―思い出―
伝えたかった気持ち
直。
今まで、ありがとう。
そして、
―大好き―
「いってきまーすっ」
元気よく家を飛び出したのは、高校生の
秋野 莉桜
少し長いショートカットに、青色のTシャツに青色のミニスカートと靴下にスニーカー
莉桜は、スピードを緩め駅へと向かった。
駅にいたのは、クラスメイトの萩原 直だった。
2人とも写真を撮るのが好きで、写真部に入部した時から意気投合。
週末では、一緒にいろんな所へ写真を撮っては部活の時に部員たちに見せている
「直!」
莉桜は、親に頼みこんで買ってもらった。一眼レフカメラをカバンから出した。
「おっ買ってもらったんだ。」
「うん!今日これで撮るのが楽しみなんだぁ!」
莉桜は、はしゃぎながら子供のような笑顔で言った。
「そうか。じゃあ、いくか」
「うん。」
今は、夏休みでこうして2人で写真を撮りに行く
2人が撮る写真は、写真部でも評判だった。
流れる人を撮ったり、空を撮ったり
景色や動物たちに写真を撮っていて撮り方がうまいあまりに
文化祭で写真展を開くほどだった。
「でさー。これがこうでー」
「うんうん。」
莉桜は、直の説明を聞いてカメラの使い方を覚えていた。
「おっ。あれを一回、試し撮りすっか」
「あっ!うん。」
指差した方向をみると、それは池でアヒルが泳いでる光景だった。
「えっと、こことこことー。よしっ」
莉桜は、さっき教わった通りにカメラをセッティングした。
「おk?」
「うん。」
―パシャ―
―パシャ―
何回かシャッターを押して2人で撮った写真の中からいい奴を選ぶ。
「これ何て良くないか?」
「うん。あっこっちもいいかも。」
「じゃあ、これとこれにするか」
「うん。」
そのあと飲み物を買って、休憩して
家路を帰りつつ、そこでもまた写真を撮った。
「夏休み、もう終るね。」
「ああ。宿題した?」
「したよー。ちゃんと。」
「ふーん。」
「あっこの空きれい」
―パシャ―
「どれどれ・・・・おっいいじゃん。」
「へへへー」
たわいもない話をしつつ写真を撮ってそれでも2人の足は、家路に向かっていた。
でも、莉桜は知らなかった。
―2人で写真を撮るのがこれで最後になるとは―
「え?!引っ越し?!」
「うん。前から言えなかったけど、夏休みがいい区切りだからって」
「そうなんだ。」
「うん。」
「そっかー。寂しいなぁ。」
「俺もだよ。次の学校にも写真部あるかな?」
「あははっ」
ちょっとくしゃっとした顔になりながら笑った
―なんで、こんなに苦しいんだろう。―
その気持ちを引きずったまま、家に帰った。
部屋に戻り、今まで撮った写真を見返した。
「そっか。そうだったんだ。なーんだ。あははは。はは・・・・」
乾いた笑いをして莉桜は、下を向いたときに涙を流した
―そうだ。あたし、直が好きだったんだ。―
―今までが楽しすぎて、気付けなかったんだ。―
―今頃気づいてもおかしいかな?―
―そうだ。うん。私は、―
何日が過ぎ、直はこの町から去ることになった。
「莉桜!!」
直が莉桜の家の前で叫んだ。
「―ッ!」
バッと顔上げ声のほうへと顔を向ける。
「写真、撮ろうぜ!」
「・・・・・!」
とっさにカメラを持ち、直の元へと向かった。
莉桜が直の元へ来た時に直が莉桜にニカッと笑った
「何するの?」
「最後に、一緒に写真撮ろうぜ!」
「え?まさか?」
「ああ!2ショット写真!」
「!」
―パシャ―
―パシャ―
互いのカメラで何回か撮った。
思い出に残るように と。
「お前といる時間は、楽しかった。また会えるといいな!」
「うん。」
「あ、あと」
―大好き。―
「!」
莉桜にはそう聞こえた。いや、正しくは口パクだったからそう見えた。
「じゃあね!」
「おう!」
「直!あたしも!あたしも・・・!」
―直の事、好き―
それを言わず、涙がこみ上げたがそれを抑えた。
「ああ。」
直は肩をすくめ苦笑いをした。
たぶん言わないでくれの合図らしい。
そのあと直は車に乗りこの町を去った。
―じゃあね。直―
―大好き―