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25F☆にらめっこしーましょっ♪

シェルと魔王(ぬいぐるみ)話.



「…………動いた……?」


 黙々と魔法の裏道を使って先に進んでいたシェルは、勇者一行が賽子を振ったという情報を『視て』、足を停めた。首を傾げ、けれど振り返ることなく、再び足を進める。


 出口のない、魔法でできた不安定な道。迷いなくその道を進んでいたシェルの目の前に、ふと扉が現れる。確かここは、25Fだったか。

 目的地はここではないが、目的の人物はここにいるようだ。白い手を添えると、扉はひとりでに開いた。


 25F、にらめっこの部屋。そこには悶えている『兎部隊』と、可笑しな顔をした魔王(ぬいぐるみ)の姿があった。




 シェルは無言で、魔王(ぬいぐるみ)に近付いた。勝利に高笑いを上げる魔王(ぬいぐるみ)は、腰に手を当てたまま彼女を見上げて来た。銀髪の上で揺れる白い耳に、にっと笑みを浮かべる。


『ちゃんと耳を着けているな! 寝起きが悪いから、着けてくれないものだと思っていたぞ!』

「あのようなマフィンを見るまで、すっかり忘れていたわ」

『チョコマフィンは嬉しかった! 今年はくれないと思ったから余計に』

「お返しは3倍よ?」

『終わったら好きなものをやろう。ウサブタがいいか?』

「ウサブタは、アレックスたちと捕りに行くの」


 そうか。笑顔で頷いて、魔王(ぬいぐるみ)は右手を挙げた。何処からとなく『兎部隊』がわらわらと現れ、テーブルと椅子2脚、あとティーセットと茶菓子を持って来る。


 あっという間にできた憩いの空間に、シェルは目を瞬かせた。魔王(ぬいぐるみ)は椅子を引くと、シェルに座るように勧める。

 椅子に着くと、魔王(ぬいぐるみ)は手ずから紅茶を淹れてくれた。


「……何時までその姿でいるの?」

『うん? 最上階ではちゃんと元の姿でいるぞ?』

「……そう」

『砂糖は3つだったか?』

「……ええ」


 ぽとぽとぽと。温かい紅茶に、白い砂糖が溶けていく。

 ぼんやりと匙で掻き混ぜていたシェルを、席に着いた魔王(ぬいぐるみ)は意味深に見上げる。


『どうだ? 最上階まで、俺と組むか?』

「協力はしない……一応、アレックスから依頼を受けているから」

『……お前はいつも、あの勇者にべったりだからなぁ』


 あはははは。乾いた笑い声を漏らし、魔王(ぬいぐるみ)は座ったまま脱力した。へにょりと耳が垂れ下がる。


『部屋で見ていたが、流石にあれはお前が悪い』

「……貴方まで、そのようなことを言うのね」

『まあ、元凶は俺なんだが』

「…………久し振りに、怒られたわ」


 口を尖らせるシェルに、魔王(ぬいぐるみ)はふっと笑みを零した。ピンクの丸っこい手で、煌く銀髪の覆う頭を撫でる。


『何時までも、俺がいる訳じゃないんだ。お前よりもあいつの方が、本当の意味で世界を知っている、少しは素直になれよ』

「……難しいわ」

『今は難しくても、その内できるようになればいいさ。お前たちはまだまだ若いんだから』

「……台詞が年寄り染みているわよ」


 憎まれ口を叩きつつも、シェルは照れ臭そうに微笑した。


『よし! 景気付けに1回、吾輩とにらめっこするか!』

「えっ?」

『にーらめっこしましょっ♪ わーらうとまーけよっ♪』

「えっ!?」

『あっぷっぷーっ!』


 みょーんっと伸びた間抜けな顔。次の瞬間、シェルは腹を抱えて吹き出した。





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