再会
一眼レフを構えた莉桜が、生徒達に呼びかける。
「もうちょっと寄って、うん。オッケー。いくよー!」
「はいチーズ!」と言うと、生徒は思い思いのポーズを取り、莉桜はタイミングを合わせシャッターを押す。
出来を確認すると、「ありがとう!もういいよ。」と言った。
一人の生徒が、莉桜に向かって、声をかけた。
「いや、こっちこそ、取らせてもらって、感謝してるんだよ。秋野の写真、みんな楽しみにしてるんだからさ。」
それを言われた莉桜は、「そんなことないよ。」と言い、こう続けた。
「プロのカメラマンほどじゃないし、それに人撮るのだって、学園祭で初めてだし。今まで風景しか撮ってないから、いいの撮れてるか心配なんだよね。」
「大丈夫だって、風景あんなにいいの撮れてるんだし、きっといいやつ撮れてるよ。素人が言うのもなんだがな。」
と言い、生徒は苦笑いをする。
「ううん、そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。ありがとう!」
と、素直な言葉を言った。
生徒と別れた後、自分の部の出し物、「写真展」へと向かう。
その道中でも、「何度か写真を撮って欲しいと」言われ、撮る、進む。の繰り返しだった。
時間が掛かりつつも、写真展についたとき、ひとつ上の先輩に呼び止められた。
「おい、秋野。」
「はい、なんですか?」
「ちょっと頼みがあるんだ。」
「頼み、ですか?」
「ああ、お前、風景撮るの好きだろ。」
「はい、それがどうかしたんですか?」
「隣町で、撮影には打って付けのところがあるんだが、俺じゃあうまく撮れないと思って、お前に頼もうと思って。」
「でも、どうして今言うんですか?」
「今の内に言わねぇと、忘れるからな。」
「ああ、だから先輩、それだから部長に『伝達力がない。』っていつも言われてたんですね。」
思い出すように、莉桜が言うと先輩は慌てながら、ま、まぁ、それはともかく・・・。と話を変える。
「交通費とかは、部費で出すから。」
「そんな事、出来るんですか?」
「おう。」
と、言う先輩に
「わかりました。私もそろそろ新しい撮影スポット探してたところだったので。」
「お、秋野、助かる!」
「お礼はいりません。撮影スポットの提供、ありがとうございます。」
「あ、そうだ。場所は・・・」
撮影スポットの場所を聞き、莉桜はお礼を言うと、部長のところへ行った。
「部長。」
と言うと、こちらに気づいた部長が、返事をした。
「秋野、どうした?」
「あの、先輩が・・・。」
と、さっきの話を部長に話した。
「ああ、それか。先生も、交通費とかなら普通に許してくれるから。」
「そうなんですか?」
「ああ、先生に撮影しに行く日を言えば、その日までにお金渡してくれるから。」
「わかりました。その、木戸先生はどこにいるんですか?」
「木戸先生は、職員室にいると思う。職員室じゃあなかったら、屋上行ってみ。」
「わかりました。」
木戸は、屋上からの景色を撮影しては生徒に
見せていた。
職員室の前まで行くと、カメラをカバンの中に入れ、足元に置き引き戸をノックする。
「失礼します。木戸先生はいらっしゃいますか?」
通るような声で言うと、木戸は、莉桜に気づくと、莉桜の近くまで来る。
「秋野、どうかしたか?」
「はい、交通費をブヒで負担すると聞いたので、そのご相談にと。」
それを聞くと、木戸は頷く。
「ああ、その事か。いつに行くんだ?」
「はい、十五日の日曜日にも。」
「わかった。放課後に交通費を渡すから、もう一度職員室に来てくれ。」
「はい、わかりました。」
そして、文化祭が終わり、放課後に職員室に向かった。
「失礼します。木戸先生。」
莉桜が木戸を呼ぶと木戸はこちらに気づく。
「秋野。これ、交通費な。」
「はい、ありがとうございます。」
「いい写真撮れるといいな。」
「はい!」
失礼しました。そう挨拶して職員室を後にした。
数日後、待ちに待った日曜日になると、莉桜はすぐさま準備を始めた。
花柄のワンピースに、茶色の上着を羽織り、黒のニーソックス、同じく茶色のコサージュのついたパンプスを履き、カメラ、交通費やお小遣いの入った財布、隣町の地図などを、カントリー調の肩下げカバンに入れる。女の子らしい格好もするが、写真撮影のため、基本動きやすい格好をする。
「いってきまーす!」
元気よく、玄関を飛び出した。あの日と同じように。
(夏休み、直と写真撮りに行った日を思い出したな。直、元気かなぁ。)
そう思うと、駅へ向かうため、走るスピードを緩め、いつもの歩調で駅に向かった。
電車に乗り、隣町に着く駅に降り立つ。
「さぁ、どんな風景が見れるかな?」
そう言うと、地図片手に駆け出す。
海辺、町、その中で様々な景色を見つけては、一番いいものを撮っていく。
そして、公園にたどり着くとそこでも様々な景色を撮影した。歩いて行くうちに、一つの景色を見つける。
「うわぁ・・・・!」
思わず、声を上げてしまう。木々が立ち並び、カエデやモミジなどの葉が舞い落ち、地面は葉のじゅうたんのようになっていた。
莉桜は、なるべく人が写らないように人気のない場所に移り、撮影を始めた。すると、聞いたことのある声が、莉桜の耳に届いた。
「・・・莉桜?」
「え?」
思わず聞き返し、振り返ると、そこには直がいた。
「な、直!?」
思わず驚いた声を出すと、直は、変わらない調子で、久しぶり。と言った。
「隣町に引っ越したって聞いたけど、ここだったんだ。」
「うん。俺、ここの近所でよく撮影に来るんだ。莉桜は、なんでここに?」
「私は、部活の先輩に頼まれて。のは、半分で設営スポットが欲しかったからそのためが半分。」
「そうか。まさか、こんなところで再会するとは思わなかった。」
「うん。」
「あのさ、莉桜。」
「何?」
「ここもいいけど、俺が見つけた撮影スポット、行ってみないか?」
「え?興味ある!行く!」
「その前に、腹ごしらえだな。時間的に、もう昼だし。」
「うん、そうだね。」
二人は、店で昼を済ませると、そのまま直が見つけた撮影スポットに向かった。
そこには、綺麗な景色が広がっていた。
「わぁ!綺麗!ここならいろんなもの撮れそう!」
「喜んでくれて嬉しいよ!連絡先、お互いに知らなかったから教えられなかったから、伝達力がないと言われてる先輩に言っておいたんだ。」
「そうなんだ。だから先輩に行けって言われたのかぁ。」
「でも、実力も認められたんじゃないか?俺、お前の撮る写真は好きだし。」
「ホント?私、自信なくて。みんなにそう言われても、もっとうまく撮れるようになりたいなぁ。って思ってるし。」
「それでいいんじゃないか?上手く撮りたいって俺もいつも思ってるし。」
「うん、そうだよね。あ!あれ、あっちの方、雨でも降ってたのかな?虹出てる!」
「ホントだ。」
―パシャ―
―パシャ―
「ねぇ!これなんかどう?」
莉桜が撮影した写真を直が見ると、笑顔で答える。
「うん、やっぱり莉桜の撮る写真はいいよ。綺麗に撮れてる。」
「ありがとう!」
二人は休憩するため、近くのベンチに座る。
「いい写真、撮れたなぁ。」
「そうだね。」
「他にも、撮影スポットあるの?」
「うん、風景って同じとこ周ってもその時によって見えるもの違うんだよね。」
「そうそう。だから風景撮るのやめれないんだ。」
「だよな。」
「こんど、他の撮影スポットにも連れて行ってよ。」
「うん、わかった。」
「楽しみにしてるね!あ、でも、その前に・・・連絡先交換しないと。」
「そうだったな。ちょっと待って。」
「うん、こっちも携帯出すね。」
そして、お互い携帯電話を取り出すと、連絡先を交換した。
「もう一ヶ所、周らないか?」
「うん、まだ、時間あるからいいよ。」
「じゃあ、すぐ近くだから。」
「それじゃあ、レッツゴー!」
「うん!」
そして、もう一ヶ所の撮影スポットを周り、撮影をし、駅までの移動中は、ゆっくり歩きながらあれこれお互いの近況を話した。
駅に着くと、莉桜は駆け出し、直の方を振り返るとこう言った。
「今日は楽しかったよ、ありがとう!」
「俺もだよ。あとさー。」
「んー?」
「俺が引っ越した日のことなんだけど・・・。」
「あ、うん。」
「俺への気持ち、どう想ってんの?それだけ聞きたい。」
どうやら、直が引っ越した日、口パクで見えた言葉はどうやら莉桜の思っていた通りだったらしい。
「それだけでいいの?」
「うん。それだけでいい。」
不思議そうな顔で莉桜が問うと、直は真剣な顔で答える。
「そっか、わかった。」
そして、莉桜も、あの時、直がしたように、莉桜もわかるような口パクで、大好き。と言い、いつも直に向けていた弾けた笑顔を見せた。
「そっか、ありがとう。」
と、穏やかな笑みを浮かべた。
そして、思う。これでいいと。これだけで、十分だと。たとえ、結ばれなくても、恋人らしいことをしなくても、あいつの気持ちがわかればそれでいいと。
直が、俯きながら、そう思うと、莉桜の声が聞こえ、顔を上げる。
「直!」
「・・・・!」
「ありがとう!これからも、宜しくね。」
「うん、また二人でいろんなところ行こう!
」
「もちろん!」
そして、二人は再会を遂げ、また会う約束をした。
次の日、部のメンバーに、報告をし、後日写真を見せることを告げ、自分の教室に向かった。途中莉桜は友人に会い、そのまま教室に入る。席に着くと、一緒に教室を入った友人が、何かを思い出したのか、そういえば。と言って莉桜に近づいてきた。
「ん?なに?」
「昨日、何かいい写真、撮れたの?」
「うん。写真、出来上がったら、見せるね。」
「やった。ありがとう、莉桜。」
そう言って莉桜の友人は、自分の席へと戻った。
ぼーっとしながら、莉桜は思う。
(本当に、あれでよかったのかな?でも、私もあれでスッキリしたし、これでよかったのかもしれない。)
―ガラッ―
「ホームルーム始めるぞー。」
こうして、莉桜の一日が過ぎようとしていた。




