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ネルネルな会話

*1/14 ちょっと突きました。


*5/12 改行入れてみました。


「で、魔王国の情報は?」


 本来の目的を果たすためにそう尋ねたアレックスの前に、3枚のカードが並べられた。星空の描かれたそれの1枚に手を伸ばす。


「25'000ネルネル」


 ネルネルは不思議の世界共通通貨だ。素っ気なく言い放つシェルを一瞥し、アレックスは他のカードに手を伸ばした。


「……これは?」

「21'000ネルネル」

「こっちは?」

「30'000ネルネル」

「……なんかいつもより高くない?」

「当然でしょう? 人間の全くいない国の情報だもの。命と比べたのなら全く高くないわ」


 それはそうかもしれないが。アレックスはカードを前に唸る。


「76'000ネルネルか……」


 シェルは毎回2、3枚のカードに分けて情報を提供してくる。だが、結局は全て買わないと意味をなさない、全てないと困る、と言ったことの方が多い。今回も全ての情報を買わなくてはならないだろう。


「勇者なんだから76'000ネルネルくらい出しなさいよ。今までの稼ぎもあるんだし、それに褒賞金が出るのでしょう?」


 アレックスは同年代の者よりも遥かに高い稼ぎを得ている。勇者という生命に関わる仕事をしている上に、剣の腕の名高い彼は王の命で何度か『楽園』に迷い込んできた魔物を倒して来ていたため、高い収入があった。またあまり何かに注ぎ込むということもないため、貯まる一方であった。


「わかった。買う」

「毎度、ありがとうございます!」


 満面の笑みを浮かべるシェル。ちょうど窓の外を通りかかった1組の男女が、その笑みに見惚れて顔を赤くして去っていく。それを見て、アレックスは思った。美人なのになんでこんな性格なのだろう、と。




「それで、パーティはどうするの? さすがに1人では無理でしょう?」


 シェルの言っていることは尤もだ。勇者とはいえ、さすがに未知の魔王国に単独で乗り込むには無理があるだろう。野営であっても夜くらいはゆっくりと休みたい。


「いい人いる?」

「魔物の国だからどうかしら……一応、探してはおくけれど」

「……シェルは駄目なのか?」


 シェルは戦闘には参加できないが治癒魔法には優れている。魔法が使えても治癒に関しては止血と消毒程度のものしか使えないアレックスとしては、彼女がいれば大分助かる。攻撃魔法は得意なのになぁ。細やかな作業は苦手なアレックスであった。


「高いわよ?」


 小首を傾げてさらりと宣う少女は、何処からか何やら取り出した。細長い長方形の黒檀の枠に柘植の珠がいくつも並んだそれを、アレックスは初めて見る。


「何それ」

算盤(そろばん)というらしいわ。東の『ジパング』という国から400ネルネルくらいで取り寄せたの。計算機らしいわ」


 ぱちぱちと軽快な音を立てて、白く繊細な指が珠を弾く。


「治療1回につき150ネルネル。それが日に3回とし、パーティメンバーが4、5人ならば2'000ネルネルくらい。1日の食事代が保存食になるだろうから100ネルネルくらいかしらね? で、あの国には宿が一応あるから安い宿でも1泊750ネルネル。あと保険に1日1'000ネルネルと予備費も付けて、アレックスなら1週間で魔王を討伐できそうだから……」


 ぱちんっ。


「締めて55'000ネルネルよ。あら、大分安かったわね」

「安いのか……? ていうか、魔王国に宿ってあるんだ」

「料金さえ払えば人間でも構わないみたいね。別に嫌ならいいのよ? 私は行かないだけから」


 確かに、彼女を魔王国に連れて行くのに55'000ネルネルなら安いのかもしれない。前にお茶(デート)に誘っただけで100'000ネルネル請求された時に比べたら、遥かにマシ。彼女曰く、そんな簡単に連れ出せると思うな、らしい。


「今度まとめて振り込んでおく」

「交渉成立ね」


 彼女は契約書を作り、自分の名前をサインする。アレックスも依頼人欄に署名した。


「あ、そうそう。討伐だけじゃなくて、『楽園』内に瘴気が滲み出しているようだからそれも浄化して欲しいんだって。魔王国に入るのは大分先になると思う」

「それは貴方1人でも平気でしょう? その間に必要だと思われるものを用意しておくから、偶に店に顔を出してちょうだい」

「わかった」


 カップの中身を飲み干し、アレックスは立ち上がる。その日はそれでお開きとなった。




1ネルネル=10円くらいです。

アレックスは結局131'000ネルネル支払うこととなりました。

日本円で¥1310万くらい?

でも稼ぎがいいので払えます。

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