人間がいる。
そう考えて呼んだのだ。
でもそれは少し違っていたみたい。
だって、彼は自身が何故追いかけまわされ、ここにいるのかすら知らないと言うのだから・・・。
だか、しかしとも思った。
目の前の男はどう見ても20代後半くらいに見える。
本来『現実の子』の覚醒は5歳くらいで、平均して7歳。
そこから『夢』に追われ始める。
20代後半まで生きているなら親世代からの教育を受け知識を増やし、さらにその後も独自の力を磨かなくては長生き出来ないはず。
その場合何も知らないなんて事はないはずだ。
そういえばこの男、『夢』の遭遇をまるで初めて体験したかの様に言っていなかったかしら?
信じられない話しだけど、少し話しを聞いてみたほうがよさそうね。
どう見てもこの年まで生き残っているこの男は、百戦錬磨のサバイバーといった感じなのにその実は・・・。
だとして如何してこんな事になっているのかしら?
「貴方、何者?」
唐突な話はじめに、目を白黒させるバルド。
何者もなにも、と目の前の少女を凝視する。
この少女には俺は何者に見えているのだろうか?
「何者、とは何の事だ?」
あ、少し声が震えた。
「貴方は今まで『夢』に1度も遭遇した事もなく、『現実の子』についても知らない様だけど?」
遭遇した事がないとか何の事だと更に少女を凝視する。
ただ、『夢』と呼ばれたのが自分を追いかけて来た連中だと言う事はここで知る事が出来た。
そんな事を考えていたらアーシアか咳払いをした。
いつの間にか足元に視線を落としていたのだが、まずかっただろうか?
スッと視線を上げると返事を待つ少女か眉間のシワを作りながらも黙ってこちらを見ている。
「ああ、アイツらに会ったのも初めてだ。『現実の子』と言うのも初めて聞く。一体何の事だ?良ければ詳しく話してくれないか?」
何となく、素直に返事をしなくてはならない様な気がする。
だが、そんな俺の考えには今さらと言った様子でアーシアはタメ息を吐くのだった。
ややあって、居心地の悪い沈黙が続いている。
素直には答えたがまずかっただろうか?
内心ヒヤヒヤしつつ、少女を見つめる。
本当は俺の方が歳上の筈なのに、と若干の愚痴を胸中に吐き出しながら。
「私達は『現実の子』という存在よ。」
いきなり彼女がしゃべり始めたのであわてて視線を合わせる。
ただ彼女は、そんな事はおかまいなしと返事も待たずに続ける。
「私達『現実の子』は古より、『夢』との攻防を繰り広げてきたの。」
やっと次回、少し説明です。