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旭日の西漸 第2部 大陸の冒険篇  作者: 僕突全卯
第2章 亜人大陸
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小人の国 ホムンクルス王国 弐

ホムンクルス王国 首都ペンフィールド


 交渉団は小人の王国の首都にたどり着いた。目の前に広がる光景に賀藤二佐と初岡二曹、そして平田二曹の3人は思わず息をのむ。


「・・・!」


 木の葉や枝、天然の材料を工夫して作られた一軒家、樹木をくりぬかれて作られた集合住宅、それらに暮らし、木の実を集め、小鳥に乗って飛ぶ小人たち。まさに絵本の世界をそのまま現実にしたような光景が、そこには広がっていた。


(これはまるで・・・おとぎ話の世界だ!)


 賀藤二佐はファンタジックな光景にそこはかとなく胸を踊らせる。それは衛生員の平田も同じであった。しかし、交渉団の護衛である初岡二曹だけは別のことを考えていた。


(ドールハウスでちょうど良いサイズだな・・・輸出出来ないかな・・・)


 商売人の息子である初岡は、女児向けの玩具であるドールハウスを小人向けの住居として売るという空想をしていた。ドールハウスで遊んだことがある者なら、誰しもが一度は空想したことだろう。

 その後、4人は一面に広がる小さな街の中、幻想的な光景の中をグラムらの案内で進む。元々人間や他の亜人が来訪することを想定して作られたのか、街の中央を広い通りが貫いていた。街の住民たちは久しぶりの来客に興味津々な様子で4人を見ている。


「王宮はこちらです」


「!」


 グラムが示した方を見れば、通りの先に一際大きい王宮と思しき建物のミニチュアがあった。レンティスを含む交渉団の4人は1歩、2歩、3歩と歩く内に王宮へと辿り着く。

 当然王宮もミニチュアサイズであり、4人の目線からは建物の全景、城壁の中の庭園まで丸見えであった。庭園、そして建物の窓には、仕事や掃除を行う文官や召使いの姿が見られる。職務に忙しいのか、交渉団のことは気にしても、街の住民たちの様にまじまじと見つめることはしなかった。


「では私は国王陛下に、来客をお伝えして参ります。少々お待ちください」


 交渉団の4人にそう告げると、グラムは城壁の門の中へと入っていく。前へ視線をやると、門から入ったグラムが庭園を駆け抜け、王宮の建物へ向かう様子が見えた。4人はしばらく立ちすくみながら、グラムの帰りを待つ。その後、王宮の中から出てきたグラムは、人間なら2歩で済む距離の庭園を走り抜けると、城門の前に現れて交渉団の4人に謁見の許可が下りたことを伝える。




王宮 謁見の場


 小さな王宮の庭園に小人の王が外国の使節の接受を行う為の玉座が設けられていた。もちろん通常の人間や亜人が王宮に入る訳には行かないので、賀藤二佐らは王宮の外から、城壁をはさんで王への謁見を行うことになる。4人が回りを見れば、ミニチュアの甲冑に身を包んだ衛兵と思しき小人たちが庭園の中で隊列を整えていた。


「レイビーズ=ヴァイアラス国王陛下のお成りです!」


 文官の1人が国の長の登場を知らせる。4人は膝を付いて王の登場を待つ。そして4人の外国人の前に現れたのは、白い髭を蓄え、高級そうな服装に身を包んでいる小さな老人であった。その見た目は、まさにおとぎ話に出てくる王様と言った外見である。


(ちょ・・・かわいい・・・)


 初岡二曹は膝を付きながら、思わず心の中でつぶやく。


「ご無沙汰しております、レイビーズ陛下! 此度はエルムスタシア帝国皇帝陛下の命により、ニホン国の交渉団の方々をお連れしました!」


 レンティスがはきはきとした声で、ホムンクルス王国を訪れた要件を語る。


「グラムから、大体の内容については聞いています。リヴァイアサン討伐の為、我々『連合』の非加盟国であるニホン国の海軍が、我が国の領海に展開することを特例的に認めて欲しいとのことですな?」


「はっ! その通りです」


 本題は既に王の耳にまで通っている様である。それならば話は早く済むだろう。


「外海から貿易船が来ないのは、我々とて困ること・・・我らが『亜人諸国連合』の主がその力を認めた者たちを拒む理由はありません」


「では・・・!」


 レイビーズ王の言葉を聞いて、賀藤二佐らの表情が明るくなる。王はやや間を開けて口を開く。


「しかし、1つ条件があります」


「条件ですか・・・?」


 賀藤二佐は小人の王が提示する条件の内容を問いかける。


「我々はほとんど外海に出ることの無い種族ではありますが、我らの領海で何が起こるのかはちゃんと見ておきたい。故に我がホムンクルス王国から、観戦武官を派遣させて頂きたいのです」


 なんだそんなことか、賀藤はそう思いながら安心し、王の申し出を受諾する。


「そういうことでしたら、我々は一切構いません。貴国より派遣される武官殿を歓迎致します」


 賀藤の答えを聞いて、レイビーズ王は喜びの笑みを浮かべた。

 斯くして、ホムンクルス王国との交渉は、海上自衛隊がホムンクルス王国より派遣される観戦武官を受け入れるという条件付で、滞りなく終了した。その後、レイビーズ王から軍事展開の許可を正式に受けた交渉団4人は、ホムンクルス王国から派遣された観戦武官バルトネラ=ヘンセレと共に、「おが」へと帰還したのである。

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