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旭日の西漸 第2部 大陸の冒険篇  作者: 僕突全卯
第2章 亜人大陸
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VSリヴァイアサン! 弐

「おが」 戦闘指揮所(CIC)


 リヴァイアサンと「おが」との距離は12kmと言ったところであり、「おが」の艦橋からも、突如シーホーク(SH-60K)を襲った怪物の姿が捉えられていた。3回目の攻撃に晒され、今にも撃墜されそうなシーホーク(SH-60K)を助ける為、賀藤二佐は策を練る。


「畠山一尉に通信! 搭載されているヘルファイアにてリヴァイアサンを攻撃、平元一尉のシーホーク(SH-60K)を援助せよ・・・!」


 賀藤は、海上を飛んでいたもう1機のシーホーク(SH-60K)に、万が一の為にパイロンに搭載されていた空対艦ミサイル(ヘルファイア)を用いて、海上から飛び上がり続けるリヴァイアサンを攻撃させる様に指示を出す。通信員によって賀藤の指示が伝えられると、直後、畠山覚一等海尉/大尉が操るシーホーク(SH-60K)から戦闘指揮所(CIC)へと返信が届いた。


『了解! 直ちに目標が存在する海域へ向かう!』


 指示を受けた畠山一尉は操縦桿を傾け、平元一尉のシーホーク(SH-60K)の救援に向かう。




海上 シーホーク(SH-60K) 平元機内


 リヴァイアサンは3回の連続大ジャンプを披露した。平元一尉らは4度目の攻撃に身を構えるが、あれほどの跳躍を繰り返して体力を消費したのだろうか、リヴァイアサンは中々海面から顔を出さなかった。


(よし・・・今の内に!)


 リヴァイアサンによる度重なる海中からの攻撃に遭い、コントロールを失っていたシーホーク(SH-60K)の体勢を整える為、平元一尉は操縦桿を握る。この時、シーホーク(SH-60K)は高度を落としてしまっており、海面から50m程上空を浮遊していた。


(奴は海中からでもヘリの音を聞きつけているのか・・・)


 副操縦士の物部穂積二等海尉/中尉は、リヴァイアサンが自分たちを襲撃した理由を考察していた。


「真下から海獣接近!」


 航空士の佐々木二曹は、リヴァイアサンによる1回目の襲撃と同時に投下したアクティブ式ソノブイが映し出す海中の様子を見ていた。そして彼は海中からの攻撃の予兆を察知する。


ドッパアァン!


 直後、再び海面で巨大な水しぶきが立つ音がしたかと思うと、巨大な海獣が姿を現した。


「くそっ! また来たか!」


 リヴァイアサンの執拗な攻撃に、副操縦士の物部二尉は苦虫を潰したかの様な表情を浮かべた。


「右旋回!」


 真下から迫って来るリヴァイアサンの牙に襲われまいと、平元一尉は必死にヘリの操縦桿を傾ける。




シーホーク(SH-60K) 畠山機内


「この位置なら・・・問題無い」


 リヴァイアサンに向かって急速に接近していた畠山一尉の繰るシーホーク(SH-60K)は、リヴァイアサンと平元一尉らの位置関係を観察していた。2機のシーホーク(SH-60K)は怪獣を挟んでちょうど反対側に位置しており、これならば自機によって繰り出されるミサイル攻撃の爆風に、平元一尉が操るシーホーク(SH-60K)が巻き込まれることは無いだろう。


空対艦ミサイル(ヘルファイア)発射!」


 畠山一尉の命令と共に、シーホーク(SH-60K)の右舷のパイロンからヘルファイアミサイルが放たれた。白煙を引きながら飛翔するヘルファイアは、目標へと一直線に向かって行く。


ドカアァ・・・ン!


 周囲に爆発音が響き渡る。ヘルファイアはリヴァイアサンの巨体に見事命中した。


「!」


「当たったあ!」


 畠山一尉が叫ぶ。リヴァイアサンに追われていた平元一尉らも、怪獣の向こう側で炸裂した爆炎を見て、味方からの援護攻撃が成功したことを知る。ミサイル攻撃を食らったリヴァイアサンは、爆発の衝撃に押され、天を見上げたまま海の中へと落ちて行く。


キャアアァァアァ・・・!


 海の上に海獣の甲高い叫び声が響き渡る。直後、落下した巨体による巨大な水柱が発生し、巻き上げられた水しぶきは海上に大きな虹を形作る。


「攻撃命中! リヴァイアサンは海中に落下!」


 航空士の八柳聖也一等海曹/一等兵曹は、戦闘指揮所(CIC)へ任務完了の連絡を送る。


『こちらでも攻撃成功を視認した。攻撃効果はどうか』


「悲鳴を上げながら海中に落下。海中にてリヴァイアサンが動く様子が見えるため、致命傷とはなっていない。が、それなりのダメージを与えられたと思われる」


 戦闘指揮所(CIC)からの問いかけに、航空士の八柳は見たままを答える。ソノブイから発せられるソナーには、海中で暴れるリヴァイアサンの影がはっきりと写っており、また海の上のシーホーク(SH-60K)からも海の中にのたうち回る様に動く巨大な影が見えた。


(おいおい、ミサイルまともに食らってまだ動けるのか・・・!)


 バブルウィンドウから海面の様子を見ていた八柳一曹は、生物の域を超えたリヴァイアサンのタフさに青ざめていた。かつてアルティーア戦役にて遭遇した大海蛇は、護衛艦の単装砲で仕留められる程度のものであったことに比べると、この世界でも“伝説”と称えられる怪物が、如何に他の生物と一線を画す存在かを思い知らされる。


『了解。戦力調査は終了する。2機は直ちに艦に帰還せよ』


 リヴァイアサンとの遭遇を果たし、彼の怪物のデータの取得に成功した2機のシーホーク(SH-60K)は、戦闘指揮所(CIC)からの命令を受け、その機首を「おが」へと向ける。




「おが」 艦橋


 ヘルファイアミサイルの爆音と爆炎は、「おが」の艦橋からも見えていた。観戦武官として「おが」に乗船しているレンティスとバルトネラは、その威力に驚きを隠せない。


「・・・ご覧になりましたか!?」


「はい・・・! 何という威力!」


 レンティスの問いかけに、計器の上に乗って窓の向こうを見ていたバルトネラは震えた声で答えた。かつて彼らもアナン連合総出でリヴァイアサン討伐作戦を幾度にも渡って行って来た。しかし、いくら対策を練っても、彼らの艦では海中を行くリヴァイアサンの攻撃はどうしても読み切れず、エルムスタシア海軍の艦隊と屈強な兵士たちでさえ、伝説の怪物の前ではただ蹂躙され殲滅されるだけの存在でしかなかった。

 そんな海中を行く敵に対して、日本海軍は「ソナー」と呼ばれる装備を使用して来た。ソナーとは海中を反響する音を解析することで、水上を行く艦艇や水中を行く物体を捜索・探知出来るのだという。日本の兵士の説明を聞いた彼らは最初は半信半疑だったが、日本の兵士たちが予告した通りの方角にリヴァイアサンは現れた。最初は海を行く敵と対峙するというのに、リヴァイアサンが現れない様な浅い水深の海域に、艦を鎮座させる彼らの意図が分からなかったが、この位置から海中を行く物体の位置が分かるのであれば、わざわざ危険な沖に艦を出すことも無いだろう。

 しかも日本海軍のヘリコプターと呼ばれる飛行物が繰り出した攻撃は、自分たちの軍艦がいくら大砲を当ててもビクともしなかったリヴァイアサンに悲鳴を上げさせた。これらの事実だけでも、日本国の軍事力を思い知るのに十分であった。


「ニホンとはすごい国ですね・・・」


 バルトネラはぽつりとつぶやいた。外界から隔絶されている為、中々外の情報を得られないホムンクルス王国のバルトネラは、連合の盟主が日本に助力を求めた意図を理解していた。




シーホーク(SH-60K) 平元機内


 母艦へと向かうシーホーク(SH-60K)の中で、海獣が沈んだ海面の様子を観察していた航空士の佐々木二曹はある重大な事実に気付いていた。


(おかしい・・・流血が無いのか・・・!?)


 リヴァイアサンはヘルファイアミサイルの爆撃に晒されていた。致命傷に至らなかったとは言え、それなりの傷を与えてしかるべきだろう。その場合、多量の流血が見られるはずである。アルティーア戦役のイロア海戦にて、VLA攻撃によって大海蛇を退治した際、その身体から流出した大量の血液が、赤褐色の液体となって海面に浮遊する様子が確認されていた。しかし、母艦へと向かうヘリの中から過ぎ去る海面を見たところそれが無いように見えた。その事実を知った佐々木二曹はある恐ろしい可能性を思い浮かべていた。


「もしや・・・いや、見間違いか!?」


 悪い予感に駆られる佐々木は、艦へ戻るヘリの中で思考を巡らす。


ザバアァァン!


 その時、彼らの後方の海中から、何かが浮かび上がって来た音がする。2機のシーホーク(SH-60K)に乗る航空士たちは音のした方を振り返る。


「な、何!?」

「どうした! 何があった!?」


 主操縦士の平元一尉が驚嘆の声を上げた佐々木二曹にその理由を尋ねる。


「リ、リヴァイアサンです! 海上に姿を現しました!」


「何!」


 平元一尉は驚愕する。ミサイル攻撃を食らいダウンしたはずのリヴァイアサンが、再び闘争心を持って海上に現れたのだ。

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