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旭日の西漸 第2部 大陸の冒険篇  作者: 僕突全卯
第2章 亜人大陸
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作戦開始!

同日・夜 ホムンクルスへ向かう海上 「おが」多目的区画


 今回、旗艦としての役割を与えられた「おが」の多目的区画にて、幹部自衛官たちを集めた説明会が開かれていた。


「レールガンにはすでに2種の弾丸が開発されている・・・。今回使用するのは装弾筒付翼安定(APFSDS)徹甲弾。半徹甲弾、誘導砲弾については・・・未だ開発途中の模様・・・まあ、半徹甲弾についてはもうじき開発されるらしいが」


 総司令の鈴木海将補は、今回使用するレールガンの弾種について説明していた。


「・・・装弾筒付翼安定榴弾(HEFSDS)を使用する案もあったが、今回の相手は“艦”ではなく“生物”故に、むしろ徹甲弾(AP)の方が大きなダメージを与えられるという結論になった」


「すみません、少し宜しいですか?」


 ここまでの説明を聞いていた「おが」船務長の賀藤二佐は、質問の為に挙手する。


「ん〜、どうぞ」


 鈴木海将補は何かを言いたげな賀藤二佐の方を見ると、発言を促した。


徹甲弾(AP)の方が榴弾(HE)よりダメージを与えられるとは、どういうことなのでしょうか?」


 賀藤二佐は、言わば装甲を突き抜けるだけのただの金属の塊でしかない装弾筒付翼安定(APFSDS)徹甲弾よりも、爆発を起こす装弾筒付翼安(HEFSDS)定榴弾の方が、リヴァイアサンに対してより大きなダメージを与えられると思っていた。


「うーん、例えば〜・・・人の体内に撃ち込まれた銃弾は、どうなると思う?」


「?? まっすぐ進むのではないのですか?」


 鈴木海将補の問いかけに対して、賀藤二佐と他の幹部たちは疑問符を頭上に浮かべる。鈴木は一呼吸置いてその答えを述べる。


「まあ〜・・・、考えれば至極当然のことなのだけど、人や動物の体内に撃ち込まれた銃弾の弾道は直進しない。骨や比較的硬い内臓に当たって跳弾を繰り返し、複雑な弾道を描くのが普通。それによって体内の広範囲に損傷を与えることになる。

だから今回、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)を使用することになったのは、まず魔法防壁と体壁を貫く“貫通力”を重視した為。榴弾(HE)を使って万が一にも貫通しきれなかったら意味が無いからね。そして第二に、貫通後に体内で跳弾を起こすことにより、リヴァイアサンの内臓を広く損傷する為なんだよ」


「・・・成程」


 賀藤二佐は指揮官の説明を聞いて納得した表情を見せる。翌日、リヴァイアサン討伐隊8隻は決戦の地・ホムンクルス王国沖へと到着した。


・・・


ホムンクルス王国沖3km地点


 水深12m、「おが」が座礁しないぎりぎりの水深であるこの海域に、8隻の自衛艦が集まっていた。リヴァイアサン狙撃にあたる「あすか」、「しらゆき」そして「しまゆき」は、「あすか」が真ん中になる様にして横一列に並び、これらの護衛任務に就く「まや」は3隻のすぐ背後に鎮座し、また、囮となるF−35Bの離着艦を行う「おが」は「まや」の右隣に停泊していた。

 リヴァイアサン捜索の任に就く「しょうなん」は補給艦の「ときわ」と並び、これら狙撃隊とは北に7km程離れた海上に護衛の「しらぬい」と共に待機、そして周囲の海中の様子を探っていた。


〜〜〜〜〜


2月11日 15:00


旗艦「おが」 戦闘指揮所(CIC)


 作戦の決行に備えて、隊員たちは各配置に着く。その表情からは得も言われぬ緊張が読みとれた。刻む時計、席から立つ総司令の姿が皆の目にとまる。その男は通信用のマイクに口を近づけ、そしてゆっくりと開いた。


「現時刻を以て、リヴァイアサン討伐作戦、その本作戦を開始する!」

「!!」


 ついに総司令を務める鈴木海将補の口から作戦開始命令が発せられた。


「『しょうなん』『しらぬい』はリヴァイアサン捜索開始。『しらぬい』及び『まや』は対潜戦闘用意。また、レールガンの操作については『あすか』艦長 岡橋二佐に一任する」


 司令官より発せられる命令は、順次各艦へと伝えられて行く。「しょうなん」は護衛である「しらぬい」を引き連れ、海洋観測の為に敵が何処にいるかも知れない水深16m以上の海域へと足を踏み入れる。本来なら海底地形を観測する為に用いるマルチビーム式測深儀や、曳航式音源装置を駆使しながら広範囲の海中を観測する「しょうなん」と、曳航式パッシブソナーであるOQR-4を引きながら海中を監視する「しらぬい」、その2隻の姿を、他の6隻に乗る隊員たちは緊張の面持ちで遠目に眺めていた。

 数十分後、「しょうなん」から待ちに待った報告が届く。


「『しょうなん』にて海中を遊泳する巨大物体を発見との報告! 方角は東南東42km、大きさは約180m、リヴァイアサンかと思われる!」


「!」


 再度現れた敵の存在を知り、「おが」の隊員たちの緊張はより高まる。


「深度は約43m! アクティブソノブイ投下の為、『しらぬい』からシーホーク(SH-60K)発艦!」


「了解! 『しょうなん』及び『しらぬい』は直ちに危険海域を脱出、また『おが』はF−35B(デコイ)を発艦させよ!」


了解(Copy)!』


 総司令から航空管制室へ送られる命令に、飛行長の東海林二佐が答える。直後、彼の口から飛行甲板にて空対艦ミサイルのマーベリック(AGM-65F)を積んだF−35Bへ発艦命令が伝えられた。コックピットに座す御法川一尉によってエンジンに火が灯る。


発艦(Take off)!」


 彼のかけ声と共にF−35Bはゆっくりと艦から離れていく。その後、機首を東南東に向けたF−35Bは、リヴァイアサンが巣くう海へと飛び立って行った。


「頼んだぞ・・・」


 沖の方へ向かっていくF−35Bの後ろ姿を眺めながら、東海林二佐はつぶやいた。




「しょうなん」 艦橋


 リヴァイアサンの脅威から逃れる為、退避命令を受けた「しょうなん」と「しらぬい」は、安全水域へ急いで帰還していた。


戦闘指揮所(CIC)より連絡。間も無く、水深15m以下の水域へと到達します」


 艦橋を根城とする航海科の面々は、戦闘指揮所(CIC)にて各種ソナーを注視する電測員から送られて来た報告を聞いて、一斉に胸を撫で下ろす。


(もう嫌・・・、色んな任務をこなして来たがここまで恐ろしい仕事は初めてだ!)


 艦長の北条満時二等海佐/中佐は、一先ず無事にリヴァイアサンの捜索と発見を達成出来たことに、心の底から安堵していた。この世界の海獣は、短魚雷を回避したという事実から、エコーロケーションの様な能力を有していると推測されている。また以前の戦力調査においては、リヴァイアサンがソナー音を発するアクティブソノブイを故意に破壊したことから、今回の調査では、リヴァイアサンの捜索を行う「しょうなん」が襲撃されてしまう恐れも大いにあった。しかし、リヴァイアサンは「しょうなん」と「しらぬい」に気付くことは無かった。

 故に「しょうなん」と「しらぬい」の隊員たちは、無事に任務を終えられた事に、寿命が延びた様な限りない幸せを感じていたのだった。




海上 F−35B機内


 数分後、リヴァイアサンをおびき寄せる為にF−35Bは海面ぎりぎりの高さを飛んでいた。轟音と爆風が海を裂き、波が荒立つ。その轟音は海の中へも届いていた。


『巨大潜水物が急浮上!』


 「しらぬい」から発艦したシーホーク(SH-60K)が投下して行ったアクティブソノブイからの観測情報が、シーホー(SH-60K)クを介して随時送られている「おが」の戦闘指揮所(CIC)から、御法川一尉の元へ通信が届く。コクピットに座る彼からは見えないが、海上すれすれを通過するF−35Bの後を追う巨大な影が海面に浮上していた。


『3,2,1・・・F−35B(デコイ)、急速上昇せよ!』


了解(Copy)!」


 戦闘指揮所(CIC)からの指示に従い、御法川一尉はF−35Bの機首を急激に上げて上空へと離脱していく。直後、下の海面が山の様に盛り上がったかと思うと、その中から巨大潜水物の正体が姿を現した。


「リヴァイアサン確認!」


 海中からの追撃を回避するように機体を反らしながら、御法川一尉はリヴァイアサンの姿を確認する。その後、彼は機首を反転させ、F−35Bをリヴァイアサンの方へと向かせる。


「攻撃開始します!」


 御法川一尉はマーベリックミ(AGM-65F)サイルの発射装置へと手をかける。


発射(Fox 2)!」


 F−35Bの両翼から発射されたマーベリックミ(AGM-65F)サイルが、リヴァイアサンへと向かう。直後、リヴァイアサンの体表に着弾したミサイルは爆発を起こした。


「目標に命中!」


 爆音が海上に響き渡る。それは「おが」の飛行甲板に立っていた整備員たちの耳にも届いていた。程なくして海風により爆煙が晴れていく。その中から現れたのは、予想通り平然とノーダメージでその場に鎮座し続けるリヴァイアサンの姿だった。


「分かってはいたが・・・これだけの手応えでノーダメージってのはちょっとショックだな・・・」


 マーベリックミ(AGM-65F)サイル程度の攻撃ではビクともしないリヴァイアサンを見て、御法川一尉は苦笑いを浮かべる。


ヴオオォオォオォ・・・!


 リヴァイアサンの方はと言うと、突然の攻撃を仕掛けて来たF−35Bに向かって、凶悪な形相を浮かべながら咆哮を繰り返していた。


『射撃予定区域への誘導を開始せよ!』


了解(Copy)!」


 戦闘指揮所(CIC)からの新たな命令を受けた御法川一尉は、機首を転換するとリヴァイアサンが追尾出来る速度を保ったまま、その場から離れる様にして飛行する。リヴァイアサンも海上に顔を出したまま、敵であるF−35Bを追尾する。その様子を確認した御法川一尉は、火炎ビームに補足されない様に、操縦桿を左右に振りながら蛇行飛行を行う。

 今回、リヴァイアサンの誘導を行うことになったのは、レールガンとレールガン専用の射撃指揮装置が未だ開発途中であり、レールガンの正確な射撃範囲が最大で20km前後だからというどうしようも無い理由があった。




「あすか」 戦闘指揮所(CIC)


シーホーク(SH-60K)より連絡! リヴァイアサンはF−35B(デコイ)の誘導を受け、射撃予定区域への移動を開始! あと20分程で到着します!」


 作戦の進行具合が今作戦の主役である「あすか」へと伝えられる。旗艦からの報告を聞いた艦長の岡橋二佐は、艦内へ指示を飛ばす。その目にはやる気に満ちた色があふれていた。


「『しまゆき』及び『しらゆき』は“エレクトリックケーブル”の接続を開始!」


 直後、「あすか」の両側に浮かんでいた「しまゆき」の右舷、そして「しらゆき」の左舷に設置されていた“送電用ケーブル”が、まるで補給艦のプローブのように「あすか」の両側に設置されている“コネクター”に伸び始める。


ガ、ガチャン!


「『しまゆき』及び『しらゆき』の“エレクトリックケーブル”、接続完了!」

「『あすか』、“コネクティングレセプター”に異常無し!」


 各方面より“送電用ケーブル”の接続完了が通達される。その後、次なる命令が下される。


「レールガン狙撃準備! 装弾筒付翼安定(APFSDS)徹甲弾装填!」

「了解! 装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)装填!」


 砲身内部を貫く2本のレールの間に、装弾筒付翼安定(APFSDS)徹甲弾が設置される。直後、F−35Bに導かれたリヴァイアサンが、ついに射撃予定区域内へと侵入した。20km先の海上に浮かぶその姿は、各艦の艦橋からもはっきりと見えていた。


ヴオオォオォオォ・・・!


 リヴァイアサンは相も変わらず、囮の追尾を続けている。


「リヴァイアサン出現! 目標までの距離20km! 電磁加速砲専用射撃(RO-FCS)指揮装置発動!」

「『しまゆき』及び『しらゆき』の主発電機計8基、出力最大!」

「各艦、発電機に異常無し!」

「『あすか』“コネクティングレセプター”への接続問題無し!」

「電力艦『しまゆき』からの電力供給問題無し!」

「同じく、電力艦『しらゆき』からの電力供給問題無し!」

「コンデンサー充電進行中、コンデンサー1充電完了、コンデンサー2充電開始!」


 「しらゆき」と「しまゆき」から送られて来る電力は、かつて8セルの垂直発射装(Mk.41 VLS)置が存在していた部分に新たに設置されていた、2基のレールガン専用コンデンサーに注がれて行く。レールガン実験終了後は退役予定であった「あすか」には、「しらゆき」と「しまゆき」同様にレールガン実験だけを主眼に置いたあらゆる魔改造が施されていた。


「コンデンサー2充電完了! 電力充填100%!」

「目標補足! F−35B(デコイ)及びシーホーク(SH-60K)は上空へ離脱!」


 ついに電磁加速砲専用射撃指揮装置が目標を捉えた。レールガン狙撃に巻き込まれるのを避ける為、囮となりリヴァイアサンの誘導を行っていたF−35Bと、リヴァイアサンに察知されない様に高空を飛び、ソノブイの観測結果を報告していたシーホーク(SH-60K)の元へ退避命令が伝えられる。


了解(Copy)!』


 直後、命令を受けたF−35Bが、レールガンの射撃域から離脱するために上昇する様子が確認される。リヴァイアサンは今だに、上空へと逃げていくF−35Bに向かって咆哮を続けていた。


「目標は海上に静止! 射撃装置問題無し!」


 ついにレールガンの発射体勢が整う。そして発射までのカウントダウンが始まった。


「発射スタンバイ、5秒前! 5、4、3、2、1・・・」


「発射!」


 岡橋二佐の命令と共に、砲術士によって射撃装置のスイッチが押される。直後、2基のコンデンサーに溜められていた膨大な電力が、レールガンのレールへと一気に流れる。


ズガンッ!!


 響き渡る射撃音と共に、膨大な電力によってプラズマ化した装弾筒の一部が、深紅の火炎となって砲身から放出される。ローレンツ力によって押し出された科学の弾丸が、一直線に伝説の怪物へと向かって行った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゆきクラスにはVLAは装備されていないです ランチャー式のASROCですね
[一言] 追伸、ちなみに対地ミサイルはライフル、対艦ミサイルはブルーザー…のはずです、ただ細かく言うと膨大な数になるのでやはり「発射」とだけ書くのが確実です。
[気になる点] マーベリックの発射コードはFOX_2ではありません、というよりFOXって発射コードは空対空ミサイルにしか使わないので、普通に「発射」とだけ書いた方が良いかと…え?エースコンバット?あれ…
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