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旭日の西漸 第2部 大陸の冒険篇  作者: 僕突全卯
第2章 亜人大陸
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亜人の帝国 エルムスタシア

第二章スタートです。

2027年1月19日 アナン大陸 エルムスタシア帝国 クルボッサ市


 この「テラルス」と呼ばれる世界の南方に位置する「アナン大陸」は、亜人の人口比が人間を遙かに凌駕していることから、通称「亜人大陸」と呼ばれている。2027年1月19日、そのアナン大陸最大の国家、エルムスタシア帝国・通称「亜人帝国」の港町クルボッサの岸から少し離れた所に、海上自衛隊の強襲揚陸艦「おが」が停泊していた。


「でかい船だなあ」


 街の住人たちは「おが」を物珍しそうに眺めていた。港の水深が十分にあった為、「おが」は港に接岸していた。


「一体どこの国の船なんだ?」

「何でも、あのニホン国の船らしいぞ」

「えっ、最近噂のあの国か! あの七龍の一角、アルティーア帝国を滅ぼしたっていう・・・」

「なんだって、そのニホンの船がここに来たんだ?」


 住民たちは、突如現れた全長250m超の鉄の艦に騒然としている。「おが」はこの国に日本政府より派遣された使節団を連れて来たのである。


・・・


首都エリー=ダレン 外交庁総合課 応接間


 内陸にある首都エリー=ダレンに到着し、外交庁に案内された日本使節団の面々は、緊張の面持ちで交渉の席に座り、エルムスタシア帝国側の代表者が入って来るのを待っていた。

 因みに今回の国交樹立交渉を持ちかけたのは日本側である。エルムスタシア帝国はウィレニア大陸を南回りでジュペリア大陸へ向かう際に、必ずその近傍を通ることになる国であり、その為、不測の事態に備えてアナン大陸に寄港出来る港を有しておきたい。それが日本政府の目論見であった。


「間も無く外交庁長官シシアム様が来られます」


 衛兵の通達に、日本国より派遣された外交官の上村基一と仲嶺聖の2人は気を引き締める。直後、応接間の扉が開けられるとそこには1人の男性が立っていた。


「!」


 上村は思わず目を見開く。外交庁長官と紹介された男性、その外見こそ中年、もしくは初老の西洋人男性といった雰囲気だが、その頭からは可愛らしい“うさぎ耳”が突きだしていたのだ。


「・・・ふっ! ぐぉっ!」


「・・・」


 その容姿を見て堪らず吹き出しそうになってしまった仲嶺の腹に、上村は間髪入れずに肘を入れる。体を駆ける衝撃に、仲嶺は思わず姿勢が少し揺らぐ。


「おや、どうかされましたか?」


 やや苦しそうな顔を浮かべる仲嶺に、シシアムは心配そうに尋ねる。


「はは・・・いえ、お構いなく」


 仲嶺は作り笑顔で答えた。


(上村さん、すみません!)


(馬鹿! こんなところで吹き出す奴があるか!)


 周りに聞こえない様に、上村は小声で部下を叱りつける。仲嶺もいきなり肘鉄を食らわせて来た上司の行動を一瞬恨んだが、それによって笑いが引いたことにほっとしていた。

 その後、両者はテーブルを挟んで向かい合う様にして着席する。協議は互いの自己紹介から始まる。


「エルムスタシア帝国外交庁長官のシシアム=ヴィーナケーヴと申します。ニホン国の外交使節団の方々・・・遠路はるばる良く来られました」


「日本国外務省の上村基一と申します。こちらは私の部下の仲嶺聖といいます。此度の協議に応じて頂き、感謝致します」


 挨拶が終わると、協議は早速本題へと入る。まず始めに日本側が提示したのは、日本とエルムスタシア帝国との間に国交を樹立すること、そして日本国の艦船が入港出来るようにエルムスタシア帝国の湾港設備を費用日本持ちで強化することである。


「・・・貴国の技術で港を強化出来ることは、我が国にとっても願ってもいないことですが・・・少々懸念材料がありまして」


「?」


 シシアムは日本側の提案に顔をしかめる。“懸念”とは何か、上村が尋ねようとしたその時、外交庁に勤める文官の1人が突如入室してきた。


「失礼します!」


 その文官は息を切らしながらこちらに近づく。彼の背中には白い翼が生えていた。シシアムは彼を叱りつける。


「使節殿に無礼ではないか! 今は会談の最中であるぞ!」


「も、申し訳ありません! しかし、急の要件でして・・・」


 文官はそう言うと要件を伝える為、シシアムに耳打ちをする。何を言われたのか、シシアムは驚いた様子で目を見開いた。そして日本使節団の方を向くと、文官が伝えたその内容について話す。


「我が国の皇帝陛下より、是非ともあなた方ニホン国外交使節とお会いしたいというお申し出がございます。我々とともに皇宮へいらして頂けますか?」


「!」


 その言葉を聞いて、上村と仲嶺は驚きを隠せない。何とエルムスタシア帝国の国家元首から、直接会いたいという申し出が伝えられたと言うのだ。上村と仲嶺の2人はエルムスタシア帝国が用意した馬車で、急遽皇宮へ向かうこととなった。




首都エリー=ダレン 皇帝の居城


 首都の中心部に位置する皇帝の居城は、かつての列強の一角であるアルティーア帝国のそれと変わらない荘厳さを誇っていた。そして皇宮に連れて来られた使節団は玉座の間へと案内される。大きな扉を開けると、そこには2つの玉座に2人の男女が座っていた。


「向かって右はエルムスタシア帝国シルドレア=ツェペーシュ皇兄(こうけい)陛下と、左はエルジェベート=ツェペーシュ皇妹(こうばい)陛下にあらせられます」


 エルムスタシア帝国宰相セラレタ=オプティックが、元首である“2人の皇”を使節団に紹介する。この国は“嫡出子総継承”という独特な皇位の継承方法が採られている。故に現在は2人の兄妹皇帝によって治められているのだ。


(・・・人間!?)


 使節である2人は驚く。皇帝と紹介された2人の男女は獣の耳や異形の体も持っておらず、人となんら変わらない見た目だったからだ。


「セラレタ、人払いを。この者たちと話がしたい」


「はっ!」


 謁見後、2人の皇帝そして2人の使節の4人は、皇帝の執務室にて二対二の話し合いをすることになった。

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