パパパパ過去話
「まあ、ちょっと複雑な家庭事情なの」
「ちょっと?」
環、うるさい。アンタだってその一員なんだからな。
「ただ、アキさんを見る限り暗い話ではないってことはわかったよ」
音ちゃんはニコニコ笑っている母を見てそう判断したらしい。このニコニコの裏側にあるのは愉悦とかそういう類のろくでもないものなんだけど。
「まあ、あの頃のヤスは若かったというか」
「遠い目してるけど、アンタのやったことって強姦強要だから」
ふ、と儚げな笑みを浮かべる母の頭を軽く叩く。
「もしかしてアキさんの顔が明るいのって犯人側だったから?!」
つまりはそういうこと。
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「当時のヤス、かんちゃんのお父さんはすっごく女嫌いでね」
アキは当時を振り返る。それはちょうど私が生まれる前の年のこと。
「カズト、私にはできませんよ。こんな女とこの家で暮らすなんて!」
「ヤス、そんなこと言ったって男同士じゃ子どもは作れないんだぞ」
激しい口論を私ことアキはテーブルを挟んだ向こう側で起こる大火事をほのぼのした表情で眺めていた。
「作れますよ、気合で!」
いや、ちょっとむりじゃないかなあ。
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ちょっと待ったと、音ちゃんから声が掛かる。
「もしかして、環くんのお父さんって少し頭の残念な人?」
少し心配そうなおとちゃん可愛い。でもおしい!本当は「かなり」残念な人だ。
「野々村、こんな家庭環境の中にいる奴が残念な人間じゃないわけがないだろ」
環、それって私のことも含めてんじゃないでしょうね。
「その残念な結果で生まれたアンタはどんだけ残念なのよ」
「母親がまともなのが俺の救いだよ」
「くそ、なにも言い返せない辺りが悔しい!」
母親の人格に関してだけは環の方が明らかに優れてるからな!
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「それで、昔の話に戻るけどね」
改めて過去を語りだしたアキ。その表情には懐かしさを含んでいた。
「康明さん、だっけ?なんでそんなに女の人が嫌いなの?」
そう話しかけると、ヤスアキと呼ばれた青年は私を殺すような目で一瞥すると、カズトさんに向き直り吠える。
「女なんて壊れやすい存在、輸入外車にも劣ります!」
「アキ、ヤスはツンデレオブツンデレだからな。ハムスターとか壊しそうで触れないタイプだ」
カズトさんは自慢のおもちゃを説明するように私にそう言った。
「カズト、余計なことは言わないでいいです」
「ああ、カラーひよことか死んじゃって泣いちゃうタイプ」
ヤスアキさん、顔真っ赤!超かわいい。
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「それじゃあ、リハビリ兼ねて触ってみる?」
私は手を一つたたいて、そう提案してみる。
「カズト、あの女は飛んだ尻軽です。今すぐ追い出しましょう」
「そうだぞアキ。いくらヤス相手でも俺のもんをそんなホイホイ触らせるのは」
無論、カズトさんのモノになると決めたその日から私のことを許可なく他人に触らせるつもりなどない。
「私じゃなくて、ちょうどいいのが隣に越してきたじゃない」
そう、つまり私じゃなければいいのだ。
世界の中心であいどんのーあざーぴーぷる!とか言っちゃう人たちの過去話