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4F☆たたいてかぶってじゃんけんぽん


 じゃんけんの結果、先攻は魔王(ぬいぐるみ)になった。丸っこい手で器用にチョキを出した魔王(ぬいぐるみ)は、パーを出した勇者を鼻で笑う。


「ぬいぐるみの癖にどうしてチョキ」

『指があるから当然だっ!』

「その丸っこい手の何処に指があるんだよ」

『ほらここに……』

「そんなことはどうでもいいから早く始めましょう」


 魔王(ぬいぐるみ)はとりゃっと賽子を投げた。うさうさうさうさっと音を立てて賽子は転がって行き、4の目が出る。


『ふむ。4か』


 魔王(ぬいぐるみ)の足元に魔方陣が現れた。白い光が薄桃の顔を下から不気味に照らす。


『さらばっ!』


 はーはっはっはっはっ! 高笑いを残し、魔王(ぬいぐるみ)は姿を消す。

 急激に静かになる1Fエントランス。アレックスは床に転がされていた賽子を拾い上げた。


「さて、誰が振る?」

「その前にちょっと待って」

「うん?」

「30'000ネルネルの情報出してみなさい。魔王城内の地図よ」


 言われて広げてみると、カードは33のマスが並ぶ双六になった。33Fに当たる最後のマスには『Goal』の文字と共に兎のマークが書かれている。


「できるだけ面倒なマスは避けなさい」

「双六なのに無茶苦茶言うな」

「じゃあ7Fのつるつるだけは避けて」

「つるつるってなんだ」

「つるつるはつるつるよ」

「先に進まないか……?」


 レンは疲れたように呟いた。それもそうだとアレックスは賽子を振る。うっさっさっさっと先程とは違う音を立てて賽子は転がって行き、壁にぶつかって跳ね返ってくる。

 リリアーナは近くまで戻って来た賽子を覗き込んだ。


「3マス……4Fですね」

「えっと、4Fは……『たたいてかぶってじゃんけんぽん』?」


 一行の足元に転移用の魔方陣が現れた。視界が真っ白に染まる。

 転移した先、4Fに着いた一行の前には大きな兎の着ぐるみが立ち塞がっていた。




『籤を引いて下さい』


 そう書かれた箱を着ぐるみは差し出してくる。言われた通りに、5人は籤を引いた。何もない棒にシェルは小首を傾げた。


「私とアウラの籤には何もなかったわ」

「俺も」

「俺の籤もだ」

「……あら? わたくしの籤に兎さんが付いていますわ」


 可愛らしい兎が確かにリリアーナの持つ棒の先に付いていた。あたり~と歪な字で顔の部分に書かれている。


『当たり籤の人はそこにいる『兎部隊(バニー)』の1人と闘って頂きます』

「バニー?」


 5人は振り返った。そしてうさ耳を装填し全身を鎧に身を包んで武装した、がっしりとした長身で強面の武人が立っているのを見ることになる。


「…………」

「………………」


 心なしか、武人の表情が達観の域に達しているように思えなくもない。


「……よろしく頼む」

「……こちらこそ、よろしくお願いします」


 深々と頭を下げたリリアーナだったが、あのぅとか細い声を漏らした。


「わたくし、たたいてかぶってじゃんけんぽん、というものをやったことがないのですが……」


 そろそろと手を上げて、リリアーナは告白した。確かに、アレックスとレンには頬を赤らめる彼女がたたいてかぶってじゃんけんぽんと遊んでいる様など微塵も想像できなかった。


「姫、そこにハンマーとヘルメットがあるだろう?」

「ありますわ」


 レンに言われて、リリアーナは部屋の中央に用意された兎印のハンマーとヘルメットを確認して頷く。


「まず、相手と叩いて被ってじゃんけんぽんと言いながらじゃんけんをする」

「叩いて被ってぇーじゃんけーんぽんっ! ……勝ちましたわ!」


 嬉しそうにリリアーナはパーの手を掲げる。彼女の無邪気な反応に武人は苦笑していた。

 レンの説明は続く。


「じゃんけんに勝ったらすかさずハンマーで思いっ切り相手を殴るんだ」

「思いっ切りですわね!」


 リリアーナはハンマーを細い両手で握り締めた。武人は余裕を持ってヘルメットを手に取る。

 意気揚々とハンマーを振り上げるリリアーナを見て、シェルはアウラをぎゅっと抱き締めた。無言のままアレックスのマントの中に隠れてしまう。


「シェル? どうした――――」


 びりびりびりびりーっ!


 アレックスとレンは視界を染め上げる閃光に唖然とした。轟音に耳が痛い。

 聴覚と視覚が正常に戻った頃、金色の稲妻を纏うハンマーを手に持ったリリアーナと――――壁にめり込んだ武人を見つめる。


「姫、何をしたんだ……?」

「え? レンが思いっ切りと仰ったので、思いっ切り……」

「思いっ切りにも限度がある!」


 遊びの最中に思いっ切りで放電するなんて聞いたことがない。

 武人の方は所詮少女の力と侮っていたために、受け身を取ることもできずに壁に叩きつけられていた。ぴくぴくと痙攣している巨漢に、アレックスとレンは思わず両手を合わせる。


 無意識にマントの中のシェルを護るように抱え込んでいたアレックスは、じたばたと暴れる彼女に気付いて慌てて手の力を緩めた。ぷはっとシェルとアウラが顔を出す。


「シェルはリリィが魔法で吹き飛ばすことがわかっていたのか?」

「リリィならやりかねないと思って用心をしていただけなのだけれど……流石に本当にやるとは思わなかったわ」


 リリアーナは自分が何をしたのかをやっと呑み込めたのか、何度も何度も武人に謝っていた。伸びている武人はわらわらと現れた兎部隊によって運ばれていく。


「これどうなるんだ?」

「もちろんおねーさんの勝ちですよ。先に進めます! ちなみに魔王様は5Fでぐるぐるバット30回をクリアして、今度は7Fのつるつるの間にいますよ!」


 ミミカが何処からか取り出した兎型リモコンのスイッチを押す。すると壁に映像が浮かび上がった。


『わあああああああ――――っ!』


 画像の端から端へ魔王(ぬいぐるみ)が物凄い速さで滑っていく。よく見るとその部屋は床も壁も凍り付いていた。天井から下がるシャンデリアからも氷柱が垂れている。

 立っては滑り、滑ってはぷるぷると立ち上がることを繰り返す魔王(ぬいぐるみ)はどうしても魔王には見えない。またすてんっとこけた。魔王(ぬいぐるみ)の癖にくしゅんっと盛大にくしゃみをする。


「4以外を出せば確実につるつるの間は避けることができます!」

「アレックス、3を出したら今後2度と『月の音色(うち)』に上げてやらないわよ?」

「よし、3だけは避ける」


 寒い所が苦手なシェルはとても嫌そうな顔をしている。

 アレックスは張り切って賽子を振った。





リリアーナは王妃様の娘なんで魔法に限定して言えばめちゃ強いです。


体育祭とかで見ると、バットぐるぐる30回って難しそうです。

何故に走れるのだろう……?


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