小話 残された者たち
日本が消えた世界がどうなるのか、特に残された日本人がどのような行動をとるのかなというのを自分なりに考察してみた話です。
実際どうなってしまうんでしょうかね・・・想像もつかないですが。
サッカー日本代表が2026カナダワールドカップ本大会出場を決め、日本全体がその余韻に浸ること2日後の2025年9月4日、日本国は突如としてその姿を消し異世界へ転移した。9月2日の試合で日本代表の対戦相手であったサッカーウズベキスタン代表監督のレルヴェル・シェパノフは、以下の様な言葉を残している。
「我々は日本代表には負けたが、それを代価としても良いくらい幸運だった。日本の消失に巻き込まれる前に、日本を出国出来たのだから」
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「Japan disappeared!」
世界の各新聞が、2025年9月5日に「日本の消失」を報じた。その事実は世界を混乱と絶望に陥れた。世界第2位の経済大国の消失は、リーマンショックやイギリスのEU離脱、そして2019年の中国内戦など比較にならない程の経済的大打撃を世界に与えることとなった。
これから、日本の消失が世界に与えた影響について見ていこうと思う。
個別に見てみれば、まず打撃を被った例として上げられるのは中東を初めとする石油産出国だ。とりわけ打撃を被ったのはサウジアラビアとUAEだろう。東亜戦争によって中国に対する石油輸出が滞っていた上に、その数年後に日本という顧客を失ったのだ。世界で3本の指に入る石油消費国のうち2カ国が疲弊または消失したことによって、石油需要の大幅な減退が発生し、史上類を見ない程の原油価格の下落を起こしていた。
また日本に対する食糧輸出を行っていた国々も、決して無視出来ない経済的打撃を受けた。元々、日本の食糧自給率については2019年1月に起きた「日中尖閣諸島沖軍事衝突」に起因する中国との国交断絶により、最大の食糧輸入先を失った日本政府が国策として食糧自給率の本格的な向上に勤めた為、転移時においてカロリーベース換算で75%、生産高換算で90%まで上がっていた。しかしコーヒー豆やカカオなど、気候の問題から依然としてほぼ100%を輸入に頼るしかない食品は存在していた。これらを対日輸出していた主に中南米諸国が経済的打撃を被ったのだ。
また、他方面の損失として在日米軍の消失が上げられる。今回の日本国消失により、アメリカ軍は25,000人近いアメリカ軍人、そして第1航空団や第18航空団を丸々、さらには第7艦隊所属艦艇を10隻以上失った。この事実に対してアメリカ国防総省は「決して無視出来ない多大な損失」との見解を示している。
そして何より世界経済に対して打撃を与えたのは、「円の価値の消失」と「日系企業・資本の消失」だろう。これらだけでもドルにして数千億、数兆の経済的損失が発生したと言われている。東南アジアやインドを中心として、アメリカ、ヨーロッパ、中南米・・・世界各地に建設されていた日系企業の工場や支社に勤めていた現地民の一斉解雇。また、日本円や日系企業の株式が一夜にして無価値化。世界で一体どれほどの資産が喪失されたか、その損害は計り知れない。
世界経済は2019年12月に勃発した中国内戦や2022年11月から2024年3月にかけて行われた東亜戦争(第3次世界大戦)によって生じた、多大な経済的損失から立ち直ろうとしている最中だったのである。その中で起こった日本国の消失は、世界経済に対してほぼ”トドメ”と言って良い程の大打撃を与えていると言えるだろう。
そして、この事件に対して1番の絶望を味わったのは100万を超える在外日本人たちである。故郷を失った彼らは、滞在する各国の日本大使館・領事館に殺到し、各施設は大混乱に陥った。そんな中で、世界110カ国以上の各都市に点在する在外公館は、互いに連絡を取り合い”とある結論”を生み出していた。それは日本列島のほぼ全てが消失した現状において、如何にして”日本国”を存続するかである。
世界に残された日本領土は与那国島、沖大東島、南大東島、北大東島、沖ノ鳥島、そして南鳥島の6島だけだった。その中で行政機関が置かれているのは与那国島、南大東島、北大東島だけである。故にその中で唯一の”町”である「与那国町役場」を新たな”日本政府”として位置づけ、与那国町長を”内閣総理大臣”、各課の課長を”国務大臣”、そして転移時に偶然、海外へ出向かれていたとある皇族を”国家元首”とすることにより、日本国の存続を主張することで各国の大使たちは意見を一致した。
その後、駐米日本国大使である有賀実光と与那国町長兼日本国首相の古謝真澄は、これらの事項を国連の場で発表。日本国はまだ世界から消えた訳ではないということを主張し、特に残された6島は無主地では無く日本国領土であり、如何なる国の侵略も許されないということを強く訴えた。また、同日彼ら日本国代表団はアメリカ合衆国大統領のテルヴァン=クローセとも対談。国防上の観点から「日米安全保障条約」の存続を強く要求した。
日本国の存続を認めるか否かについては、未だ国連の中でも意見が割れている(特に日本国のかつての近隣諸国は否定している、一方でパラオを初めとする南太平洋諸国は早々に日本国を国家承認した)。各国の大使・領事たち、在外邦人たち、そして小さな町の役場から一国の政府へと予期せぬ昇格を果たした与那国町役場の人々の苦労はまだまだ続くのだ。




