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不死王と七つの誓い  作者: 秋野 錦
第五部 魔城奪還篇

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「救出作戦」

 名も知らぬ魔族を倒した俺はひとまずクロと奏のところへ戻ることにした。


「とりあえず窮地は脱したが……どうする? 藍沢を探すか?」

「それもいいけど……藍沢君、最後に大丈夫って言ってたからきっと何か勝算があるんだと思う。この広い城で無闇に探すよりはまず、地下を確認してみない?」

「確かにそれがいいかも。魔族がここにいたってことは、ここを守っていたって見方も出来るからね。いきなりビンゴの可能性も高いよ」


 奏の意見に、治癒を受けているクロがそう言って賛成する。

 ふむ……藍沢のことも心配だけど確かにそうしたほうがいいかもしれんな。

 アイツもやるときはやる男だし、きっと無事に帰ってくるだろう。


「分かった。それならこのまま地下を調査してみよう。だけど、とりあえずクロはここで治療を受けること。地下には俺が先行してくる」

「大丈夫? もう少し待ってくれれば動けるようになるだろうし、一緒に行ったほうがいいんじゃない?」

「今は時間が惜しい。それにそんなに遠くへ行くわけじゃないからな。何かあればすぐに戻ってくる。それまで待ってろ」

「……うん。分かった」


 怪我をして早々に離脱することになったのはクロにとって不服そのものなのだろう。若干、すねた調子で頷いていた。

 けど時間がないのも事実。

 俺は奏にクロを任せて、地下への道を進むことにした。


(ただでさえ冷えてるってのに……地下は更に寒いな)


 肌を刺すような寒さの中、ゆっくりと階段を下りていく。

 螺旋状に作られた階段はそれなりに深くまで繋がっており、最深部は四方向への通路になっていた。


 どっちが正解なのか分からなかったので、とりあえず適当な道を進んでみる。

 内部の構造はまるで迷路のように入り組んでおり、薄暗いのが致命的だった。


 仕方ないので灼熱の剣で近くの松明に火を灯し、明かりにする。

 なんていう贅沢な使い方だよ。全く。


 そうやって慎重に進んでいくとやがて一つの牢屋へと辿り着いた。

 以前俺が捕まっていた時のものとほとんど同じ構造。


 だけど中には誰もいなかった。

 どうやらここはハズレらしい。


『……カナタ』


 来た道を引き返そうと踵を返したその瞬間、直接脳内に懐かしい声が響き渡った。


「この声……宗太郎かっ!?」

『カナタ、聞こえてる? 念話の魔術で話しかけてるんだけど今は送信しか出来ないから一方的に話すよ。カナタの位置は魔力で探知できているからこの場所まで誘導するね。まずは適当に歩いてみて、逆方向に進みそうなら止めるから』


 どうやら宗太郎は『探知』と『念話』の魔術で俺の動向を探っていたらしい。

 一つ一つが最早天権レベルの便利さだ。やっぱり、宗太郎は頼りになる。

 宗太郎の声を頼りに地下を歩き回り、俺はようやくその地下牢へと到着した。


「カナタさんっ!」


 俺の姿を見たステラが顔を明るくする。

 俺はすぐに牢屋を灼熱の剣でぶち破って三人を救出した。

 ステラ、宗太郎、そして……上原麻奈の三人を。


「青野、あの、私……」

「色々言いたいこともあるが……今はとにかくここから脱出するのが先だ」


 何か言いかけた上原の言葉を遮る。

 お互い言いたいことがあるようだがそんな場合でもない。


 頷いた上原を連れ、俺達は地上へ舞い戻る。

 さらにそこで合流した奏に皆の傷を治してもらい、ひとまずは救出に成功。


 俺、ステラ、クロ、宗太郎、奏、上原。

 救出には成功したが、俺にとって大切な人が欠けている。


「ステラ。イリスがどこにいるか分かるか?」

「イリス様は私達とは別に魔王に連れて行かれました。恐らくは上階……ここより更に上の階層にいるんだと思います」

「……そうか」


 上階……確かそっちにはアーデル達が向かっているはずだ。

 運が良ければすでに救出できているかもしれんが……一応様子を見に行ったほうがいいだろうな。


「クロ、状況をどう思う?」

「予定の二時間までまだ余裕もあるし、行こうと思えばいけないこともないと思うよ。倒した魔族も4人になったし、向こうの戦力もかなり削れているはずだしね」


 クレイ、カグラ、アザミ、そして音使い。

 すでに倒しているリンドウとシンを合わせればすでに6人もの魔族を戦闘不能にしている計算だ。


 残るはアゲハ、コテツ、レオ、スザク、ナキリ、魔王……ん? なんか俺、マジでコンプリートしそうになってないか?


 あと一人、まだ見ぬ魔族を残すだけで他はもうあらかた出くわしちまったぞ。

 やだなー、最後の一人はどうか俺とはでくわしませんように。


「藍沢のこともあるし……移動するほうが良いか」

「うん、そうだね」


 元気良く頷くクロはやる気満々のようだ。

 そんなクロに頼むのは少しだけ気が引けるのだが……


「クロ……悪いがお前には別のことを頼みたい」


「え?」


「お前には宗太郎達を集合場所まで先導しておいて欲しい。人質を救出したままこんなところをうろつきたくはないからな。安全なところまでひとまず連れて行ってくれ」


「ええーっ!? 嫌だよ、そんなのお兄さんがやればいいじゃん!」


「クロ……頼む。こんなこと任せられるのはお前しかいないんだ」


「う、うう……」


 クロの瞳を覗き込むように頼み込む。

 実際、この中で満足に戦えるのは俺とクロくらいのものだと思う。

 どちらかが行くなら、どちらかは残らなくてはならない。


 そして、俺にはどうしても引けない用事がある。

 イリスを救い出すまで……俺はどうしても帰るわけにはいかないんだ。


「頼むよ、クロ」

「う、ああああっ! もう! お兄さんずるいよ! 本気でお願いされたら断れるわけないじゃんか!」


 俺の頼みに、クロはしぶしぶながらも頷いてくれた。


「それで? 捕まっていた三人を連れて行けばいいのね?」

「ああ、頼む」

「あ……カナタ、ちょっと待って」


 俺とクロが相談していると、宗太郎が会話に割って入ってきた。


「これからイリスさんを探しに行くんだよね? だったら僕も行くよ」


「宗太郎? ……けど、お前、体の方は大丈夫なのかよ」


「うん。ずっと座っていたからむしろ少しくらい動かないとね。それに魔力を探知できる僕がいたほうが探索もスムーズにすむでしょ?」


 そう言って肩を回す宗太郎は確かに疲れを感じてはいない様子だ。


「……分かった。そこまで言うなら頼む。イリスを助けるのを手伝ってくれ」

「任せて」

「ぶー、クロはお留守番なのに……ずるい」


 最後にクロが愚痴を零していたが、もう決まったことだ。

 俺、宗太郎、奏の三人で残ったメンバーを探し、クロ、上原、ステラは一足先に城を抜け出す。救出目標は減ったが、難易度は上がってきたな。


 なにせイリスを連れ去ったのは魔王だ。

 まず十中八九上階に奴はいる。

 恐らくはスザク、ナキリの副官を連れて。


「……最後の大勝負だ、気合入れてくぞ」

「うん!」

「はいっ!」


 俺の号令を皮切りに召喚者三人が上階へ向かい、歩み始める。

 この先に待つ、魔王の元へ。

 囚われた姫を救い出すために。


(待っていろよ……イリス)





今後の投稿について告知です。


12月9日(金)からしばらく本作の投稿ペースを落とそうと思っています。二日に一回か、三日に一回かはまだ決まっていませんけど毎日更新はできなくなります。

というのも、金曜日から新作を投稿する予定なのでそちらがひとまず落ち着くまでは優先させてもたいたいのです。

本作を楽しみにしてもらっている皆様には本当に申し訳ありませんが、ご理解頂けると幸いです。


さて、お次に無駄話を。

うん。たまにはね?


作者が好きなキャラは女の子ならクロ、男の子なら藍沢です。

友達にしたいのは宗太郎。

愛しているのはステラ。

踏んでもらいたいのはイリス様ってところですかね。


皆様もこのキャラ好きだなーっていうのがあったら教えてもらえると嬉しいです。

クリスマスとかバレンタインデーとか来るたびにイベントものの短編を書きたくなるんですけど、誰を主役にするのか迷っちゃって。

どうせなら人気のあるキャラにスポットライトを当てたいですからね。

あ、今練習しているイラストで誰を描くのかにも影響するのでぜひご連絡よろしくお願いします。


今のところ一応のヒロイン(おい)ということでイリス様を描いているんですが、全員を描くのは流石に無理なので。出来が良ければ挿絵として載せようと思っていますのでそちらもお楽しみに!


ではでは、長くなりましたが最後に。

本作をここまで読んでくださった皆様本当にありがとうございます。

カナタ達の物語はまだまだ続きますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。


本格的な冬になってまいりましたので、皆様どうか体調にはお気をつけてお過ごしください。

ではでは、久々にあとがきを書かせてもらった秋野でした!

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