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オトコノコの受難(トラウマ)

「アヤカ、おれもその呪われた血筋になるんじゃないか?」

 環とは直接の血のつながりはないが、馬鹿総纏めというところから言えば間違いなく私と同じ血統にあたる。もっとも、そこには明確な差があるのだが。

「栞さんはうちの母親みたいにぽやぽやしてないでしょ」

「おま、それ言ったらぽやぽやした人類がバチカン並の人口になっちまうだろ」

 あ、この馬鹿自分から地雷踏みに行ったぞ。

「…かんちゃん?後で折檻だよ?」

 環が青ざめながら壁により掛かり、天を仰ぐ。



「アヤカ、なんで環君あんなに怯えてるの?」

 音ちゃんはアキによって壁に追い詰められた環を指差す。

「昔、ちょっとね」

 まっすぐなその瞳が、私には少しつらい。

「ちょっとってレベルのおびえ方じゃないんだけど」

「……アキの折檻に兄と姉が参加したのがいけなかったのよ」

「やめろ、思い出させるな!」

 傷口を広げられそうだった環が横やりを入れる。もっとも、私も詳しい説明なんぞしたくないので願ったりかなったりだ。

「ま、パーティーメンバーも見つかったことだしれくをちゃっちゃかこなして帰りましょうか」



 スタンプラリー、一カ所目。『職員室』

「一発目が職員室っていうのもどうなんだか」

 正気を取り戻した環はややげんなりした表情で職員室内を見回している。

「まあ、先生も顔覚えるために必要なんじゃないかな」

 音ちゃんもきょろきょろと小動物的愛らしさを振りまいている。

「とりあえずスタンプはどこかしら」

「あ、美由紀ちゃんだ」

 そこには先ほど母親を着替えさせた先生の姿が。母を見る表情が若干妖しいが。



「こんにちは高橋美由紀です。英語を担当しています」

 丁寧な対応が、すべての生徒の向けられているものと同じものだと信じたい。

「鈴村綾香です。このたびは母がご迷惑をおかけしました」

 そう、できれば『特別な理由』であっては欲しくない。

「いいえ、私の方こそアキさんにはイロイロお世話になりました」

 願いもむなしく、そこにあったであろう『特別な理由』を読み取ってしまった私は、アキを睨みながらため息をついた。

 むしろ、イロイロお世話してしまったことが問題なんだけど……。



「しかし」

 わたしは環の方をみる。

 大の大人でもあの溺れっぷりだというのに、こいつはいったいどうして平静を保てるのか。

「な、なんだよ俺の顔がどうかしたか」

 少し赤くなっている気もするから、耐えているのか?それとも、特別な能力でも身に着けたのか?

「いや、いつもと変わらないから不思議だなあと」

 顔を近づければ近づけただけ顔色が変化する環を眺めていると、外野が何やらこそこそ話しているのが聞こえた。

「アキさんの娘さんはやっぱりアキさんの娘なんですね」

「アヤカちゃんのアレで落ちなかったら不能だからねえ」

 何を言われているのかはわからないが、おそらく不名誉なことに違いない。なにせ、あの人の娘呼ばわりなのだから。

気が向いたので更新。

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