パパパパチルドレン
「スイマセン、つまらない人間でずいまぜんでじだ」
私が扉を開けると、そこには白衣の女性が顔をぐちゃぐちゃにして泣いている光景があった。
「環、なにも泣かせることなかったんじゃないかな?」
「泣かせるつもりはなかった!と言うよりも、もう一回扉開けたらこの有様だった!」
男の言い訳は見苦しいぞ、と視線を母に送る。
「うーん、ギルティ」
ほれ、裁判長もこう申しておる。笑顔で。
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裁判長の選択に、弁護士を求めるような目をされても困る。
「じゃあ私もギルティ」
環よ、そんな表情をしても私は長いものに巻かれる主義なんだ。
「おおぉぉい!もっとお前は主体性を持てぇぇぇ!」
環(鬼畜)のことは無視して音ちゃんに視線を向け、軽くウィンク。
「えっと、私はかわいそうだからノットギルティ?」
残念ながら、私の思いは伝わらなかったようだ。本当に残念ながら。
「天使っ!野々村の背中に天使の羽が見える!」
「まあ、多数決でこの場でかんちゃんは有罪だけどね」
環は音ちゃんにわずかな活路を得たが、裁判長は判決をくつがえさない。
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判決にその場で崩れ落ちた環だが、それも一瞬のこと、頭をガシガシと掻きながら女性に近づいていく。
「くそ、俺が悪者なのか?」
環はやっぱりおかしいんじゃないか?と振り返るも母の笑顔(強)を見て肩を落とし、ポケットからハンカチを取り出しながら女性に声をかけた。
「俺が悪いことになった、だから泣かないでくれ。その、女性の涙は見ていて辛い。できれば笑ってもらえると、嬉しい」
ひっさつ、女殺しの微笑み!むろん、白衣の女性の顔を拭ってやることも忘れない。アーアー、こいつ何処とは言わないけどさっさともげたほうが世のためな気がしてきたわ。
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環の言葉にピタリと泣き止んだ白衣の女性はきょとんとした顔から徐々に顔を赤くしていく。
私は環を少し離れた所まで引っ張り、小さくなりながら小声ではなす。
「……環、アンタあれの責任とれんの?」
「そうは言っても、あのままだと不味いだろ。俺が」
そういってアキを指さす。
「あははー、さすがヤスチルドレンー」
一方の裁判長はケラケラと笑うだけだ。後で折檻だからね。
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白衣の女性に(主に環が)引き留められながらも私たちは図書室を後にし、次の目的地に向かう。
「まあ、あの笑顔の威力は普段から見慣れてるから、私はなにも言わないわよ」
もっとも、修羅場っても手助けするつもりもないけども。
「普段からって、二人は家が近いの?」
ああ、音ちゃんには説明していなかったか、と環と顔を合わせる。
「えっと、コレのお母さんが私の家の隣に住んでいて」
「俺の家の隣、つまりこいつの家に俺の父親が住んでる」
お互いにお互いを指さしながらもう何度としてきた説明をする。
「えっと、…えっ?」
まあ、普通その反応になるよね。私だって初めてその話をされたとき同じ反応……をする前にあのバカたちを殴ったかもしんないわ。