知っておくべき4つの変化
物語に入る前に、この10ヶ月の間に起こった4つの変化について紹介しよう。
まず「資源」について
夢幻諸島にて石油リグ13棟が竣工した。また、トミノ王国に建設された貿易基地から、日本国内に持ち込まれるトミノ王国産またはカシイート国産のウランによって原子力発電も再開されている。これにより、日本国内における石油を用いる産業は持ち直しつつあり、またガソリンの使用規制や計画停電もこの10ヶ月の間に徐々に解除されて行った。またこの度の戦争の結果として獲得した各地の鉱床から、採掘される各種鉱石資源も順次輸入が開始されている。また、この世界での悲願だった人工衛星打ち上げがようやく達成されたことにより、上空からの地質や地形の調査、遠距離での通信が可能となったことも、大きな変化として上げられるだろう。
2つ目に「経済」
主に資源開発を目的としてウィレニア大陸やセーレン島に進出した日本企業によって生み出される雇用は、現地にて人気の職場となっている。雇われる現地住民にとっては日本企業による雇用形態や労働条件が、考えられないほどの好条件だからだ。また、日本企業にとっても格安の人件費で労働者を雇うことが出来、輸入される鉱石の値段をある程度抑えることに成功している。
また農業地帯に派遣された青年海外協力隊による農業指導や、持ち込まれる農業機材は、各地の農村にてその収穫量に対して、少しずつ効果を上げている。ただ、セーレンでもアルティーアでも、日本から入って来る品物や進出する日本企業に圧され、市場を圧迫されている商人も少なからずおり、賢い者は日本製品の仲買や現地購入などに手を出し、新たな収益を得る者も居るが、全員がそうと言う訳ではない。自国産業の保護は現地政府の手腕が試されていると言える。
3つ目は「反日勢力」
セーレンやアルティーアにおける反日勢力は少なからず存在し、依然として現地に駐留している自衛隊による警戒対象となっているが、大きな動きは見せていない。特に元将軍セシリー=リンバスを主な首班とするセーレン王国における反日勢力については、日本の戦勝、それにより日本が世界的に列強“七龍”の仲間入りを果たしたと認知されつつあること、そして日本企業の参入による好景気により平民の支持を得られず、さらに親日派の王族貴族が多数になっていることから離反する者が多く、その勢力規模は初期と比較して大幅に減少している。
・・・最後に「核」
「非核三原則」は東亜戦争開始時点ですでに形骸化している。戦中に最終手段としてアメリカから持ち込まれた4発、戦後に中国から米軍によって没収された5発。計9発の聖なる雷の「転移」に伴う取り扱いの方向性について、日本政府は極秘のままアメリカ大使館と協議を続けて来た。現に米軍は日本=アルティーア戦争において2発の「核」を持ち出していた。結果として9発全ては、そのまま日本国内に保管され続けることとなり、アメリカが持ち込んだ4発も含めて、日米の共同管理という方針となることになった。