2話
お久しぶりです。
再びこの作品を読んでくださってありがとうございます!
かなり遅い進み方をしていますが、まだまだ続きますのでよろしくお願いいたします。
何だ、この娘は。
視線を奪ったその少女の声は、その容姿に似合いの凛とした響きを持っていた。
ただし、その口調は子憎たらしい事この上なかった。
ああ、この娘はを中身と外身がチグハグなのか・・・何か残念だ。
さすがに口には出せないので変わりに、このわずか数秒の間に、既に何度目かのため息をついた。
その間も生意気な少女、アーシアは憮然とした態度のままこちらを見ている。
さて、どうしたものか。
自分は何故こんな場所へ来たんだっけ?と、頭の片隅にあった疑問を引っ張りだす。
しかし、そこで再びあの凛とした声がした。
「でも意外。男の仲間がいるなんて」
驚いてそちらに目を向けると、先ほどまでこちらを向いていたアーシアは背を向けてランタンの明るさの調節をしているところであった。
いや、そんな事はいい。
「仲間、とは?何なんだ?」
我ながら間の抜けた声。ああ、情けない。
思いながらも今の言葉は引っ掛かるものがあった。
呼ばれた気がしたからだ。
それは一種の安心感の様なもので、無意識に、一方的に助けだと思っていたのだが・・・、それはまさに゛仲間意識゛からくる安心感の様な気がするのだ。
なら、アーシアが今、口にした゛仲間゛なのだろうか?
目の前の子憎たらしい娘を無言で凝視する。
しかし、どう見ても自分との接点等無さそうな少女である。
それを果たして゛仲間゛とは・・・。
「何が言いたいの?」
背を向けたまま、再び響く声にどう言っていいのかわからぬがゆえの無言。
これでは、と口を開きかけたが声にならぬまま固まる。
しかし、そんなバルドの様子に違和感を覚えたアーシアは振り返って口を開く。
「私たちは『現実の子』なのよ。同胞で、一応仲間なの。そうでしょう?」
アーシアの当たり前という態度の憎たらしさは腹立たしいが、今はそれよりも・・・。
「何なんだ?その『現実の子』というのは」
少し声が上ずったが、構わず続ける。
「俺は今、変な連中から逃げてこの近くまで来たところだったんだ。その時、音が聞こえてここまで来たんだ。」
我ながら滅茶苦茶な内容だが、どうしてだか彼女の口にした『現実の子』という単語が引っ掛かって仕方がないのだ。
以前聞いた事がある気がして、だ。
それは酷く曖昧な記憶だが、確かに何処かで・・・。
「何、それ?」
思考の海で混乱の渦にあえぐバルドの耳に、呆けた声が割り込む。
何事かと少女に意識を戻すと、異常なものでも前にしたかの様な不審そうな目が向けられていた。
相変わらずの子憎たらしさだが、同時に怒りの様なものが加わっている気がする。
どうした事かと口を開こうとしたが、それより早くアーシアの声が響く。
「貴方はヤツラ、『夢』に追われてた。それは『現実の子』だから、間違いないわ。なのに、それを知らない?」
語尾に凄みの様なものも感じた気がする。
自分は何かしただろうか、と考えてみても何も浮かばないのだが、目の前の少女は今なおこちらを冷ややかに見つめている。
「貴方は先代に何も聞いてないの?」
本当に何の話しだと胸中でごちたが反論したくても、何を言うべきかも分からず結局黙ったまま少女を見ている。
第一、何故こんな子供にギャーギャー言われなければならない?
訳も言わずに、何も分からないままの人間に自分は知っているからと・・・。
「ちょっと、聞いてる?」
なおも此方にきつい、しかし怪訝そうとも見える視線を向けてくる少女。
さて、本格的にどうしたものかと眉を寄せる。
ただ、気になる事も言っていた。
「俺を追いかけて来た連中は、『夢』と言うのか?」
口をついて出たのはそんな言葉。
名前が『夢』とは、どういった集団なのだろうか?
荒事とは関係なさそうな組織名だが、何かの宗教だろうか?
あまりにも自分には関係ない事の様に思えるが・・・。
「あなた・・・。いい?『夢』は私達『現実の子』を消しに来るの。それと対峙する為に私達は『アーチ』を巡るの。」
言葉の勢いのままに立ち上り目の前まで来たアーシアはバルドより遥かに低い位置に頭がある筈なのに、まるで高見から見下す様にさえ見える高圧的な調子で続けた。
「終わるまで。もしかすると、死ぬまで、ね。」
何だって?
声にならない問いが胸中でこだました。
少し、2人が会話をはじめました。ここまで長かったです。
また、見て下さい。